香港でのビジネス

香港でのビジネス

 今年の7月で香港は、中国に返還されて20周年の節目の年となる。1997年の返還以来、香港は中国の統治下にあるが、香港のミニ憲法である基本法の下に「一国二制度」により、軍事と外交以外は、経済、法律、教育、言論、出入国、通信、生活レベルの面で引き続き高い自治を維持している。国際ビジネス経営者の香港に対する意見は、相変わらず肯定的である。特に、政治の安定(ちなみにこれは香港人からの角度ではない)、法治社会、自由な市場環境、腐敗のなさ、ビジネス言語は以前と同様に英語であることが評価されている。

政治の安定:

 過去20年間、香港の政治は2回(2003年の50万人デモ、2014年の雨傘運動)大きく不安定となることがあったが、かなり短期間に抑えられた。このデモは、香港人にとっては大きな影響があったが海外からの投資者への影響は全然なかった。また、香港の行政と立法会の構成は政府派が主流であり、ビジネスへの方針も香港でビジネスをするのに有利となっている。

法治社会:

 香港の法制度は以下の特徴がある。

・イギリス式のコーモンローがそのまま採用されている
・司法制度は行政と立法から分離
・契約と国際ビジネス紛争の理想な解決地(仲裁地)
・各法廷は外国籍の裁判官が在籍

 一言で言うと、以上の特徴から生じる重要なポイントとして

⑴同じ事実関係のトラブルは異なる判決にならない。他の国の訴訟の様に、不公平にならず、上級法院の判決は必ず守られる。
⑵政府が原告や被告の立場であっても、必ず勝つわけではない

自由経済:

 23年間以上にわたり、ヘリテージ財団とウォール・ストリート による経済自由度指数は、全世界171カ国中で香港は連続1位に選ばれている。

 経営自由、貿易自由と金融自由という3方面の自由主義をとっており、簡単に言うと貿易障壁がなく(0税関、輸入割当制がなく、地域や国の制限がない)、海外からの投資制限がなく、為替・送金に対して制限がなく、法人と事業のオーナーシップは国籍による制限がない。

情報の自由な流れ:

 情報と通信の障害がないことは、香港の社会基盤の大きな核であり、特徴でもある。情報は透明であり、信用度が高い情報も簡単に手に入れられ一切の障害がない。

社会面では:

 中国本土と異なり、出版と言論は自由であり、ネットの制限もまったくない。

腐敗がない:

 国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルの世界腐敗指数2016年によると香港は、世界で最も腐敗の少ない経済圏の1つである。香港は、フランス、イタリアやスペインなどの先進国よりさらに上位となっている。特に、香港の反腐敗のためにICAC(Independent Commission Against Corruption)が1974年設立されて、汚職の取締に一役買っているだろう。

言語:

 香港の公式言語は英語と中国語で、両者とも同様に法的効力がある。

香港の税制度:

 2016年の「Paying Taxes」によると、全世界189経済体制中、香港は世界で最も税負担の少ない地域の1つとされている。香港の税制度は簡素かつ低率で、安定している。

香港の主要税制:
▽事業所得税:16・5%
▽給与所得税は、標準税率15パーセントと累進税率2—17%の低い方
▽資産所得税:15
・不動産収入税:15
以下は非課税である。
・消費税・売上税・付加価値税(VAT)
▽源泉徴収税
▽資本利得税
・配当税
・相続税

 さらに、税務申告は非常に簡単で、個人の場合は、多くの人が自身で税務申告する。法人の場合は、監査が必須であるが、会計士などのプロフェショナルへの信用度が高い香港では、税務署は一般的に日本の様に数年おきの税務調査などはほとんどしていないのが現状である。

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表

米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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