オペラ『マンデラ・トリロジー』

大統領の波乱に満ちた人生を描く
オペラ『マンデラ・トリロジー』
アフリカ文化フェスティバルにて上演

自由の街ソフィアタウンでタウンシップ・ジャズに興じる黒人たち

 南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)に反対する闘争活動のために27年間を刑務所で過ごし、のちにノーベル平和賞を受賞した故ネルソン・マンデラ大統領の波乱に満ちた人生を描いたオペラ『マンデラ・トリロジー』が、アフリカ文化フェスティバルの閉幕プログラムとして1117日から上演される。公演に先駆け、作品とオーケストラの魅力などを関係者に聞いた。

故郷の首長から歴史や寛容の精神を学ぶ若きマンデラ

 2010年に南アフリカで初演以来、英国やアイルランド、ドイツやイタリアで上演され、いずれも絶賛を博した『マンデラ・トリロジー』は、今回の香港公演がアジア初演となる。「オペラ」というクラシック音楽のジャンルにはとどまらず、ブロードウェイのミュージカルや、コサ(Xhosa)という南アフリカの伝統文化や踊りが融合した意欲的な作品で、アフリカを代表する世界的なオーケストラであるケープタウン・フィルハーモニック(CPO)とケープタウン・オペラ・コーラス、そして南アフリカを代表する歌手たちによる実にスケールの大きな公演である。この公演を通じてアフリカ文化に触れ、そして故マンデラ大統領の足跡をたどる絶好の機会だといえよう。

釈放直前のマンデラと看守たち

オーケストラの魅力

 静岡交響楽団の常任指揮者で香港フィルの客演指揮も務めた指揮者・篠崎靖男さんはCPOを数多く指揮しているが、このオーケストラの魅力をこう語る。

 「ケープタウンは世界で一番魅力的な街に選ばれたこともありますが、海岸の沖に浮かぶロベン島にはかつて政治犯の収容所があって、マンデラ大統領が投獄されていました。1990年の釈放後、彼が『忘れることはできないが、許すことはできる』という有名なスピーチを行ったのが、ケープタウン市庁舎のバルコニー。CPOはまさしくその庁舎内にあるコンサートホールで定期演奏会を行っています。

 南アフリカのオーケストラは、 総じて英国的なスタイルを持っていますが、ケープタウンが植民地時代に英国文化の影響を強く受けたからでしょうか、このオーケストラは英国風な部分が特に強いのです。それでいて、ロシア・東欧の奏者が多いからなのでしょう、スラブ系の音楽になると、心の中から自分たちの音楽を抉り出すような弾き方をします。

 香港にいる方にもこの『マンデラ・トリロジー』とCPOを通じて、南アフリカを知ってほしいと思います」

ケープタウン市庁舎のバルコニーでスピーチするマンデラ

香港から南アフリカへの旅に期待

 CPOの代表は、「香港人指揮者の蘇柏軒(ペリー・ソー)さんや日本人指揮者の篠崎靖男さんに何度も指揮していただき、香港や日本とつながりの深いCPOが、香港で初めて演奏出来ることをとても名誉に感じ、また非常に楽しみにしています。CPO1914年に創設された100年以上の長い伝統を持つオーケストラで、オペラやバレエ、ミュージカル、クロスオーバーな作品など、定期公演を含め年間約130公演を行っています。今回の公演を機に、アジアでは数少ない南アフリカ直行便が飛んでいる香港から皆さまに南アフリカへお越しいただければ幸いです」と期待を寄せている。

(文・綾部浩司/取材協力と写真提供・LCSD、ケープタウン・フィルハーモニック管弦楽団、ケープタウン・オペラ)

■公演情報:
日時:11171820時開演、
   111915時開演
会場:香港カルチュラルセンター大劇場
料金:180580ドル
イベント公式サイト:www.worldfestival.gov.hk/2017/en/closing.html

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