#114 広東省 人口発展計画(2017年~2030年)を発表

#114
広東省 人口発展計画
(2017年~2030年)を発表

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(三菱東京UFJ銀行 香港支店 業務開発室 アドバイザリーチーム)


今月の質問

 広東省では、人口発展計画(2017年~2030年)が発表されたようですが、その内容について教えてください。


 2018年2月22日、広東省政府は、「人口発展計画(2017~2030年)の通達」(広東省政府[2018]1号、以下「計画」)を公布した。計画では、広東省各地域の高齢化や労働力不足の課題が提起され、それらに対する方針や政策が明確化された。本稿では、計画公布の背景および政策内容を簡単に紹介する。

⒈ 背景

 広東省統計局が発表したデータによると、2013年以降広東省の労働年齢人口(15歳~64歳)の割合は毎年減少する傾向にある。一方、広東省経済は過去の10%前後の高度成長から7%~8%に減速している。人口の構造変化は、今後の経済成長を占う重要な要素の一つである。

 広東省は常住人口も流動人口(※参照)も中国で一番多い省である。2016年末時点で、総人口は1億999万人、2010年〜2016年の平均伸び率は0・76%であったが、労働年齢人口(8163万人)は、同時期に年率0・35%の成長にとどまり、総人口の伸びを半分強下回った。また、少子高齢化の進展が人口構成の変化にも顕著に現れている。計画によれば、広東省は2030年までに高齢者人口の割合が2016年の8・6%から11%まで増加する一方、労働年齢人口の割合は2013年の77・2%から2030年には72%まで減少すると予想している。


一方、流動人口は伸び悩んでいる。2015年末、広東省の流動人口は3202万人、2010年からの5年間で年率0・47%増加したが、2010年までの10年間を見ると年率4・86%伸びており、広東省外からの人口流入が減速していることが分かる。これは過去10年ほど、新農村建設戦略などの地域振興政策の実施による内陸部の経済成長の加速や、都市部における土地・人件費などのコスト上昇による一部工場の内陸部への移転などにより、広東省外からの出稼ぎ労働者が減少していることが原因と考えられる。

 そのため、今回の計画は、上記広東省の人口構造の現状及び課題点を踏まえ、これらの問題の解決に向けて、戦略方針と対応策が公布されたものである。

⒉目標と政策の主要内容

「計画」は下記の目標を掲げている。(一部抜粋)

 目標を達成するために対応策が発表されている。その中で、労働力供給の増加および人口の地域均等化に関する一部措置を紹介する。

⑴労働力供給の増加

⑵人口の地域均等化・珠江デルタ地域都市化

広東省には大型都市と中小型都市の間で労働人口の協調が求められる。計画により、広州、深圳において人口増加の抑制を図る一方、新型都市の建設をきっかけとして、中小型都市へ人口を誘導し、佛山、中山、珠海、江門、肇慶及び恵州における人口集中を合理的に強化して行く。また、韶関、河源、汕尾、陽江、清遠、雲浮などの環珠江デルタ地域の発展を推進し、珠江デルタ地域への融合を加速する。「広佛肇+清遠、雲浮、韶関」、「深莞恵+河源、汕尾」および「珠中江+陽江」という三つの新型都市区域を組み立て、地域内において合理的な分業による産業間の補完関係を構築し、産業と労働力の流動化を実現する。

⒊ まとめ

 今回の計画では、50万人以下の小型都市が都市建設の重点地域と位置付けられた。これらの都市には多くの産業移転区や工業園区が集中しており、産業クラスターを形成しつつある。今後、都市のインフラ整備と公共サービスの向上による人口の増加は、産業移転地域に各レベルで多様な人材をもたらすと見込まれる。地域の経済発展が加速すればさらなる都市への人口移動を促し、地域発展に好循環をもたらすと考えられる。

 今回の計画は、広東省各市に拠点を持つ企業や進出を検討する企業にとって、労働力確保の観点から有益な政策である。今後、広東省において経済成長持続のために人口政策を着実に実行することが期待される。

※注…流動人口は戸籍の転出を伴わず、戸籍所在地の郷鎮から半年以上を離れている人の数を指す。

(執筆担当:何 佩潔)

(このシリーズは月1回掲載します)

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