第22回香港フィルマート

22回香港フィルマート

 映像・コンテンツの国際見本市「第22回香港国際影視展(フィルマート)」が3月1922日に開催された。フランスの「カンヌ国際映画祭」、米国の「アメリカン・フィルム・マーケット」と並ぶ世界有数の映像コンテンツ見本市として毎年世界中から業界関係者が来場する。

 フィルマートは香港貿易発展局がアジアにおける映画・テレビ・映像ビジネスの振興や協業促進、制作・配給拠点としての香港のアピールを目的に1997年から毎年開催されている。香港国際映画祭や香港映画賞授賞式などが開催される「エンターテインメント・エキスポ香港」の一環として実施されているもので、4月15日まで開催された第14回エンターテインメント・エキスポ(香港影視娯楽博覧)も主要イベントの1つだ。

 22回目となる今年のフィルマートは、香港を含む世界37カ国・地域から映画会社、テレビ局、アニメーション制作会社、動画配信会社など850社が出展、8000人以上の業界関係者が集った。特に中国本土からの出展者が多く、広東、杭州、北京、上海、湖南、四川という大規模な省・都市は地区ごとのパビリオンが設置された。また360社は中国の「一帯一路」戦略の沿線諸国が占め、ロシア、タイ、ウクライナ、カザフスタンなどから参加。香港をプラットフォームとして本土や国際市場の開拓を狙う。フィルマートでは期間中、交流会やフォーラムなど40以上のイベントも行われ、新作上映会は300回ほどあり、うち100回は世界またはアジアでのプレミア上映となるなど映像マーケットを大いに盛り上げた。

 日本からは今年13回目となるJETRO・ユニジャパン(UNIJAPAN)主催の「ジャパンパビリオン」や、今年初出展となった総務省の出資による国際ドラマフェスティバル(民放連)主催の「Japan TV Contentパビリオン」や、札幌フィルムコミッション主催の「札幌パビリオン」、九州経済連合会主催の「九州パビリオン」など、90以上の企業・団体が出展した。会場では日本各地の文化や名所を紹介する作品が目立ち、海外販売に留まらず共同企画や共同制作の商談が成立するなど多様化している。

 1970年代から海外で販売事業を行っているフジテレビ株式会社は、約5年前からジャパンブースで出展、2017年からは単独ブースで出展している。海外では主に「番組販売」「フォーマット販売」「リメーク販売」を展開。17年には、これまで独立していた海外セクションと国内セクションを合わせ、海外に向けた番組販売事業の強化を図っている。同社総合事業局コンテンツ事業センター・コンテンツ事業室コンテンツデザイン部の藤沼聡・企画担当部長は「弊社の取引先の多くは中国の企業。配信会社、制作会社、テレビ局など中国の企業は資金力があるしパワーの底力を感じる」としてフィルマートの出展が香港や本土の企業との商談や提携の後押しをしていると話す。会期中はアポイントを取って商談するケースが多いが、フィルマートでは「飛び込み商談」がよくあるそうだ。「想定外の商談は多いのもこのイベントの特徴だと思う。これまで考えられなかった共同制作ドラマのリメークなどの話が進んだり、販売することもある」という。

 今、中国では現代的な恋愛ストーリーが人気だ。特にアイドルが出演している作品は人気が高い。こうしたなか日本のドラマにはアジア圏で受け入れられるようなストーリーも多い。フジテレビのハイライトイベントは「月9」のドラマ枠で4月から放送している「コンフィデンスマンJP」のPRイベントだ。脚本家の古沢良太氏も来港し積極的に作品の魅力を発信した。日本の脚本を元に韓国や中国でリメークされることが決まったという。

 「近年、コンテンツビジネスはどんどん広がっているので、フジテレビとしてもドラマやバラエティーなどについて色々なことをしていきたい」と藤沼氏。フジテレビの海外ビジネス部門の売り上げは右肩上がりで、今後も上がっていくと確信しているそうだ。一方で、中国や韓国の映像コンテンツ産業が勢いよく伸びている中、日本の強みを生かし、いかに魅力ある作品を作り続けられるか課題は多い。「日本のテレビ局の特質はプラットフォームであるのと同時にスタジオ、制作会社でもあるということ。こういうスタイルは海外の放送局にはあまり存在しない。こうした日本の強みを生かしてコンテンツを作っていくべきだと思う」と語った。

 現在、フジテレビは、香港のケーブルテレビ局と「ドラマ販売」の契約を、民放放送局とは「コンテンツ販売」契約と、それぞれ長期的なパートナーシップを締結しており、今後さらにコンテンツ提供を拡大していく。「海外にでて何が売れるか、それは実際に商談をしないとわからないもの。日本人が海外に行って売れるだろうと考えているものは意外と売れなくて、その逆に売れないと思っていたものが売れることがしばしばある。思わぬところから思わぬビジネスが生まれることがある。これがフィルマートの魅力だと思う」と出展の意義を語った。

(このシリーズは月1回掲載します)

 


【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/

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