第3回「一帯一路サミット」を開催


第3回「一帯一路サミット」を開催
官民一体で「成功への協調」探る
〜日本からも40人以上が来場〜

例年以上の盛り上がりをみせるメインシンポジウム

2013年に中国政府によって提唱された広域経済圏構想「一帯一路」は、その資金供給源となるアジアインフラ投資銀行(AIIB)とともに、日本でもすっかりおなじみとなりました。試しに日経電子版で「一帯一路」を検索すると、本稿執筆時点で893件がヒット。18年6月の1カ月間だけで「一帯一路」という単語を含む記事が44本配信されていたことからも、その浸透ぶりがうかがえます。

香港貿易発展局は16年以来毎年1回、香港特区政府と共同で大規模な国際シンポジウム「一帯一路サミット」を開催し、本構想がもたらすビジネスチャンスを世界に向けてアピールしてきました。18年6月28日の第3回開催では、会場となった湾仔の香港コンベンション・アンド・エキシビション・センターに世界55カ国・地域から過去最多の約5000人が来場。例年3000人規模の来場者でにぎわう1月の「アジア金融フォーラム」を超え、同局が1年間に開催する国際会議8本の中で一躍最大級に躍り出ました。

中国の要人が相次いで登壇

午前8時45分から始まったオープニングセッションでは、香港貿易発展局の羅康瑞(ヴィンセント・HS・ロー)会長、特区政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官、中国の国有企業を管理する国有資産監督管理委員会の肖亜慶・主任(閣僚に相当)、中国のマクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会の𡩋・副主任、日本の経済産業省に相当する中国商務部の高燕副部長、タイのソムキット・チャトゥシューピタク副首相(経済担当)が順に登壇し、一帯一路構想がいかにして世界経済の安定成長のけん引役となるかや、タイをはじめ東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の関わり方などについて講演しました。

オープニングセッションに続いて、香港特区政府と旧ソ連のジョージアとの自由貿易協定(FTA)が調印されました。一帯一路構想では、中央アジアを経由して欧州に至る地域で貿易や投資を拡大する「シルクロード経済ベルト」と、南シナ海などの海洋国家と経済関係強化を図る「21世紀の海上シルクロード」の建設が目玉となっています。黒海とカスピ海に挟まれたカフカス地方に位置するジョージアは、この「シルクロード経済ベルト」と地理的に重なり、ユーラシア大陸上の貨物の輸送や積み替えの重要な拠点となっています。この地域では17年10月に、アゼルバイジャン、ジョージア、トルコの3カ国を結ぶ「バクー・トビリシ・カルス鉄道」が開通しており、欧州、中東、アジアを結ぶ交通の要衝としてのジョージアの役割がさらに高まると期待されます。

午前9時55分からの基調講演セッションに続いて行われたテーマ別セッションでは、インフラ融資、デジタル・テクノロジー、建設、グリーンファイナンス(環境金融)、リスクマネジメント、リーガル(法律)サービスなどの分野をテーマにした討議が行われました。香港は「教育・トレーニング」「エグゼクティブサーチ(高度人材スカウト)」「リーガルサービス」「プロボノサービス(専門スキルを生かすボランティア活動)」「検査・認証サービス」などのビジネス・プロフェッショナル・サービスに強みを持ち、一帯一路経済圏でのインフラ建設をはじめとしたビジネスに貢献する付加価値サービスを提供することができます。同セッションでは、若手のビジネスリーダーや女性起業家なども登壇し、一帯一路市場でのビジネス動向を紹介しました。

「茶餐庁」スタイルでミルクティーを提供する主催者

緊密化する相互協力ネットワーク

香港貿易発展局は香港および中国本土の企業による一帯一路市場の開拓を支援するため、従来からビジネス使節団や投資使節団を組織しています。タイがこうした使節団の主要な訪問先の一つとなってきたこともあり、本サミットでは多数の香港企業とタイ企業の間で相互協力の覚書(MOU)が‘締結されました。

その中には、香港電力大手のCLP(中電控股)とタイで工業団地を開発・運営する最大手のアマタ・コーポレーションとのMOUも含まれます。CLPは17年、香港貿易発展局が率いるタイ使節団に参加したことがきっかけでアマタと関係を構築、その後1年間におよぶ交渉を経て今回の調印に取り付けました。両社は再生エネルギーの利用促進に向け、タイのチョンブリ工業団地に水上太陽光関連施設を建設するための事業性評価に共同で取り組む計画となっています。

会期中は、香港貿易発展局とタイ工業省、バンコク銀行、サイアム商業銀行のMOUも締結されました。今後さらに協力関係を強化し、一帯一路を促進する方針です。このほかにも、香港の何設計(Ho&Partners Architects)とタイのLife&Living社とのMOU、香港の均安控股とフィリピンのアグリゲート・ビジネス・グループなどがMOUを締結。今後、コンソーシアムを組んで、フィリピンで3つの投資プロジェクト(投資額計35億米ドル規模)を推進するとみられています。

商談プログラムも充実

一方、同サミットの会場内では、カンファレンスと並行して投資プロジェクトのオーナーと投資家やサービス・プロバーダーなどとの商談会も開催されました。今回は一帯一路に関連した220件以上のプロジェクトが持ち込まれ、香港貿易発展局が参加者からのリクエストに応じて事前にアレンジした個別商談が実施されました。会場内ではまた、「輸送・物流インフラ」「エネルギー・天然資源・公共事業」「都市部・地方部開発」のテーマ別に、スタートアップ企業が投資家向けに製品やサービスについてプレゼンするピッチ・イベントも行われました。

会場内には「グローバル・インベストメント・ゾーン」と呼ばれるスペースも設けられ、世界29カ国から計50以上の投資プロジェクトが紹介されました。同スペースには、投資プロジェクトのオーナーや運営者、プロモーション業者、各国の領事館や政府関係機関の関係者らが訪れ、出展者との商談を行いました。

年々高まる一帯一路への関心を背景に、今年は日本からも40人以上が本サミットに参加しました。各国の参加者の名簿は下記サイトでご覧になれます。https://goo.gl/yN2wpD

こうした名簿を参考に、来年は日本からさらに多くの皆さまにご来場いただけるよう願っております。
(このシリーズは2カ月に1回掲載します)

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