《45》雨季に増える「天気痛」

《45》雨季に増える「天気痛」

 香港は季節的に雨が増え、湿度も高くなってきました。それと共に痛みが増したり、今まで治まっていた痛みが戻ってきたという患者さんが増えています。昔から雨の日は古傷が疼くといわれますが、一説によると天気予報よりも当たるらしいです。今回は雨の日や湿度が高い日に起こる「天気痛」についてお話ししていきます。

 天気痛は気圧の変化と神経系の働きに深く関係しています。自律神経系は交感神経と副交感神経という2種類の相反する働きをする神経系から成り立っています。そして交感神経の働きが高まるときには副交感神経の働きが弱くなり、副交感神経の働きが強くなる時には交感神経の働きが弱くなります。

 最近の研究によると、気圧が低下すると交感神経の働きが活性化することが分かってきています。交感神経の働きが活性化すると脳の血管の拡張が起こり脳の一番外側にある硬膜に分布している三叉神経が刺激され痛みの原因となる炎症物質(ヒスタミン)が分泌されます。過去に骨を折ったり靭帯を損傷した個所が痛むケースが多いように、古傷は表面上は完治していてもそれは「痛み」を感じていないだけであって組織自体は100%もとに戻ることはありません(骨折した個所は以前に比べて太くなっていたりしますね)。そこにヒスタミンが作用し痛みを発生させるのです。また脳内の血管が拡張することにより偏頭痛なども起こります。

 また交感神経が刺激されることにより筋肉が緊張し、毛細血管などが圧迫され血行不良が起きます。これも肩や首のコリを増幅させる原因となるのです。普段から肩こり、頭痛がある人はただでさえ肩・首の筋肉に負担をかけるような姿勢をしていることが多いですので、より悪循環に陥ることになります。

 交感神経が刺激されると体は興奮状態になって、心拍数も増え血圧も上昇します。そうなると動悸・息切れなどが起こり、ひどくなればめまいなどの症状も出てきます。

☆自律神経のバランスを整えよう

 このように私たちの体は交感神経と副交感神経がバランスよく機能することによって正常を保っています。副交感神経は食後や睡眠時など体を休める・リラックスする時に作用する神経ですので、それが必要以上に作用すれば体に力が入らない、朝起きられない、やる気が起きないなどの症状が出てきます。

 これらの症状を最小限に抑えるためには、自律神経のバランスを整えることが大切です。まず一番大切なのは十分な睡眠をとること。これができていないと他の注意事項も意味がありません。十分な睡眠がとれていることを前提として、体を冷やさない、適度な運動、健康的な食事の摂取などを実践することで症状を最小限に抑えることができます。いつもお話ししている健康的な生活を送るための基本と同じですね。

(この連載は2カ月に1回掲載)

ドクター青(あお)
D.C.(ドクターオブカイロプラクティック)パーマー・カイロプラクティック医科大学卒業。米国政府公認カイロプラクティックドクター、香港特区政府カイロプラクティックドクター免許取得。「Millennium Chiropractic Centre」勤務

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