「香港インターナショナル・ダイヤモンド、ジェム&パール・ショー」「香港インターナショナル・ジュエリー・ショー」(前編)

「香港インターナショナル・ダイヤモンド、ジェム&パール・ショー」「香港インターナショナル・ジュエリー・ショー」(前編)

 香港貿易発展局は2月27日~3月3日にアジア・ワールド・エキスポ(亜州国際博覧館)で宝飾素材展示会、第5回「香港インターナショナル・ダイヤモンド、ジェム&パール・ショー」、3月1~5日に香港コンベンション&エキシビション・センター(香港会議展覧中心)で宝飾完成品展示会、第35回「香港インターナショナル・ジュエリー・ショー」を開催した。

香港インターナショナル・ジュエリー・ショー会場の様子

 両展示会には世界からおよそ50カ国・地域から4500社・団体を超す出展社が参加、バイヤーなど関係者は会期中8万人以上が来場した。今回初めて設置された「IT Solutions for Jewellery」では、拡張現実(AR)を活用した流通技術、無線自動式識別(RFID)を活用した在庫管理、ビッグデータ、クラウドシステムなどをジュエリー産業に活用した最新のイノベーションとアプリケーションを紹介するなど、「進化した」イベントとなった。

 日本からの出展者数は約350社・団体と昨年の307社・団体を上回り過去最多を更新。

 日本真珠輸出組合は今回初めて「香港インターナショナル・ジュエリー・ショー」にパビリオン「Japan Pearl Jewellery Pavilion」を設置し、27社が出展した。また、日本ジュエリー協会と日本珊瑚商工協同組合は今年も「香港インターナショナル・ジュエリー・ショー」にそれぞれパビリオンを開設し、日本製宝飾品の数々を展示した。

 現在、日本の真珠生産額は、世界シェアの34%。日本国内の宝飾品市場のうち15%が真珠関連商品だが、生産額自体は162億円とピーク時の5分の1近くに激減。とはいえ、世界で生産された養殖海水産真珠の流通量の7割を日本が占めている。日本国内で生産される真珠の大半を占める「アコヤ真珠」だけではなく、「南洋真珠」を含む世界中の養殖真珠の加工も盛んに行われている。

 特に神戸には、世界最高の加工技術を持つ企業が多く、美しさ、照り(光沢)、形、色あいなどを職人が厳しくチェックしている。さらに、輸出する真珠品質の検定基準をみる「日本養殖真珠規格」を定め、基準以上のものにはラベルを貼付している。このような品質の検定基準が、日本で生産、加工された真珠の信用性を高めている。

 会期中、日本産の真珠を求めて多くのバイヤーらが集い、他のどの国のブースより際立ったにぎやかさだったジャパンパビリオン。来港していた一般社団法人日本ジュエリー協会会長 中川千秋氏に話を伺った。同協会は、昭和63年に通商産業省(現・経済産業省)の認可を受けて設立されたもの。ジュエリー産業に携わる企業などの組織団体として、ジュエリーに関する調査、研究、内外関係機関等との交流や協力等の事業を行い、ジュエリー産業の健全な発展、振興を図っている。

香港インターナショナル・ジュエリー・ショー会場の様子

《インタビュー》
一般社団法人日本ジュエリー協会会長 中川千秋氏

中川千秋・日本ジュエリー協会会長

——今年のイベント会場について

 「香港インターナショナルジュエリー・ショー」は今年35回目を迎え、多くの日本企業が出展した。規模の拡大はここ10年で急激に伸びているように感じる。香港が返還される以前、1980年代は外資の製造業関連企業への仕入れ取引のある企業が主で、10数社ほどの出展だった。ここまで大きく変わった歴史を振り返ると大変感慨深い。

——香港市場の役割について

 2017年、日本から香港への農林水産物の総額輸出額は1620億円で、そのうち350憶円は真珠。実はあまり知られていないが、全体の5分の1は真珠の輸出だ。いかに国産の真珠が世界的に人気があり、注目されているかが分かる。

 香港で開催されるこうしたジュエリー関連のイベントには世界中から関係者が一堂に集まるので、取引が非常にしやすく、世界にも発信しやい、まさに営業の窓口である。香港は日本にとって大きなプラットフォームであり、海外に進出する足掛かりとなっている。また、香港は輸入関税が発生しないフリーポートの国際都市だからこそ、CEPA(経済貿易緊密化協定)を利用して中国本土でも売れるという意味では、香港の魅力はとても大きいもの。今後ますます海外に進出する企業が増えていくのを期待している。

——ジュエリー業界の日本市場についての見解は

 縮小しているのは間違いない。この縮小の背景には、少子化問題もさることながら、「モノ」を身に着けない、物欲が低下している人々が増えていることも挙げられる。あわせてオンラインショッピングなども定着しており、携帯電話で利用する人が増加、気軽に買い物する商品としてジュエリー購入が遠のいていることも縮小理由の一つになっていると考えている。

——中国ジュエリー業界市場の変動をどう見ているか

 日本のブースには関係者も多く来られ、商品の見定めをしている。市場が縮小しているとはいえ海外で販売する商品は、高品質か、どうかだ。中国では、かつて大量に安いものを買っていた流れが、今では「品質」こだわり始めており、クリーム色のアコヤ真珠や黒真珠より白いアコヤ真珠が人気が出ている。

 売れるもの、人気のある商品をいかに長い時間のなかで売り続けられるかが一つのカギとなる。そのためにも常に進化した、日本のジュエリーを世界に発信していく必要がある。海外で開催されるこうしたイベントにもっと多くの企業が積極的に出展し、肌で感じることも大事。自信をもって世界で勝負するための大事な一歩を、まずは香港市場から踏み出してほしいと思う。

(このシリーズは月1回掲載します)


【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/

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