▶127◀ 中国企業への人員派遣について


▶127◀
中国企業への
人員派遣について

 最近、「深圳の地場企業へ日本企業から人員を派遣し、一定期間、技術指導を行う計画があるが、派遣人員のビザ、給与、個人所得税や、地場企業との契約、報酬にかかる中国での税などはどのように考えたらよいか」というご相談を受けるようになりました。製造業の親子会社間の技術指導業務ではなく、ITや医療等を含む非製造分野における、中国資本の企業との業務提携である点が特徴的です。広東省各市を含む中国の各地政府が、国外からの優秀人材誘致を大々的に推進する実績の中で、日本企業にも中国企業に対するこのような取引が出てきていることが想像されます。中国の各種制度上の留意点について、以下にまとめました。
(深圳NAC名南コンサルティング 浜田かおり)


 

⒈派遣人員のビザについて

 中国への入国ビザについては、L:旅行、F:視察・訪問、M:商用、Z:就労などがあり、また日本人の中国への入国には特に、15日以内の滞在にはビザ免除規定があります。

 日本などから中国国内の業務提携先に赴いて、技術、研究、管理、指導等の業務を遂行する場合、就労許可とZビザを取得しなければならないとされています。(注1)提携先の中国企業が招聘もしくは雇用する形式で外国専家局にて就労許可を取得し、Zビザを日本の中国大使館で申請取得し、入国後、滞在が30日以上の場合はさらに公安局で居留許可を申請することになります。

 これが日本本社の中国子会社への管理業務のために一定期間出張する場合ならば、日本側だけで手続きできるMビザでもよいですが、当該派遣人員は、中国で就労する人としてのビザが必要です。申請書類準備と手続き所要期間(Zビザ取得まで1〜1・5カ月程度)を見込んで、派遣時期を計画する必要があります。

⒉報酬と実費・派遣人員の給与について

〈派遣人員の現地給与負担〉

 中国企業との間で報酬と実費の負担について協議するとき、主に2つの方法が考えられます。

①派遣人員の給与は日本側が中国勤務分を含み支給し、中国企業に対し派遣人員の中国勤務人件費を含む技術提携報酬を請求する。

②派遣人員の中国勤務分給与は、中国企業が直接本人に中国で支給し、日本側はこれ以外の技術提携報酬を請求する。

 中国で発生する実費にはこのほか派遣人員の住居や交通費等の活動実費も含まれますが、ここで、立替金の入送金が中国の外貨管理制度上および税務上認められないリスクがあり、中国企業にとってのこれらリスクを考慮して、現地で発生する実費は中国企業の負担とし、「日本側が先に立替え後日まとめて立替費用請求」という方法を採らないことが望ましいと思われます。

 なお、外国人個人が中国で口座を開設するためには、パスポート原本・コピーを含む身分証明書のほか就業証等現地滞在の根拠となる資料の提示や提出が必要となります。

〈中国企業にとり契約書が納税や送金の根拠資料となる〉

 中国企業との間に締結する契約書は、中国側では納税や送金時の根拠資料の一つとして使用されるため、中国語で作成し、提供する業務内容、報酬額の計算方法若しくは金額、中国で発生する税金の負担者などについて明確に記載する必要があります。

〈税負担〉

 中国企業との間に一定期間以上締結する役務提供報酬に対し、中国企業はその業務内容に応じたみなし利益率(30%〜50%)に基づき企業所得税(25)を計算し、日本企業名義での臨時税務登記の上、送金時に源泉徴収して納付する必要があります。(注2)この企業所得税費用は、送金額から差し引かれるケースが多く、日本側は、源泉徴収納付された納税証憑の取得を中国企業に依頼し入手します。

 企業所得税について、中国で発生する現地人件費を含む各種実費額に対し、契約報酬額の一部を構成するとして源泉徴収納付の計算に含めるという考え方もあり得ると思われ、この税負担にも注意が必要です。

 また、役務提供に際し6%の増値税も納付しますが、中国企業はこの納税証憑を販売税額から控除する「仕入控除」に用いることができるため、日本側は必ずしもこの増値税費用を負担する必要はありません。

⒊派遣人員の個人所得税

 派遣人員は就労許可を取得し中国企業から直接報酬を得る場合、もしくは中国に通年で183日以上滞在する場合、もしくは上記の企業所得税が源泉徴収される情況(PE)がある場合に、その中国勤務に対し中国国内外で支給される給与に対し、個人所得税の納税義務が発生します。(注3)

 個人所得税の納付は中国企業より毎月、源泉徴収で申告納付されますが、日本側支給額が含まれず過少納付となる場合に、個人名義での追納可否を確認する必要があります。

 源泉徴収および個人名義での納付いずれの場合も納税証明の取得は可能で、帰任時に銀行口座の残金を日本へ送金したり、日本で二重払いになっている場合の税額の控除申請を行ったりする場合などに使用します。

※注1…《「外国人の入国短期業務遂行に関する取扱い手続き(試行)」の発行に関する通知》人社部発「2014」78号 2015年1月1日施行
※注2…日中租税条約第5、7条、国税発[2010]19
※注3…日中租税条約第15条第2項

(このシリーズは月1回掲載します)


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