香港国際映画祭、日本人監督に賞

日本人監督3人がノミネート
香港国際映画祭

戸田ひかる監督作が最優秀ドキュメンタリー賞

授賞式での戸田ひかり監督

カンヌ、ベルリン、ベネチア国際映画祭と並び世界的に評価が高い第42回香港国際映画祭が3月19日から4月5日に開催された。この映画祭では世界中のさまざまなジャンルの優秀な作品を上映するとともに、作品の部門ごとに分けて優秀賞が与えられる。コンペティション部門には、ヤング・シネマ部門、ドキュメンタリー部門、短編映画部門の3つがあるが、今年は日本人監督作品がノミネートされ、注目を集めた。
(文・綾部浩司/取材協力と写真提供・Hong Kong International Film Festival)


今回は、ヤング・シネマ部門では山中瑶子監督の『あみこ』、ドキュメンタリー部門では想田和弘監督の『港町』、戸田ひかる監督の『OF LOVE & LAW(邦題未定)』がノミネートされた。
山中瑶子監督の『あみこ』は、今年開催された第68回ベルリン国際映画祭に最年少映画監督(制作当時19歳)として出品したことでも話題を集めた注目作品だ。一方、『港町』は、作品のほとんどが香港国際映画祭に出品され、2度の最優秀ドキュメンタリー賞グランプリに輝いた現在最も注目されるドキュメンタリー映画監督、想田和弘監督が手掛けた。

弁護士のカズとフミ

今回初めて香港国際映画祭に出品した戸田ひかる監督は、『OF LOVE & LAW(邦題未定)』で最優秀ドキュメンタリー賞(Firebird Award/火鳥大獎)を受賞。戸田監督は英ロンドンを拠点にしながら、ディレクターと編集者として世界各国で映像を制作しており、その作品はNHKやBBCなどで放送されている。またメルボルン国際映画祭など多数の国際映画祭で上映された。『OF LOVE & LAW』はLGBTの権利、おそらく1万人がいるとおもわれる無戸籍者、漫画家ろくでなし子のわいせつか表現の自由かをめぐる裁判、要養護の子供たちなど、日本人が見逃しがちな社会問題を、大阪を中心に弁護活動を続けるゲイカップル弁護士のカズとフミを通じて鋭く提起させる作品である。

漫画家ろくでなし子

日本映画のドキュメンタリー賞受賞は、李纓監督の『靖国ASUKUNI』(2008年)、想田和弘監督の『精神』(2009年)や『ピースPeace』(2011年)、池谷薫監督の『先祖になる』(2013年)以来となる。審査員からは「映画監督・戸田ひかりはこの作品で日本の法制度のさまざまな問題を見事にとらえている。日本の順応主義社会の中で多様な表現の必要性を主張した作品だ」と受賞理由が発表された。

戸田監督より今回の受賞について本紙に寄せられたコメントを紹介したい。「香港国際映画祭という場で映画を発表して、香港の観客の人たちの好奇心や意識の高さに触れる機会をいただいて、すごく刺激的でした。香港の観客の人たちから映画で描かれている現状や社会的背景についての質問を受けたり、生の感想や疑問に直接触れることができ、初めて訪れた街との距離感がグンと近づいた気がしました。他の作品の上映後の質疑応答でも、特に若い人たちが積極的に自分の意見を述べていたのが印象的でした。文化も状況もさまざま人たちが映画を見て、自分の体験や日常と照らし合わせたとき、共感できたり新しい発見があればうれしいです」

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