〈85〉中国の増値税率の引き下げ

〈85〉
中国の増値税率の引き下げ

 月1回のこのコーナーでは、香港・日本・中国等を中心とした税金等に関する問題についてご紹介させていただきます。今回は、中国における増値税率の引き下げについて述べたいと思います。

概要

中国において、2018年3月28日に国務院常務会議が開催され、同年5月1日より付加価値税に相当する増値税の税率が一部引下げられることとなりました。現在17%の税率が適用されている製造業などの業種については16%に、11%の税率が課されている交通運輸、建築、通信サービスなどの業種および農産品等の物品は10%に引き下げるというものです。

今回の改定により、増値税の税率は16%、10%、6%の3種類となります。

企業のコスト負担を減らす取り組みの一環で、年間2400億元(約4兆600億円)の減税効果が見込まれています。

今回の税率削減は、「中国製造2025(Made in China 2025)」の計画の一環であり、ハイエンドの製造業とイノベーション主導のテクノロジー企業に有利に働くと考えられています。建設、鉱業、 公益事業、情報技術、機械などの業界も含まれており、当該政策は、2025年までに10の戦略的産業における国際的競争力を高めることを構想しています。

具体的には、情報技術、高性能の機械とロボット、航空宇宙設備、船舶用機器と船舶、高度な鉄道輸送、新エネルギー車、電力、農業機械、新素材、バイオメディカルをサポートすることを意図しています。

詳細

4月4日、中国財務部および国家税務総局は「増値税率調整に関する通知」(財税32号通達)および「増値税小規模納税人基準の統一に関する通知」(財税33号通達)を公布しました。

⑴増値税率の引き下げ
 主な改正内容および従来税率と改正後の税率は以下の通りです。
①17%から16%への変更
一般貨物販売、加工・修理補修の役務、有形動産のリース
②11%から10%への変更
・役務提供
交通運輸サービス、郵便サービス、電信サービス、建築、不動産賃貸、不動産販売、土地使用権譲渡等
・物品販売または輸入
農産品(穀物を含む)、水道水、飼料、農薬、図書、新聞、雑誌、音響製品等の低税率貨物

⑵小規模納税義務者基準の変更

小規模納税義務者としての判定基準が、従前は年間課税対象売上高が工業企業で50万元以下、商業企業で80万元以下でしたが、財税33号通達では基準が統一され、年間課税対象売上高が500万元以下の企業は小規模納税義務者に該当することとなりました。今回の判定基準額の引き上げにより、より多くの企業にとって低税率の恩恵を受けられる可能性が広がったと言えます。

一般納税者としての登録を選択する企業を除き、小規模納税義務者となる企業は仕入控除が認められなくなりますが、低税率3%を適用することが可能となります。

まとめ

今回の増値税改正により、中国企業にとっては税負担軽減の恩恵を受け、さらなる国際競争力を獲得できることとなりました。中国へ進出している日系企業にとっても例外なくこの恩恵を享受できる一方で、導入期においては当該変更による実務上の論点が多々あることから、個々の事例ごとに検討していく必要があります。疑問点がある場合には、実行にあたり事前に国際税務の専門家に相談されることをおすすめします。

(このシリーズは月1回掲載します)


筆者紹介
フェアコンサルティング(香港)
東京、大阪、香港、上海、蘇州、台湾、ベトナム、フィリピン、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インド、メキシコ、オーストラリア、ドイツを拠点に多数のグローバル企業のサポートを行っているフェア コンサルティンググループの香港拠点。同グループは国税当局や大手会計事務所出身で経験豊富な公認会計士、税理士スタッフが、日系企業が抱える諸問題を解決するための税務・財務戦略を企画・立案・実施支援しています。
〈連絡先〉
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電話:+852-2156-9698
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