旅行見本市 ITE&MICE Hong Kong (後編)

 香港最大の旅行見本市「第31回ITE(レジャー)&第12回MICE Hong Kong」が6月1518日に開催された(1516日は業界関係者向け、1718日は一般公開)。期間中は香港と中国本土マーケットを中心に旅行業界、メディア、MICE関係者や企業・団体、そして1万2000人近くのバイヤーが訪れ、活発な商談が繰り広げられた。後編は茨城県と北海道からの出展企業・団体に話を伺った。

会場の様子

インタビュー①
茨城県商工労働観光部観光局 国際観光課
主事 木下知香氏

茨城県商工労働観光部の木下知香さん

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け2014年11月から「いばらき観光おもてなし推進条例」を施行している茨城県。「外国人からの関心が高まった都道府県トップ10」(2016年6月発表)では第2位にランクインしている。東京から近距離にあるうえ、羽田・成田国際空港からも直通バスが運行するなど利便性の高さが受け、関心が高まりつつある。外国人観光客は、ここ数年で大きく伸び、数年前まで130万人だったのが、2015年には235万人(観光庁「訪日外国人消費動向調査」)が訪れている。

 茨城県ブースで2回目の出展となる茨城県商工労働観光部観光局国際観光課主事の木下知香氏に話を伺った。「昨年出展した時は、茨城県はどこにあるのか、と聞かれたことがあったが、今年はすでに茨城に行かれたという香港の人が多くブースにお越しくださり、今後の県内旅行プランの相談を受けることも多い」と話した。

 北海道に次ぐ農産物産出額全国第2位を誇る茨城県は、果物生産が盛んだ。なかでもメロンの生産量は全国1位で、約25%の全国シェアを誇る。観光客に特に人気が高いのが4月下旬から6月中旬が出荷時期となる茨城産メロン「イバラキング」だ。緑と赤の二種類の果肉があり、2010年に品種登録されている同商品は10年以上かけて品種改良された。大玉で香り高く、爽やかな甘さを堪能できるのが特徴だ。こうした茨城県の旬の果物を楽しみたいと、観光に来るアジア圏の観光客も年々増えている。

 特に土地の狭い香港では田畑が乏しいため、もぎたての鮮度の高い果物を自分の手で取る「果物狩り」は人気が高い。また、秋から冬にかけて旬を迎える県産の「栗」は、収穫量のシェア29%と日本一を誇る。大ぶりで甘みのあるのが特徴の笠間市でつくられる「極み」は、収穫後1カ月間零度で保存、熟成させることで糖質を3倍にしており甘みのあるブランド栗だ。

 こうしたなか、茨城県へのリピーターの間で最近増えているのが、漁業、農業への「農家民宿」。特に海外の学校から増えているそうだ、宿泊をすることでより日本の地方の魅力を知ってもらう教育旅行の流れができつつある。「この時期に茨城県でしか楽しめない食事を堪能しながら、今まで行ったことがない『新たな茨城県』を発見してもらいたい」。今後もユニークな企画を打ち出していく。

インタビュー②
星野リゾートグループ
第一マーケティングユニット
ディレクター(北海道担当)相内 学氏

星野リゾートグループの相内学さん

 都道府県の魅力度ランキング、リピートしたいランキングなどで常に1位を獲得している不動の人気エリア北海道。しかし近年では人口の減少などによる国内需要の縮小にともない、「北海道ブランド」をこれまで以上に確立、効果的に発信していかなければいけない局面に立っている。「海外への浸透を図り、アジアをはじめとした成長力を取り込んでいくことがさらに重要になる」と話すのは、北海道ブースに4回目の出展となる星野リゾートグループ第一マーケティングユニットディレクター(北海道担当)の相内学氏。

 食品輸出額の目標を2018年には1000億円、さらに2025年に1500億円まで伸ばすという目標を掲げている北海道。観光については、2020年までには外国人来道者数を300万人を目標にしている。こうしたなか、昨年の旅客数は2100万人を超え、過去最多になった。昨年1年間の国内線・国際線の合計着陸回数は7万2096回で10年間で4割以上増加している。この背景には、新千歳空港の海外路線拡大とともに、観光施設、ホテル、不動産などの投資が挙げられる。

 アジアからの来道者は年々増加しており、2016年は、中国本土(約54万6600人)、台湾(約52万9600人)、韓国(約42万4300人)に次いで、香港からは約17万800人が訪れている。(北海道経済部観光局による調査)。こうした推移は、同時に新千歳空港のキャパオーバーにもつながっている。相内氏は「スキーシーズンを中心にリピートしてきてくださる方が増えるのはうれしいが、同時に地方空港ならではの問題も深刻」と話す。

 外国人観光客の増加にともない、政府は新千歳空港に隣接する航空自衛隊千歳基地内にある千歳飛行場(旧千歳空港)の民間活用に向けた調整に入っている。アジアからの格安航空(LCC)を増便するなど、問題を解消していく方針だ。相内氏は「新千歳空港など一部だけでなく、道内の地方空港の海外便の誘致を高めることで、北海道全体の活性化になると思う」と話した。

 星野リゾートトマムは、北海道勇払郡占冠村にあるリゾートホテル。宿泊施設以外にも、ゴルフ場、スキー場をはじめとした様々なアクティビティーが充実しており、海外からもリピーターが多い。設立当初はアジアからくる来道者はほぼおらず、いても団体ツアーでせいぜい1泊ほど。個人旅行者もほぼいなかったが「最近はウィンターシーズンを中心に特にスキーを目的として5〜7泊される人が中心になっている。冬だけでなく、1年通して外にでてより日本を楽しみたいという人が多いのを感じる」という。

 今年6月には住宅宿泊事業法(民泊新法)が成立し、さらに消費者の選択肢の幅も広がった。こうしたなかホテル業の位置づけについては「今回の新法の成立により、宿泊施設業界として日本の活性化につながる土台ができたと思う。海外からの観光客が自然と地方を訪れ、リピートにつながるようになれば」と話す。北海道がさらに盛り上がるためにも今後の「宿泊の流れ」がカギになりそうだ。

(このシリーズは月1回掲載します)

【楢橋里彩】

フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/

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