歴史建築の魅力を生かした話題のスポット

歴史建築の魅力を生かした
話題のスポット

 「歴史文物保育」とは中国語で歴史建築や文物を保護するという意味。そうした概念が支持される中、近年は香港でも歴史建築物や古跡を保存しつつ再開発する動きが盛んだ。大規模なリノベーションを経て、ホテルや文化施設に生まれ変わった歴史建築には、各種レストランやギャラリーなどさまざまなテナントが入居する。今回はその中から、今年オープンしたばかりのホテルと数年前から話題を集めるホテル、施設を紹介する。
(文・鈴木理絵/写真と資料提供・取材各店)


政府ビルからホテルに転身

GFに位置するガラス張りのロビーは明るく、フレンドリーなスタッフが笑顔でゲストを迎える

金融・商業の中心地であるセントラルに、久しぶりに大規模なラグジュアリーホテルがオープンし、大きな話題を呼んでいる。歴史的建物である旧マレービルディングを再利用した「The Murray, Hong Kong, A Niccolo Hotel」だ。このビルは1969年の完成後、2011年まで政府機関のオフィスビルとして使われていた。近隣に林立する超高層の無機質なビル群とは大きく異なり、低層でマットな白色の外壁に覆われた美しい形状を持つこの建物は、ひときわ新鮮な印象を残している。

ファサードが印象的な外観は旧建築をそのまま利用、誰もが目を奪われる
アフタヌーンティーは「Garden Lounge」で楽しめる

そして今年2月、基底部に連なるアーチの外観などはそのままに、内装を全て一新し、ホテルとしてついに幕を開けた。25階全336室の多くは50平方メートル以上のゆったりとしたスペースをとり、落ち着きのあるシックな空間へと仕上げた。宿泊者以外でも利用できるスパは上質なプログラムを用意。ウエルネスは最新設備を整え、ヨガや太極拳クラス、スイミングプールなど宿泊者向けにいっそう充実させる予定だ。

スパにはカップル向けのスイートルームも
モダンシックなデラックスルームなど広々とした客室
「Garden Lounge」の「Golden Garden Iced Tea」は桂花やオレンジベース

GFにあるロビーには、燦々とふり注ぐ太陽の明るい日差しや近隣ビルディングの摩天楼の晩の輝きがいっそう特別な空間へと運んでくれる。魅力あるダイニングは5つの美食体験を用意する。ロビー階にあり早朝から夜遅くまでオープンのスタイリッシュなバー「Murray Lane」では、アペリティフのカクテルを楽しみたい。コーヒーや軽食も用意しているので、時間のない旅行者にとっても安心だ。「Garden Lounge」では、窓ごしから眼前に広がる色鮮やかな香港公園の緑を愛でながら朝食や自慢のアフタヌーンティーセットを味わいたい。アジア系からヨーロピアンまでインターナショナルな料理を提供する「The Tai Pan」では、ホテルソムリエの選び抜いたワインとともに料理を楽しむのも一興だ。最上階ルーフトップでパノラマのスカイラインを堪能する「PopinJays」では、ヨーロピアンガストロノミーとともにDJが奏でる音楽やエンターテインメントを楽しもう。

ロビーフロアにある「Murray Lane」は新ランデブースポット
「The Tai Pan」では日曜限定の「Discovery」を楽しみたい

さらに正面玄関の向かいのパビリオンスペースには、広東料理の名店「福臨門」の姉妹店「国福楼」=本紙16面参照=もオープン。ホテルダイニングの上質なサービスは、旅行者や出張者だけの特権にしておくにはもったいない。

歴史ある建物を、守るだけでなく現代が求める空間へと活用し、身近に足が運べて誰もが楽しめることができるという再開発プロジェクトの賜物ともいえる魅力的なホテルだ。

【The Murray, Hong Kong, A Niccolo Hotel】
所在地: 22 Cotton Tree Drive Central, Hong Kong
電話:3141-8888



歴史を語る石畳に建つホテル

「Gradini」の個室は10名まで利用可能

香港の古き良き時代の名残を今もなお色濃く残す、セントラルの「ポッティンジャーストリート」。この道は目貫通りを東西に走るクイーンズロードとハリウッドロードを、南北に結ぶ要所の道として1850年代に作られた。当時、クイーンズロードが海岸線であったことから、このポッティンジャーストリートが主要な海外貿易の場として繁栄したことがうかがえる。香港初代総督のSir Henry Eldred Curwen Pottingerの名前が付けられたことからもわかるように、地元香港のコミュニティーの中心としていつの時代も愛されて今日に至る。

ポッティンジャーストリートとスタンレー ストリートの交差する地にたたずむホテル

ポッティンジャーストリートは広東語では「石板街」と呼ばれ、当時のままのすり減った石畳や階段は多くの人々が行き来した足跡とその歴史を語り、現在は香港映画やテレビなどの撮影の人気舞台となっている。

この地に2014年にオープンした「The Pottinger Hong Kong」は、クラシックでエレガントな全68室のブティックホテルだ。まるで隠れ家のような佇まいで、一歩外に出ると屋台や歴史建築など、香港らしいドラマチックさにあふれる日常を存分に味わえる。

「Gradini」と「エスティーローダー」コラボのアフタヌーンティーセット(写真は2人用。1人用もある)

外の喧騒をよそに、ホテル内では落ち着いて食事が楽しめる。メーンダイニングのイタリアンレストラン「Gradini Ristorante e Bar Italiano」では、最近スタートしたアフタヌーンティーセットがお薦め。9月末までは、コスメブランド「エスティーローダー」とコラボレーションしたブラックトリュフ・ダイヤモンド・アフタヌーンティーを提供中。散策やショッピングの合間に立ち寄りたい。

また、3Fにあるブリティッシュパブ「The Envoy」もお薦めだ。ポッティンジャーストリートを眼下に見下ろす絶景の屋外テラス席はこれからの季節に向けて特等席になるに違いない。

【The Pottinger Hong Kong】
所在地:74 Queen’s Road, Central, Hong Kong
(入り口はStanley Street)
電話:2308-3188


前身は既婚警官向け宿舎

同レストランはアバディーンストリート側の入り口から入ってすぐ

近年、クリエイターやデザイナーが集まる複合施設として話題となった「PMQ(元創方)」。政府プロジェクトのもとで再開発が進められた建物は、長い歴史を持つ。Police Married Quarters の頭文字から分かるように、1951年に建てられた既婚警察官向けの宿舎がその前身だ。

宿舎の約170室は半共同の造りで外観や間取りには機能性と実用性が重視され装飾がなかったことが幸いし、建物は元の形を残しつつ補強され、用途に合わせて改装が施された。

ランチの特等席、テラスから眺める緑が心地よい
Keith氏は魚介料理が得意。ぜひオーダーしたい

かつての居住部分にショップ、オフィス、宿泊施設などを配置。現在、オリジナリティーあふれるデザインのファッションや日用品を主に、家具、ジュエリー、食品、展示スペース、ギャラリーなど約100のテナントが入居している。

今年6月に英国から来港した新シェフKeith Hooker氏が腕をふるっている

ほかにも、空中庭園や花崗岩の石壁、階段なども見どころだ。PMQ施設内のガイドツアーもあるので、興味のある人は参加してはいかがだろう(申し込み…http://www.pmq.org.hk/heritage/guided-tour/?lang=en)。

PMQ内には食事ができる場所も多くあり、中でもモダン英国料理が楽しめる「Aberdeen Street Social」がお薦め。本国で最も勢いのあるといわれるシェフ、Jason Atherton氏がプロデュースを手掛ける。伝統の英国料理を新解釈し、華やかで軽やかな味わいに仕上げたという料理が評判だ。同店は2フロアあり、GFはランチやアフタヌーンティー、カクテルを楽しむなど気軽に利用したい。

【Aberdeen Street Social】
所在地:PMQ, JPC G/F, Aberdeen Street Central, Hong Kong
電話:2866-0300

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