#120 広東省 対外開放の強化措置を発表


#120
広東省
対外開放の強化措置を発表

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(三菱UFJ銀行 香港支店 業務開発室 アドバイザリーチーム)


今月の質問

 広東省においては、対外開放の強化措置が発表されたようですが、その内容について教えてください。


 2018年8月29日、広東省政府は「対外開放のさらなる拡大、外商投資の積極的利用に関する政策措置(改正版)」(粤府[2018]78号、以下「本改正措置」)を公布し、対外開放を一段と進める措置を発表した。本稿では、その内容を紹介したい。

⒈背景

 今年に入り、米中貿易摩擦が長期化する見通しが強まりつつある中、今後は中国輸出への影響のみならず、外国から中国への投資意欲にも影響が及ぶとの見方が出てきている。中国政府はこの状況を踏まえ、外国との経済貿易協力を強化し、貿易摩擦による影響を最小限に抑えるため、経済構造と投資環境を改善することを目的とした政策を次々と打ち出している。

 その中、「積極的・有効的に外資を利用し、良質な経済発展の促進に関する措置」(6月15日、国務院より発表)には外資企業の市場参入分野の拡大、投資利便化水準の向上などの措置が盛り込まれ、「外商投資参入特別管理措置」(6月28日、国家発展改革委員会と商務部により発表)では外商投資の制限が大幅に削減されたネガティブリストが公布された。

 広東省政府は去年12月に財政支援の提供・研究開発への支援・金融支援の強化にフォーカスした「対外開放のさらなる拡大、外商投資の積極的利用に関する若干の政策措置」(以下「前回の措置」)を発表したが、今回は、国家の対外開放強化の方針に従い、財政支援の拡充、用地確保の強化などにおける新たな措置を取り入れた「本改正措置」を策定した。

⒉主な内容

 本改正措置には、前回10項目中、外商投資誘致のさらなる促進・財政奨励金制度の拡充など主に5項目において強化措置が加えられた。その主な内容は表の通り。

【表】前回の措置と本改正措置の比較(抜粋)注1:投資強度=固定資産投資額(工場、設備、土地価額を含む)/土地面積
注2:外国の機関投資家が域外資金を人民元に両替して中国国内のプライベート・エクイティ・ファンドやベンチャー・キャピタルに投資することを指す
注3:従来の工商登記証・組織機構コード証明書・税務登記書などに別々にあった情報を一つの証書に集中させる利便性増進措置

⒊まとめ

 本改正措置は、国家の外資促進政策の方針に沿って土地保障の強化や投資・貿易利便性の向上を目指す実務上の政策が加えられるだけでなく、域外投資者が配当金を域内再投資へ利用する場合における奨励金の支給など、他地域にはない独自の優遇政策が含まれる。

 昨年12月に、中国財政部・国家税務局・国家発展改革委員会・商務部は共同で「外国投資者の配当金直接投資に係る源泉所得税の課税猶予の問題に関する通知」(財税[2017]88号)を公布した。当該政策は、外国投資者が中国国内居住者企業から得た配当金を奨励類の外商投資プロジェクトに直接投資する場合、一定の条件に合致していれば所得税納税義務(配当金に対する所得税率は各国との租税協定によるが、通常は10%)が繰り延べられる優遇政策である。本改正措置は配当再投資に対し、さらに奨励金の支給により将来発生し得る税務コストを低減させ、多国籍企業による広東省での再投資を促進することが期待されるだろう。

 本改正措置では、関連細則が3カ月以内に改正されることが明確化されており、各地政府による新措置の公表に留意する必要がある。弊室では今後の動向を引き続き注視していきたい。
(執筆担当:何 薇波)

(このシリーズは月1回掲載します)

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