香港新潟日本酒祭り


新潟県酒造組合、日本貿易振興機構(香港、新潟)および新潟市の共催で「香港新潟日本酒祭り」が11月3日に開催された。2013年に香港で開催されて以来、5回目となる。清酒試飲商談会には新潟県内から30蔵元、90銘柄が出展。今回は酒サムライのミッキー・チャン氏による香港初、新潟清酒と牡蠣との好相性に焦点を当てたペアリングイベント「Niigata Sakeと牡蠣〜新潟清酒とシーフードのペアリング〜」も開催された。同日夜には一般参加の「Niigata Sake Festival in Hong Kong」が開催され、200銘柄を超える新潟清酒の試飲会が開催、チケットが発売即売り切れになる人気ぶりだった。会場で新潟酒造組会の大平俊治・会長に話を伺った。

香港新潟日本酒祭り
新潟酒造組合の大平俊治・会長インタビュー

大平俊治さん(左)

——今回5回目を迎えたことについてどのような見解を示していますか。

チケットを販売するとすぐに売れてしまうほどのイベントに成長し、新潟酒のイベントとして香港に定着しつつあることを嬉しく思っています。今回は新潟県内の90の蔵元のうち30が香港に出展しました。そのうちのほとんどが香港に取引先をもっており、今回行われた「商談会」も、それぞれの取引先と最新情報などを含めた「情報交換」の場になり、次の段階に入ったと実感しているところです。

——新潟清酒は今世界中に輸出してますが、アメリカ、韓国に次いで3番目が香港市場と健闘していますね。

香港では、売り上げの単価が高いいわゆる「高級酒」が最も売れています。これは他国にはない大変特徴的な市場とみています。香港で新潟の地酒が評価されるというのは世界に向けて発信していくうえで大きな足掛かりになります。香港の市場でしっかりと鍛え上げて、売り上げとともに、「新潟」をアピールできればと思いますね。香港がアジアのハブになっていくことを確信しています。

——今回のイベントでは新たな試みとして「Niigata Sakeと牡蠣~新潟清酒とシーフードのペアリング~」が行われましたが、こうしたイベントを開催したのはなぜでしょうか。

牡蠣といえば白ワインの「シャブリ」が合うというイメージをもたれる方も多いと思いますが、実は新潟清酒も抜群の相性というのが新潟清酒新潟県醸造試験場の科学的分析の結果わかりました。

そもそも、生牡蠣に含まれる雑菌を、酸味の多く、鉄分が低い白ワインで殺菌する効果があるということで、白ワインと生牡蠣の相性の良さがうたわれてきました。特に酸味の多く鉄分が低い「シャブリ」は代表的な生牡蠣とのペアリングでよく登場するわけです。

ですが先ほど話しましたように、新潟清酒も鉄分の含有量が低く、同じような効果、いやそれ以上の効果があり、生牡蠣との相性が良いということが科学的に証明されました。我々日本人が日本酒とともに刺身などの魚介類を共に食べるのは、そこに相性の良さと、科学的にもより美味しく食べられる理由があったわけですね。そこで今回のイベントでは新潟清酒の新たな可能性と楽しみ方をご紹介しようと、酒サムライとして、香港で日本酒の認知度を高めるために活動されているミッキー・チャン氏によるセミナーを開催することにしました。

——どのような清酒を使われたのですか。

ペアリングで使用したのは、「吟醸 極上吉乃川(吉乃川)」「北雪 純米吟醸NOBU(北雪酒造)」の2種類です。バイヤー、印象業界関係者、メディア関係者に試食試飲をしていただき、多くの方々からお褒めの言葉をいただきました。

今回のような新たな取り組みを香港で実現できたのは、香港での新潟清酒の認知度と理解度の高さ、さらに受け入れる環境が整っているからこそだと思います。今後も新潟の清酒の新しい可能性を広げていけるように努めてまいります。

——日本国内での消費量が年々減少している中、海外への日本酒の輸出量は増えています。こうした現状をどう見ていますか。

日本酒の消費量は、1973年の176万6000キロリットルをピークに下降の一途をたどり、今ではピーク時のおよそ65%減というのが国内の現状です。背景要因は、健康志向の高まりだけでなく、少子高齢化の進展による飲酒量の逓減や若者の酒離れなどが大きく挙げられます。

こうしたなか、昨今の世界的な和食ブームも追い風となり、海外輸出も順調に伸びています。日本酒の海外への輸出額は2016年は約156億円に達し、輸出量は9%増の1万9736キロリットルと過去最高となりました。(財務省の貿易統計)国内の消費量が減っているのは残念ですが、海外での消費量が増え、日本酒の理解が高まることで、新潟県にお越しになる外国からの観光客が増えてきたのは大変嬉しいことです。酒蔵ツアーなども行っていますし、今後さらに盛り上げていきたいですね。

——全国初の試みとして、新潟大学で来年度から新たに「日本酒学」が設立されるのが決まりましたね。

日本国内の日本酒離れが進む中、文化やビジネスなど幅広い視点で日本酒に精通した人材を育てることを軸に再興を図ります。醸造や発酵を学ぶだけでなく「日本酒のたしなみ方」の講義なども組み込まれ、将来的には県内の酒蔵や県の醸造試験場の見学、外国人留学生向け講座なども開講、卒業後は飲食・観光分野などにおいて、日本酒の知識を活かした人材を育てていきます。酒蔵や日本酒の価値を見直すことで、世界に向けて新潟清酒の素晴らしさ、おいしさを発信していけるような拠点つくりを目指したいと思います。
(このシリーズは月1回掲載します)

【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログhttp://nararisa.blog.jp/

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