外国子会社合算税制の改正

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外国子会社合算税制の改正

 月1回のこのコーナーでは、香港・日本・中国等を中心とした税金等に関する問題についてご紹介させていただきます。以前、平成29年度税制改正大綱のうち、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の見直しについて簡単に解説しましたが、今回はその外国子会社合算税制の改正が在香港日系企業に与える影響を解説します。


改正内容の概要

 改正内容の概要をまとめると表の通りとなります。

 今回は表のうち、在香港日系企業に与える影響が比較的大きいと思われる実質支配基準の導入と間接保有割合の算定方法の改正について詳細を解説します。

実質支配基準の導入

 日本の居住者または内国法人等がその発行済株式総数の50%超を直接または間接に保有する外国法人のことを外国関係会社といい、その本店または主たる事務所の所在する国または地域における租税負担割合が20%以下となる場合にその外国関係会社を特定外国子会社等といいます。税率の低い香港にある日本法人の子会社は総じて特定外国子会社等に該当し、外国子会社合算税制の適用対象になってしまいます。

 現行法では、外国関係会社は居住者および内国法人ならびに特殊関係非居住者による直接および間接の株式保有割合が50%超である外国法人と定められておりますが、軽課税国に所在する資本関係の無いSPC(Specific Purpose Company)を実質的に支配することにより、SPCを通じて行った投資事業により稼得した利益を無税で軽課税国に留保しておくといった租税回避行為を防止するため、実質的な支配関係に着目し、資本関係のないSPC等も合算対象とされることになりました。

 具体的には、居住者または内国法人と外国法人との間に、当該外国法人の残余財産のおおむね全部を請求することができる等の関係がある場合において、その外国法人を外国関係会社の範囲に加えるとともに、その居住者または内国法人を本税制における合算課税の対象となる者に加えられました。

 香港では、ノミニー(名義人)制度によって容易にノミニーを株主とする現地法人を設立・運営できますが、その法人は、ノミニーに支配されているのではなく、真の所有者(会社の預金口座の資金移動や契約書へのサイン権者)によって実質的に支配されています。現地法人に貯まった利益は、ノミニー契約により、ノミニーではなくその真の所有者に帰属し、真の所有者はその請求権を有していることから、今回の実質支配基準に該当すると思われます。

 この問題に関しては、現在でも、租税特別措置法の通達66の6—2 に「名義株は、その実際の権利者が所有するものとして同項の規定を適用することに留意する。」という取り扱いがありますが、これをさらに明確化して、通達ではなく法令の中で規定しようとするものとなります。

間接保有割合の算定方法の改正

 外国関係会社に該当するかの判定における間接保有割合の算定方法は、「掛け算方式」から「50%超の連鎖」に改正されます。現行制度上は、例えば、親会社が子会社の株式を70%、子会社が孫会社の株式を70%保有する場合、掛け算方式により70×70%=49%となり、孫会社は外国関係会社にはならないのですが、改正後は、親から子、子から孫への持株割合がすべて50%超で連鎖しているかどうかで判定することになり、このケースでは親から子、子から孫いずれも50%超の持株関係にあるため、孫会社も外国関係会社に該当すると判定されることになります。

まとめ

 本改正により従来は外国子会社合算税制の合算対象とならなかった在香港日系企業が新たに合算対象として追加される可能性がありますので、早い段階で本税制改正の影響を専門家にチェックしてもらう等の対応が重要となります。

(このシリーズは月1回掲載します)


筆者紹介
フェアコンサルティング(香港)
東京、大阪、香港、上海、蘇州、台湾、ベトナム、フィリピン、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インド、メキシコ、オーストラリアを拠点に多数のグローバル企業のサポートを行っているフェア コンサルティンググループの香港拠点。同グループは国税当局や大手会計事務所出身で経験豊富な公認会計士、税理士スタッフが、日系企業が抱える諸問題を解決するための税務・財務戦略を企画・立案・実施支援しています。
〈連絡先〉
Manager  山口和貴
電話:+852-2156-9698
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メール:ka.yamaguchi@faircongrp.com
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