ビットコイン急落はどこまで

 香港人の間でも非常に関心の高い暗号通貨への投資。さすがに年初からの急激な下げによって投資意欲は削がれつつある。しかし背景にはトランプ大統領による対中貿易摩擦も影響しているようだ。金融界の新産業として持て囃されている暗号通貨相場の底打ちはいったいいつになるのだろうか?
(ICGインベストメント・マネジメント代表・沢井智裕)


ビットコイン急落はどこまで

 中国市場の低迷も影響しているようだ。米トランプ大統領による「対中ハラスメント」によって、欧米社会では中国経済もいよいよ曲がり角を迎えているのではないかとの憶測が支配的になってきた。年初から低迷を続ける中国経済を象徴するかのように上海総合株価指数はジリジリと値を下げている。年初からは20%程度の下げとなっているが、株価は6カ月先から1年先の景気の先行指標と言われていることから、今後は中国の景気減速が心配される。

 フラッグシップ的に中国を代表するIT企業群の株価も軟調である。ネットビジネス大手のテンセント、ネット検索エンジン大手のバイドゥ(百度)、電子商取引大手のアリババは中国以外の海外市場に上場しているが、これらも軒並み高値からは20%以上の下落幅となっている。こういったセンチメントの弱さが中国人投資家の暗号通貨市場への投資意欲を削いでいるとの意見もある。両者共に流動性においてレバレッジを効かせているという共通点も見逃せない。かつて代表的な暗号通貨であるビットコインの全取引量の90%が中国国内の取引所で行われていたが、中国当局による規制強化で昨年秋に3つの主要取引所が閉鎖されてしまった。投資家の投資チャネルが少なくなる大きな要因となった。

 しかし中国はまだまだビットコインをはじめとする「マイニング」の市場としては大きな存在感を放っている。マイニングとはコンピューター上で複雑な処理を行うことで、その対価としてビットコインや他の暗号通貨を受け取る手法のことである。このマイニングを組織的に運営する法人をマイニングファームと呼んでいるが、このマイニングファームにおける中国の世界シェアが70%以上と言われている。このように中国の経済動向や中国政府による法律の変更等が暗号通貨市場に与える影響は非常に大きいのである。中国がマイニング市場の中心にある理由は安価な電気料金によるコスト競争力にある。コストは先進諸国の7分の1と言われている。

スタートアップによる起業は健在!

 中国が不景気に直面して暗号通貨の工場設備に対する投資資金が減少するとビットコインをはじめとした暗号通貨市場への影響も出てくる。しかしそんな中、ハイテク国家のイスラエルでは今年に入って誕生したスタートアップ企業のうち「約600社が暗号通貨の中核技術であるブロックチェーン関連の『起業』であった」と筆者のイスラエル人パートナーのヨハブリウィットは言う。そしてこの600社の中には実は私達の1社も含まれている。イスラエル籍のスタートアップ企業は、簡単に申し上げるとブロックチェーン絡みのプラットフォーム企業となる。イスラエル人の発想の面白いところは、暗号通貨がホットであったとしても相場で儲けるという発想がない点である。必ずプラットフォーム作りで儲けようとする点である。暗号通貨市場ではICO(イニシャル・コイン・オファリング=新しい暗号通貨の上場)が全盛であるが、このICOが市場の需給関係を壊している点も指摘されている。つまりしばらく相場の回復見込みはないということである。

底打ちは2021年以降

 話は横道にそれたが、これだけ暗号通貨相場に逆風が吹いている中、今後はどうなるのか? まず暗号通貨市場は短期筋を振り落とす必要がある。この短期筋が「もうダメだ」と根を上げるまで相場は低迷すると考えて良いだろう。中国は8月、仮想通貨の不法な資金調達活動に関連するリスクについて警告している。その警告を受ける形で、SNS大手のWeChatはいくつかの仮想通貨とブロックチェーン関連のアカウントをブロックした。

 またテンセントはそのプラットフォームでの仮想通貨の使用を許可しないと発表した。更にアリババも、仮想通貨取引に関与するアカウントを制限または禁止すると述べている。中国当局による規制強化が市場に大きく影響している。今後は、中国国内のマイニング市場にも目を向ける可能性があり、もし規制強化が実行されるようだと暗号通貨市場にとって更なるダメージは必定である。

 暗号通貨市場全体では、8月半ば時点で約1900億ドル、過去最大は1月8日の8280億であることから、約6000億ドルも市場が縮小している。では相場の底打ちはいつ頃なのだろうか? 通常、バブル崩壊が始まると時間と下落幅が重要になってくる。ITバブルの時は1998年9月に1500米ドル台であったナスダック総合指数が、2000年3月には5048米ドルまで1年半にわたって一気に上昇した。3・3倍のレベルに上昇。その後、2002年9月の1170米ドル台の底打ちまで、約1年6カ月を要している。またその後、上昇に転じたものの2009年2月にナスダック総合指数は1370米ドル台の「二番底」を付けにいっている。

 最高値からこの二番底までの期間はほぼ9年に及ぶ。その後、史上最高値を更新したのは2014年9月であることから、高値を再び更新するのに14年6カ月を要することになる。これを同じ技術関連であるとされるビットコイン相場に当てはめるのは少々乱暴な気がするが、目安として挙げるならば、ビットコインの市場最高値である2017年12月の19000米ドル近辺への回復は、14年後の2032年頃となる計算である。


トム:りゅうちぇるがタトゥーを入れて、ネットで炎上しているだろう? あれって炎上ビジネスと言って、きちんとビジネスが成り立っているそうだ。

ジェリー:でもタトゥーの問題はちょっと看過できないでしょ? もちろん法律で禁じられている訳でもないし、個人の自由だから、どっちでもいいんだけどさ。

トム:じゃあ刺青を肯定する訳だな。わしも同感。

ジェリー:ただ欧米社会では、身体に刺青を入れるのは自由でも日本の場合とは歴史的な背景が違うでしょう?

トム:またややこしいことを言い出すのか?

ジェリー:日本でいうタトゥーは、ヤクザの世界では「親分に忠誠を尽くす」という証に使用されたり、罪人を識別する方法として長きにわたって使われていたでしょ。だから通常、一般社会ではまったく見ることのないものだったのよ。そんな文化的な背景や風習を考えると、ただ単に歴史的な背景を知りませんでしたでは済まないのよ。

トム:確かに欧米と日本は文化も風習も全然違うもんな。

ジェリー:まだ若いから日本の文化や歴史を知らなかったりするのよ。

トム:そうだ。日本の最初の天皇即位が紀元前660年というのを知らない日本人もものすごく多いぞ。125代、2678年間、一度も途切れずに続いている天皇制なんて世界に類がないんだからね。日本人はもっと自分達に誇りを持って、歴史のすばらしさを外国人にも教えてあげて欲しいよな。

ジェリー:最近は外国人の方が日本の歴史やしきたりをより知っていたりするものね。

トム:そうかあ、りゅうちぇる、有難う!!

ジェリー:何? その終わり方!


ブロックチェーン 

 分散型台帳技術あるいは分散型ネットワークとも呼ばれている。「ブロック」と呼ばれるデータの単位を一定時間ごとに生成し、鎖(チェーン)のように連結していくことによりデータを保管するデータベースである。ビットコインの中核となる「取引データ」技術のことを指し、その取引のデータ(履歴)を「トランザクション」と呼ぶ。そして複数のトランザクションをまとめたものを「ブロック」と言い、このブロックが連なるように保存された状態が「ブロックチェーン」となる。ブロックチェーンは分散して管理されるのが特徴で、ビットコインを利用しているあらゆるユーザーのコンピューターに保存され、銀行のような特定の管理機関がないため、権限が一箇所に集中することはない。


筆者紹介

沢井智裕(さわい・ちひろ)
ICGインベストメントマネジメント(アジア)代表取締役

ユダヤ人パートナーと資産運用会社、ICGインベストメントマネジメントを共同経営。ユダヤ系を含め約2億米ドルの資産を運用する。2012年に中国本土でイスラエルのハイテク企業と共同出資でマルチメディア会社を設立。ユダヤ人コミュニティと緊密な関係を構築。著書に「世界金融危機でも本当のお金持ちが損をしなかった理由」等多数。
(URLhttp://www.icg-advi sor.net/)

※このシリーズは月1回掲載します

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