妖怪都市・香港で成功する秘訣(2)

妖怪都市・香港で成功する秘訣
⑵自分とミラクルを信じる

ケリー・ラム(林沙文)
(Kelly Lam)教師、警察官、商社マン、通訳などを経て、現在は弁護士、リポーター、小説家、俳優、慈善歌手と多方面で活躍。上流社交界から裏の世界まで、その人脈は計り知れない。返還前にはフジテレビ系『香港ドラゴンニュース』のレギュラーを務め、著書『香港魂』(扶桑社)はベストセラーになるなど、日本の香港ファンの間でも有名な存在。吉本興業・fandangochina.comの香港代表およびfandangoテレビのキャスターを務めていた

英国統治下の香港では商売繁盛、だれもがハッピーに暮らしていました。しかし、中国へ返還された後のこの20年間で、香港はモンスターたちが住む妖怪都市に変貌してしまいました。世界の金融の中心であり、発展した国際都市でありながら、香港では信じられないようなひどい問題がたくさんあります。非常識で法律違反や道徳違反、デタラメな言動が毎日私たちの周りで発生しています。香港は日本を抜いて「長寿世界一」になったけれど、大きなストレスを感じる香港社会で暮らす市民はアンハッピーです。香港の新聞には毎日、政府やさまざまな事柄に対する不満の声が載っていますし、週末や祝日のデモに大人から中学生、子供まで参加する所なんて世界でも香港ぐらいだと思います。

今、香港人は毎日そんな「幸福度の低い香港」で暮らしています。では、アンハッピーな場所でどうやったらハッピーな人間になれるのでしょうか? 妖怪都市・香港で成功する秘訣は何なのでしょうか? 私は、ハッピーな人間になりたければ自分自身を信じることが一番大切だと思います。そしてミラクルを信じることがとても重要です。私は最近、あるミラクルな出来事を経験し、ますます自分を信じることが大切だということを認識しました。今回はその出来事を紹介しましょう。

香港で携帯電話を失くしたら

12月3日の日曜日、私は朝9時ごろ、旺角でミニバスを降りてから携帯電話をミニバスの中で忘れたことに気がつきました。11時ごろに沙田で友人に会うというアポイントメントがあるのでひとまずそちらに向かうことにして、その用事が終わってからどうしたらよいか考えようと思っていました。失くした携帯電話の後ろにははっきり私の事務所のポケットベルの番号が書いてあります。誰かが拾ったらその番号に連絡をくれるのではないかという期待も捨てずにいました。

そうこうするうち2時間以上経ってしまい、家族や同僚、友人たちの「もうチャンスはない」「あきらめなさい」という言葉ばかり私の耳に入ってきます。しかし、私はどうしてもあきらめられません。私ケリー・ラムはミラクルを信じる男ですから、沙田で用事が終わってからもう一回旺角の同じ場所でミニバスに乗って終点まで行くことにしたのです。その理由は、もしかしたら誰か乗客が私の携帯電話を拾って運転手に渡す可能性があると思ったから。運転手がそれを終点まで持っていく可能性もあるじゃないですか?

ミニバスの終点に着いてから分かったことは、誰も拾った様子がなかったこと。日曜日ですからミニバスの停留所付近には運転手以外に誰もミニバスの運行にかかわっている人はいませんでした。しかし、そのとき周囲をうろうろしていたあるおじさんが私に気付いてくれました。その人は偶然ミニバスの関係者で、私の代わりにミニバスの支配人に電話をかけて私の携帯電話がなくなったことを報告してくれました。その後、そのおじさんはそれ以上のヘルプはできなかったものの、絶対あきらめない精神を持つ私は終点で、次々に到着するミニバスの運転手に尋ねることにしました。

朝9時ごろ旺角で私を乗せた車を探したかったので、一生懸命頑張りました。携帯電話を失くしてからすでに数時間が経過していましたが、その時点で誰も携帯電話の後ろに書いてあるポケベルの番号にかけてきませんでしたから、私は、携帯電話はまだ私が座っていた席に残っている可能性があると考えたのです。終点に着いたミニバスに次々上がって座席をくまなくチェックしてあっちこっち探してみましたが、結局携帯電話は見つかりませんでした。

報酬がなければ協力しない?

もしかしたら家族や友人の意見が正しいのでしょうか? 香港で携帯電話がなくなっても、あるいはどんなものがなくなっても、報酬がなければ拾った人が持ち主に返すなんてことは絶対に起きないと皆は言いました。

終点を立ち去る直前にあるミニバスが到着しました。運転手は年輩のおじさんで眼鏡をかけています。態度はあまり親切ではありません。終点で車が止まってからずっと運転席に座ったまま新聞の競馬記事を真剣に読んでいるから、私のなくなった携帯電話の話に全然興味を示しませんでした。その上、そのミニバスは9時ごろ旺角の私が下車した場所を全然通ってないと言うのですから、彼の車で携帯電話がなくなったわけはなかったはずです。私も自分が乗ったミニバスの運転手の顔を全然覚えていないし、ミニバスの車体の様子を見ても古い車のようで、感覚的に私が乗った車はもっと新しかったような記憶があったから、まさかその車でうれしいミラクルが起きるとは思いませんでした。

しかし、あきらめないことは人生の希望ですから、なんとなく「試してみよう!」と直感しました。そこで、おじさんに私自身がミニバスに上がって失くなった電話を探してみたいと頼みました。おじさんは一瞬、嫌な顔をしたもののバスの自動ドアを開けてくれました。そしてまた新聞に目を落とし、競馬情報ばかり読んで、私のやることに興味ゼロという態度を取っていました。でも皆さん、ミラクルを信じる男のミラクルが実現できるという確信は間違っていません! 信じるパワーは軌跡を起こします。このあまりチャンスがないと思われたミニバスの中で、私が座った位置と同じ席で私のなくなった携帯電話を見つけたのです! 電話はなぜか座席の隙間に差し込んであり、あまり目立ってないように立っています。まるで主人の来ることを知っていて、私を呼んでいる、待っているように見えます。大変興奮した私は運転席のおじさんに報告したけれど、おじさんは相変わらず無感情、無反応の顔をしていました。

不可能なことを可能にする喜び

私が興奮したのは、携帯電話の中に入っていた情報やアプリを大事にしているからとか、電話を買い買えるとお金がかかるからとか、失くしたものが見つかったからという理由じゃありません。私が興奮する理由は他人、第三者、周りの人たちがいつも駄目、難しい、不可能、あり得ないとばかり言っていることがうまくいったから。不可能なことを可能にさせる、成功させるのは私の最大の喜びであり満足なのです。

この考え方を持っているから、いつも裁判での私の決戦はいつも信じられないくらい良い結果、理想的な結果が出て来ます。あくまでもそれはミラクルを信じるならミラクルが実現できるという決心、自信、確信の賜物です。自分を信じるなら、これから先の香港が今よりもっと最悪な状態になっていても、何の心配もありません。悩みの解消が早く出来たら、失敗に負けないように、最終的に優勝したり、自信満々に明るい人生へ向かうようにしなければいけません。

ある日、香港がアンハッピーの世界チャンピオンになっていても、自分自身が努力して「香港で極少数のハッピーな人間」にならなければいけません。ミラクルを信じるならきっとミラクルの実現が出来るのだから。


ケリーのこれも言いたい

 単純にミラクルを信じるのは迷信に近いけれど、ミラクルを実現させる実力、(山のように動かない)強い自信と絶対あきらめない決心は迷信ではありません。

(このシリーズは月1回掲載します)

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