半導体業界の再編動向

半導体業界の再編動向

  SMBC経済トピックスでは、アジア地域において注目されている産業や経済の動向を紹介します。今回のトピックスは「半導体業界の再編動向」です。半導体業界では、AIIoT関連需要等の新たな市場牽引役が出て来る等市場変化が起こっています。この変化に対応すべく数年前より、①成熟分野から成長分野へのシフト、②成長分野での競争力強化に向けた品揃え拡充、③コスト競争力向上、等の方向性の下で業界再編が起こっており、半導体メーカーや関連業界でのプレイヤーの動きが注目されます。
(三井住友銀行 企業調査部<香港駐在> 神谷 直良)


 半導体業界では、近年の市場成長を支えてきたPC・タブレット端末やスマートフォンの普及がおおむね一巡しています。足元では、仮想通貨のマイニング用の半導体需要が拡大している他、(自動運転技術を含む)自動車や産業分野においてAI(注1)やIoT(注2)の活用が広がりつつあります。これに対応して、①データを取得・送信するためのセンサーモジュール(センサー・5G〈注3〉等通信用チップ・マイコン等)、②収集したデータを記憶するメモリ(DRAM・NAND等)、③膨大なデータを演算・処理するロジック(含むAI用半導体)等、多岐にわたる種類の半導体において搭載量拡大・高機能化(省電力性・処理速度の向上等)が進んでおり、AI・IoT関連需要が新たな市場の牽引役になっています。

 このような市場変化に対応すべく、数年前より半導体メーカー間で大型M&Aが相次いで起こっています。再編の方向性としては、①成熟分野から成長分野へのシフト、②成長分野での競争力強化に向けた品揃え強化、③コスト競争力向上に加え、潜在的には、④中国政府の半導体産業強化の動き、等も挙げられます。具体的には以下の通りです。

①成熟分野から成長分野へのシフト:PC・タブレット端末やスマートフォン等の成熟分野で競争激化が進む状況下で、当該分野で高いシェアを有する半導体メーカーが、自動車・産業等の成長分野の取り込みや、AI用半導体等の先端製品を開発するためのリソース確保等を目的にしたM&Aに動いています。

②成長分野での競争力強化に向けた品揃え強化:成長分野である自動車や産業機器向けでは、上述の通り半導体の高機能化が進んでいます。これに伴い、完成車メーカーや自動車部品メーカーが、開発力・提案力を半導体メーカーに求める傾向が強まっています。半導体メーカーは、顧客の要求に対応すべく、通信含むセンサーやロジック、アナログ、マイコン等の多岐に亘る品種の研究開発ノウハウを獲得すべくM&Aに動いています。

③コスト競争力向上:半導体メーカー、特にAI搭載の先端ロジック半導体を取り扱う半導体メーカーは、研究開発投資を回収すべく、また生産委託先(半導体ファウンドリ)の先端生産ライン確保や委託料上昇の中での採算維持・向上に向けて、各分野での市場シェア引き上げや生産規模の拡大を目的としたM&Aに動いています。

 スマートフォンやデータセンター向けサーバー、自動車等の分野での高機能製品に搭載されるAI用半導体の生産には、最先端の生産設備(注4)が必要になります。これに対応可能な半導体ファウンドリは大手に限定される他、設備投資負担も増すことからファウンドリへの生産委託料が上昇する傾向にあります。

④中国政府の半導体産業強化の動き:中国の政府系ファンドが大手半導体メーカーのM&Aに積極的に動いています。国防上の理由から米国政府は中国企業による自国半導体メーカーの買収には消極的ですが、生産技術の供与といった技術提携は行われています。このため、投資規模が活きやすいメモリ分野において、長期的には中国メーカーが台頭し、競合激化につながる可能性もあります。

 大手半導体メーカーの多くが、こうした方向での競争環境変化に対応すべく積極的なM&Aを展開しており、今後も再編が進むとみられます。半導体メーカーや関連業界でのプレイヤーの動きが注目されます。

※注1…AI:Artificial Intelligence、人口知能の略。ここでは深層学習(Deep Learning)等、人間が行う知的作業をコンピューターに学習させる機械学習を指す。

注2…IoT:Internet of Thingsの略。あらゆるものがインターネットを通じてつながり、収集されたデータを分析・フィードバックすることで、新たなサービスやビジネスモデルを実現するという概念。

注3…5Gは2019〜20年頃から米・韓・中・日等でサービス開始する見込み。高速・低遅延・多接続等の特徴を基に、自動運転システムや産業機器のIoT機能との連携が見込まれる。

注418年以降に半導体ファウンドリ大手が回路集積度の更なる向上を進めるには、1台100〜200億円と高価な半導体製造装置(露光装置)を本格導入する必要があり、技術進歩に必要な設備投資額が増加するとみられる。

(このシリーズは2カ月に1回掲載します)

〈筆者紹介〉
神谷 直良(かみや なおよし)
三井住友銀行 企業調査部 香港駐在:2006年より企業調査部(東京)で電機・通信業界等を担当。2014年より香港に赴任し、現在は主に台湾・韓国・中国(華南地域及び香港)の電機業界の調査や情報発信を手掛ける。

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