《116》 野犬保護で走り回る

一度乗ったら下車できない恐怖の車

保護した犬と団体メンバー(筆者撮影)

今年1年を振り返ると「生と死」を考える年だったなと思う。わが家の2匹の老犬の旅立ち、そして梅と松という子犬を引き取り、この犬たちの亡くなった母親を思い浮かべては、自分を犠牲にしても子供をこの世に送り込んだ意味を考えた。生と死はこの世のサイクル。特に意味はないのだろうし、自然環境の一部。だからこそ、大切にしなくてはならないと思っている。

さて、梅と松を動物救済団体「毛孩守護者(Paw Guardian)」 から引き取り、そのお返しに私は週に一度彼らの車に乗って香港中をぐるぐる回り、引っ切りなしにかかってくる緊急保護の電話先に向かっている。このパトカーのような存在の車の持ち主は、自らの寝る時間を惜しみ、延々と鳴り続ける電話に対応する団体創設者のKent。この車は「一度乗ったら下車できない恐怖の車」と呼ばれている。

そして先日、バケツに首を突っ込み飲み水も食べ物も取れないで駆け回っている野犬を保護してほしいと電話があった。その女性は20年も、小高い山に朝早くから登り食べ物もなく山に住む犬たちへ餌を与え続けていた。野犬への餌やりに賛否両論もあるだろう、しかし彼らも元は飼い犬。好きで野犬になったわけではない。人間による遺棄の犠牲者である。その日私が仲間たちと一緒に車に乗ったのは午後1時。山に入ったのは午後10時。山を出たのは翌朝10時。この車に乗るなといわれる理由がわかった。

昼間は、数件のひどいケースを目の当たりにした。うち1件は車にはねられた8カ月ほどの犬。下半身不随になり、飼い主である農家の人ではなく、その近所の人が保護を求めてきたケースだ。犬は横たわり、膀胱もパンパンに腫れている。抱き上げた時には尿が流れ出た。「この犬ね、多分歩けないよ」と私たちは飼い主に伝える。「いやあ、すごくいい子でね、でも歩けないならいらない」と飼い主。憤りをこらえてその場を去り、急いで動物病院へ。骨盤損傷によって歩けない可能性が高いと分かったが、まだ若い犬だ。神経専門家に診てもらい、手術を行うことに。術後は、この犬を助けてほしいと言ったご近所さんが面倒を見ると決めた。

一方、夜中に山での野犬の捜索は難航。しかし驚いたのが、救済護団体以外の個人がSNSにバケツ犬の保護予定を投稿したため、山には30人ほどが続々集まってきた。真っ暗な山の中、この状況には適さない大人数。しかし、こんなにも素晴らしい人たちが睡眠時間を削り1匹の野犬を救うために集う、その心に感動した徹夜明けだった。

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