▶131◀ 日本と中国の会計基準の相似点・相違点④


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日本と中国の会計基準の
相似点・相違点④

 日本と中国の会計基準の相似点、相違点を比較解説するシリーズ第四回の今回の論点は無形資産の償却とのれんの処理方法です。なお、文中の意見に関する部分は私見であることをあらかじめお断り致します。
(NAC名南広州会計事務所 堀西健夫)

無形資産の償却

 無形資産については、国際財務報告基準(IFRS)の考え方を幅広く導入している中国の最新の会計基準である企業会計準則を中心に述べていきたいと思います。

 まず、無形資産とは、企業が所有または支配する物質的実体のない識別可能な非貨幣性資産を指すとされています。(企業会計準則第6号第二十条) 具体的には、主として特許権、非特許技術、著作権、土地使用権、使用許諾権等が含まれるとされていますが、のれんの存在は企業自身から分離することが不可能であり、識別可能性を有さないとして、一部土地使用権や石油等権益とともに別途他の会計準則で規定されています。(〈企業会計準則第6号〉応用指南一) 別途規定は具体的には以下の通りです。①投資不動産としての土地使用権は、「企業会計準則第3号—投資不動産」、 ②企業結合により形成されたのれんは、「企業会計準則第8号—資産の減損」および「企業会計準則第20号—企業結合」、③石油および天然ガスの鉱区権益については、「企業会計準則第27号—石油および天然ガスの開発・採掘」(企業会計準則第6号第二条)

 無形資産の償却に関しては、企業は、少なくとも毎年年度終了時点において、耐用年数が有限である無形資産の耐用年数および償却方法について再検討しなければならず、無形資産の耐用年数と償却方法が従前の見積もりと異なる場合には、その償却期間および償却方法を変更しなければなりません。また、各会計期間において耐用年数を確定できない無形資産の耐用年数についても再検討しなければならず、もし無形資産の耐用年数が有限であることを示す証拠がある場合は、その耐用年数を見積もり、規定に基づき処理することが必要となります。(企業会計準則第6号第二十一条)

 もし無形資産の耐用年数を確定できない場合は、償却をしてはならず(企業会計準則第6号第十九条)、「企業会計準則第8号—資産の減損」に基づき、減損が認識されれば、減損処理をしなければなりません。(企業会計準則第6号第二十条)

 耐用年数が有限である無形資産については、その償却金額は、耐用年数内において、体系的、合理的に償却されなければならない、としています。そして、無形資産が使用可能となった時点から、無形資産として認識されなくなる時点まで、償却をしなくてはなりません。また、企業が選択する無形資産の償却方法は、当該無形資産に係る経済的便益の予想される実現形態を反映するものであることとされており、もし予想される実現形態を信頼性をもって確定できない場合には、定額法により償却しなければなりません。(企業会計準則第6号第十七条)

 現行の日本の会計基準では、無形資産の一般的な定義が明確に提示されておらず、IFRSの規定を念頭に検討されている状況です。無形資産の償却方法としては、無形固定資産は、当該資産の有効期間にわたり、一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分しなければならないとされています。(企業会計原則第三、五)

 一方中国の古い会計準則である企業会計制度では、無形資産は取得した月から予測使用期間にわたり、各期平均に繰延をし、損益に計上しなければなりません。もし予測使用期間が関係契約規定の受益年数あるいは法律で規定された有効年数を超過した場合、当該無形資産の繰延年数は、①法律に有効年数の定めがなく契約に受益年数の定めがある場合は当該受益年数を、②法律に有効年数の定めがあるものの契約に受益年数の定めがない場合は当該法律規定の有効年数を、③法律に有効年数の定めがあり、かつ、契約にも受益年数の定めがある場合は、そのどちらかの短い方、をそれぞれ超過してはならない、とされています。もし法律の有効年数の定めも、また、契約に受益年数の定めもない場合は、繰延年数は10年を超過してはならないとされていますので、留意する必要があります。(企業会計制度第46条)

のれんの処理方法

 のれんとは、一般的に買収・合併による企業結合において被取得企業の取得原価が、受入れ資産および引受け負債に配分された純額を上回る場合のその差額部分を言い、逆に配分された純額を下回る場合のその差額部分は、負ののれんと言います。

 日本の会計基準では、のれんは、資産に計上し、20年以内にその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却することとされています。ただし、のれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該のれんが生じた事業年度の費用として処理することが認められています。(企業会計基準第2132

 中国の最新の会計基準である企業会計準則では、企業結合により形成されたのれんについては、少なくとも毎事業年度終了時点において減損テストを実施しなければならないとされており、のれんの償却が認められていません。(企業会計準則第8号第六章) そして減損テストの結果必要があれば、減損処理を行うことになります。これはIFRSの規定とほぼ変わりませんが、ちょうど先月9月に、そのIFRSを策定する国際会計基準審議会(IASB)でのれんの処理方法の見直しに着手するとの報道がありました。今後IFRSでの処理方法の変更が決定された場合には、中国の企業会計準則でも同様の改定がなされる可能性がありますので留意しておく必要があります。

 一方で中国の古い会計基準である、企業会計制度においては、のれんの償却は無形資産の償却の箇所で先述しましたのと同じ企業会計制度第46条が適用されますので、契約と法律ともに投資期間について定めがない場合は、10年以下の期間で償却をしなくてはなりません。

(このシリーズは月1回掲載します)


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