王詠珩さん

芸人になったミス・インター

ピンクのビキニでポーズをとる王詠珩さん。2017年11月14日、東京ドームシティホールで開催されたミスインターナショナル世界大会て、筆者撮影

ミスコン出場を踏み台に芸人(アーティスト)になる道は、テレビ時代の1973年に始まる香港小姐(ミス香港)が先鞭をつけた基本スタイルである。

春先に募集をかけ、第一輪面試(第一次面接に始まる長期にわたる選抜過程や、総決賽出演に向けて行われる陪訓(トレーニング)、海外ロケの外景拍撮(プロモーション撮影)など、さまざまな場面を放送して視聴者の評判をモニターするほか、近年は携帯電話を使った手機投票で人気度を探ることもよく行われるようになった。

 報道による下馬評づくりも欠かせない。この原稿を執筆している時点で2018年香港小姐候補は20人に絞られたが、地元メディアは、なみいる有力候補者のなかに、日本人の父親と香港人の母親の間に生まれた工藤佑采(ゆとり)という混血美女がいることを話題にしている。両親は他界し、働きながら香港公開大学で苦学し、ミス香港を目指しているという。彼女のインスタグラムには、水着姿の自画撮り画像まで投稿されていた。

香港はパール・リバー(珠江)の河口に立地する、まさしく「東洋の真珠」。「なんでこれが民族衣装なの?」と思いきや、スカートに広がる香港のパノラマ。筆者撮影

 今回ご紹介する王詠珩(ウィン・ウォン)さんもミスコン出場を機に芸能活動に転じたひとり。中学生(高校生)時代からモデル活動を始め、これまでに、セブンイレブン、ケンタッキーフライドチキン、マクドナルドなどの広告に出演してきた実力派。英国のサセックス大学でメディア論を学び、2017年国際小姐世界大賽(ミスインターナショナル世界大会)に香港代表として出場した。現在は香港電視が土曜夜に放送する総合娯楽節目「Viu TV 2018」のキャスターをつとめる。香港電視は亞洲電視停波後の香港第二の地上波放送局。ミスコン美女に新たな就業機会の道が開けた。

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者・和仁廉夫(わに・ゆきお)1956年東京生まれ。香港で第2次大戦期の日本占領史跡などを扱った『歳月無聲』(花千樹出版・中文)を出版。中国ミスコンに関しては、「広州『姿』本主義〜香港返還もう一つの意味」(霞山会『東亜』20099月号)がある。

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