4議席に15人が出馬、立法会補選迫る

4議席に15人が出馬
立法会補選迫る

立法会で議員資格喪失により空席となった6議席のうち4議席の補欠選挙が3月11日に行われる。立候補届け出が1月29日に締め切られ候補者の顔ぶれも確定した。だが立候補を届け出た者のうち3人が基本法を擁護しないとみなされて出馬資格が認められず、一部で反発を招いている。
(編集部・江藤和輝)

香港衆志の周庭氏の立候補無効を受けて民主派と自決派が抗議集会を開催

4人が候補資格得られず

補選が行われるのは直接選挙枠が香港島、九龍西、新界東の各選挙区1議席、職能別選挙枠が建築・測量・都市計画・緑地設計業界の1議席。新界東と九龍西では2議席ずつ空席となっているが、6議席の補選を同時に行えば親政府派が職能別選挙枠を含め3議席を獲得する可能性が高いことから、非親政府派が林鄭月娥・行政長官に補選を分けて実施するよう要求していた。

立候補届け出が1月16日に始まるのに先駆け、非親政府派の候補者調整を行う民主動力は14日、予備選挙を行った。予備選は九龍西と新界東の2選挙区についてそれぞれ候補を1人に絞り込むもの。九龍西では専業議政の姚松炎氏、香港民主民生協進会(民協)の馮検基氏、民主党の袁海文氏、新界東では新民主同盟の范国威氏、工党の郭永健氏、香港専上学生連会の張秀賢・元常務委員が候補者となった。2万5800人による実体投票と電話による世論調査、組織票を総合してポイントの最も高い候補者を当選とし、九龍西では姚氏、新界東では范氏が民主派の推薦を得て補選に出馬することとなった。

また香港島では香港衆志の周庭氏、職能別選挙枠建築・測量・都市計画・緑地設計業界ではCoVisionのポール・ジンマーマン氏が民主派の支援を受けて出馬する。

だが姚氏と周氏は出馬資格が得られない可能性が高まった。姚氏は2016年の選挙で当選した後に議員資格を喪失したが、消息筋は「法廷が全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会の基本法解釈に基づいて今期立法会での議員資格を取り消したのだから補選への参加資格もない」と指摘。一方、香港衆志は「民主自決」を最高綱領に掲げていることから周氏も出馬資格を得られないという。同党の黄之鋒氏が「民主自決」の選択肢の1つは「香港独立」であると公言したため独立の色彩が濃いとみられている。周氏は18日、メディアに英国籍を放棄したことを示す書類を見せ、基本法を擁護するとの確認書にも署名したことを明らかにし、「政府が出馬を認めない理由はない」と述べたほか、香港衆志は「香港独立」を主張したことはないと強調した。周氏が資格を得られなかった場合のBプランとしては民主党を離党した区諾軒氏(民間人権陣線副主席)が出馬することとなった。

姚氏が出馬資格を得られない場合は予備選の次点候補である馮検基氏がBプランとして出馬することになっていたが、馮氏は22日、記者会見を開き出馬の可能性を放棄すると表明。姚氏の支持基盤である自決派が過去1週間にわたり馮氏が出馬すれば勝算がないとの予想を流していたことが背景にあるとみられる。

馮氏は23日、香港電台(RTHK)の番組に出演し、出馬の可能性を放棄したのは非親政府派内からの圧力によることを明らかにした。馮氏は「ある進歩民主派と自決派」から「あなたが出馬するなら、われわれも絶対出馬する」と言われたことから、候補が乱立するのを避けるため辞退を決めたと説明した。圧力をかけたとみられている自決派の朱凱廸氏は記者会見し、自身や周囲はそのようなことを言ってないと釈明したが、主流民主派は不満を抱いている。民主動力は24日、予備選の覚書に調印したメンバーを集めて会議を行い、当初の取り決めを確認。馮氏が辞退したため、予備選で3位だった袁氏が代替候補となることで合意した。

非親政府派は内部分裂

周庭氏は27日、選挙主任から立候補届け出が無効との通知を受けた。選挙主任は無効の理由として「香港衆志が『民主自決』を最高綱領とし、独立や地方自治などを選択肢に含む住民投票に同意すると説明している。香港衆志が推進しようとしていることや綱領は基本法が実施する『1国2制度』の原則に反する。周氏は香港衆志との関係を解除していないことなどから基本法を擁護していないといえる」と説明。これを受け28日夜には民主派と自決派が「香港人はAプランがほしい」と銘打ち特区政府本庁舎前で抗議集会を開催。警察の推計ではピーク時に2000人が参加した。

一方、姚氏には29日の立候補届け出締め切りまで1時間を切ったころに有効との通知が届いた。姚氏の代替候補である袁氏は昼ごろ立候補を届け出たものの、姚氏が有効との知らせを受けてすぐさま立候補を取り下げることとなった。姚氏は周氏と同じく「民主自決」を掲げているものの、度々「香港独立」に反対を示していたことや、全人代常務委による基本法104条の解釈だけでは同一期の立法会選挙に出馬できないという確固たる法律基礎にはならないと判断された。

周氏の代替候補として出馬する区氏は31日に届け出が有効との通知を受けた。同じく香港島で立候補を届け出た元歯科医の馬金泉氏は推薦人不足のため無効。さらに新界東で立候補を届け出た本土派「社区網絡連盟」の劉穎匡・元スポークスマンも出馬資格が認められなかった。選挙主任は劉氏が16年にソーシャルネットワークで「香港独立」支持を表明した9件の関連投稿を挙げて「基本法を擁護していない」とみなし届け出は無効と判断した。

正式な候補者の顔ぶれは2月1日に確定した。20人が立候補を届け出て、うち1人が取り下げ、4人が無効とされ、最終的に15人が出馬することとなった。出馬資格が認められなかった4人のうち「基本法を擁護し香港特区に忠義を尽くす」とはみられないことが理由となったのが3人で、周氏、劉氏に続いて沙田区議会議員の陳国強氏が1日に無効通知を受け取った。陳氏は16年にも「香港独立」を主張していたため出馬資格を得られなかった。

親政府派では民主建港協進連盟(民建連)が新界東に>H家彪氏(香港工会連合会との二重党籍)、九龍西に鄭泳舜氏を出馬させるほか、香港島では新民党の陳家珮氏、職能別選挙枠建築・測量・都市計画・緑地設計業界では元同界選出議員だった謝偉銓氏が出馬する。

今回の選挙は4議席だけ行われること、選挙時期は全人代の会期と重なること、さらには周氏らが出馬資格を得られなかったことへの反発から親政府派が圧倒的不利となる。だが民主党を離党した中間派の黄成智氏、社会民主連線と人民力量の元メンバーである任亮憲氏らも出馬しており、非親政府派は内部分裂を引きずっていることから楽観はできないようだ。

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