Robotics Process Automation(RPA)の可能性について

Robotics Process Automation(RPA)の
可能性について

Robotics Process Automation(RPA) という言葉を聞いて、機械式の自立ロボットが作業するイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。RPAは現在業務効率化のためのツールとして注目されている技術であり、すでに多くの企業が本技術の導入を進めています。今回はRPAの概要やその効果、将来の可能性について解説します。(デロイト・トウシュ・トーマツ香港事務所 福田 素裕)

RPAとは

少子高齢化の進展やアウトソーシング展開先の経済発展、Globalizationの加速といった企業を取り巻く環境の変化により、間接部門では今後更なる高コスト化や人材不足、業務量増加が見込まれています。その結果、少ない人員でより多くの業務を処理するために、付加価値の低い単純な業務を可能な限り効率化し、より付加価値の高い業務にリソースを集中することが必要となります。RPAはこの「付加価値の低い単純な業務を可能な限り効率化」する上で、注目されている技術です。工場でロボットが組立やパッケージングをするように、例えば人事や経理財務等の業務領域で、ヒトの動きを真似て各種アプリケーションを操作するソフトウェアを指します。このRPAと呼ばれるソフトウェアは、いわばソフトウェアを動かすソフトウェア。ERP・メール・Excelなど異なるソフトウェアを使った手作業による入力やデータ連携の多くを自動化し、既存のシステムを変更することなく導入できる点が注目されています。

RPAの適用条件と導入が見込まれる領域

RPAは一定のルールに基づいて繰り返す業務に適しており、適用条件を満たす業務であればRPAがヒトに代わって業務を実施することができます。例えば、AシステムからBシステムへのデータ移管作業や毎期特定のウェブサイトを参照して特定資料をダウンロードし、それを加工してグラフ化する作業、受け取ったメール情報に基づいて、特定のシステムに入力、電子稟議申請する作業等は基本的に一定のルールに基づいて繰り返し実施する作業ですので、作業をRPAに置き換えることが可能です。RPAの適用条件と導入が見込まれる領域例を示すと下記の通りとなりますが、基本的にはデータの移行作業や集計、モニタリングといった領域に適していると言えます。

<Robotics適用条件>

・判断を要さないルールベースの作業
・音声認識を介さない
・紙媒体ではなく電子データ(紙媒体であってもOCRを利用することで対応可能)
・導入効果分析が可能な作業ボリューム(繰り返しや多量の工数を投下しているプロセス)

<RPAの適用業務(領域例)>

・財務会計業務:各種レポーティング、データ間の残高照合、グループ間取引の集計、経費申請・管理、与信管理等
・オペレーション業務:KPIや在庫等のモニタリング、営業資料の作成等
・人事業務:勤務シフト表の作成等

RPA導入の効果

RPA導入により業務効率化がすすめられ作業工数が大幅に削減されるということが代表的なRPAの効果ですが、導入効果を最大化するためにはまず導入対象領域(≒導入で最大の効果を得られる領域)を特定する必要があります。既存の業務内容や手順、各従業員が抱えている業務量や作業時期等の全体像を把握するために、社内の関係者間でディスカッションをするという「業務の見える化プロセス」が一般的な対象領域特定プロセスの第一歩と考えられますが、関係者間の時間的な制約や、一定の方向性を限られた時間で出すことを考慮し、RPAの導入を意識した外部の専門家がファシリテーターとして関与することも考えられます。この業務洗い出しのプロセスは、RPAの対象領域を特定できるだけでなく、会社が抱えている業務の全体像を見える化できるというメリットも備えています。

また、RPAはITツールによって作業を行いますので、絶対的な作業時間が人間に比べて多いことや、人間による作業と比較するとエラーが起こりづらく、また、仮にエラーが起こった場合でもエラー手順を定めておくことで(例えば、A氏にエラー発生メールを送る等)、ミスなく作業を実施することが可能になりますので、これらもRPA導入効果の一つと言えます。

終わりに〜RPAの将来の可能性〜

自動化、効率化の検討にあたってはITインフラや導入コストの問題から、これまではSSC(シェアード サービス センター)/BPO(ビジネス プロセス アウトソーシング)やERP導入を中心として業務効率化が進められてきました。RPAを導入した場合の業務運用コストはオフショアへ業務移管した場合よりもコスト削減効果が期待され、さらに業務効率化や業務の見える化、付随業務の削減といった非財務的な効果も期待されます。

現在のRPAでは、ルールにない処理を判断したり、音声を認識することはできませんが、今後の技術進歩により、人工知能によるルールにない処理の判断や音声認識等、ヒトの知能に近づいた機能が登場し、代替される業務範囲が拡大することも考えられます。また、OCRの技術的な進歩によって、紙情報のデータ化が簡易化され、RPAの対象領域が拡大することも考えられます。

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介

福田 素裕(ふくだ もとひろ)
Deloitte Touche Tohmatsu香港事務所
日系企業サービスグループ シニアマネジャー日本国公認会計士
政府機関勤務を経て、2008年有限責任監査法人トーマツ入所。トータルサービス部門において国内上場企業の法定監査業務や非上場企業の国内上場支援、日系企業の香港、シンガポール等におけるクロスボーダーでの株式上場支援等に従事。2015年7月からDeloitte Touche Tohmatsu香港事務所に駐在し、日系企業に対する監査、税務、M&A関連サービスおよび香港上場支援業務を手掛けている。
連絡先: mofukuda@deloitte.com.hk
サイト:www.deloitte.com/cn

※本記事には私見が含まれており、筆者が勤務する会計事務所とは無関係です。

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