数字で見る香港 〜中国返還から20年

 香港が中国に返還されて20年。我々はどのような道を辿ってきたのだろうか?そこで、香港菁英会と清華法律学会(香港)は共同で『数字で見る香港、返還から20年』という本の出版を企画。数字に基づき科学的に過去20年を振り返る。本書は、経済・発展、社会・民生、政治・法治、香港と中国本土、香港と世界の5つのテーマを切り口にしている。
(香港菁英会政治研究会主席・李浩然)


経済・発展

 経済・発展についてみると、中国に返還されて以降20年の間、香港は2度の金融危機と、重症急性呼吸器症候群(SARS)を経験。香港と中国本土の両政府、そして民間が共同でこれらの危機を乗り越えてきた。香港は世界の金融センターとして、また中国の金融、貿易、物流センターとして、域内総生産(GDP)、1人当たり所得、雇用などの面で安定的に拡大してきた。各種マクロデータの変動からみると、香港経済は外部環境の影響を受けやすく、外向型経済の特徴を持つ。同時に、香港経済は耐性が強く、過去の急激な景気減速の局面でも短期内に回復することができた。

 しかしながら、安定した経済成長の背後には、香港経済の構造的な問題が一段と鮮明化しているという問題もある。金融・金融関連以外の業界は徐々に縮小し、香港は金融業への依存度が一段と高まっている。一方で、所得や富の分配が極めて不均衡な構造を示しているほか、産業の空洞化や低賃金など問題もある。

社会・民生

 香港が中国に返還されて以来、政府は社会・民生分野を非常に重視。民生分野への投資拡大を続けてきた。しかし、香港の民生の状況は依然として改善の余地が大きい。

 中でも、住宅問題は市民の最大の関心事である状況に変わりない。近年、香港の用地供給や外部要因の影響を受け、民間住宅の価格、賃料はともに給与の伸びを上回るペースで上昇している。1999年を基数とした場合、2014年の不動産価格は157%上昇。一方、世帯所得中位数は41%の上昇にとどまっている。

 医療・衛生分野にも政府は投資を増やし続けている。1718年度の衛生分野向け支出は619億香港ドルで、経常支出全体の16・7%を占める。これは、9900年度の302億香港ドル、14・6%を大幅に上回る水準である。

 教育レベルが大幅に上昇している一方、若者の雇用情勢は必ずしも楽観できる状況にない。若者の職業選択の難易度が増し、失業圧力が若者の上昇志向を拒む要因になっている。一方で、貧富差は香港の長期的な問題としてくすぶる。2016年中期人口統計によると、香港のジニ係数は0・539に上昇。貧富差は一段と拡大している。

政治・法治

 返還から20年、総じて無事に経過したものの、異なる社会の価値観をいかに融合するのかなどの問題は解決が必要である。

 返還後、香港では市民の選挙に対する関心が上昇している。また、香港の健全な法治制度と清廉な政府は国際社会でも広く認められている。しかしながら、長期的な植民地統治により、香港人のアイデンティティや国への信頼などに関する問題が存在する。1829歳の若年層の中国人としてのアイデンティティは、1997年の16・1%から2016年には3・4%に低下。国への信認も低下を続けており、こうした問題は深刻に受け止め、注視する必要がある。

香港と中国本土

 返還以降、香港と中国本土は緊密な連携関係を確立し、共同発展を推進してきた。2003年には、香港と中国本土の両政府が香港・中国経済貿易緊密化協定(CEPA)を締結。CEPAの枠組みの下、両地の経済・貿易面での協力範囲が徐々に拡大し、相互補完関係、ウィンウィンの関係を構築した。

 2016年12月時点で本土の香港のサービス業に対する開放は153業種で、160業種のサービス業の95・6%を占める。香港工業貿易署は「香港サービス提供者証明書」を3000以上発行。CEPA原産地証明書で関税優遇を享受したのは57億元に達した。

 返還以降、両地の住民の往来も活発になった。本土住民の香港の総人口に占める比率はすでに三分の一を占めるようになった。また、香港市民の本土での就業も増えている。本土での就業者の80%以上はマネージャーや専門職などシニアの職位に従事している。

香港と世界

 香港は中国の中で最も国際的な都市で、国際ビジネス・貿易、さらには文化などの分野で世界と密接につながっている。香港は、中国本土を理解するための世界の入り口であると同時に、中国企業の海外進出の橋梁でもあり、名実ともに「グローバル都市」である。

 香港は世界で競争力の高い都市として評価されている。米国のヘリテージ財団が発表する「経済自由度ランキング」では、16年連続で経済自由度が最も高い都市として選出された。また、スイスのビジネススクールIMDが今年発表した「世界競争力ランキング」で香港はトップだった。さらに、香港は世界的な企業の地域統括本部の集積地でもある。2016年、香港域外の親会社の代表を香港に置く地域統括本部は1379社、地域事務所は2352社、現地事務所は4255社で、計7986社に達した。さらに、100を超える国・地域の公的機関(領事館や国際組織の支部等)があり、香港が国際都市として厚みがあることを示している。

 『数字で見る香港』にはこれらマクロ的な回顧のほか、過去20年の香港の出生数、香港取引所の売買高なども盛り込まれている。

(月刊『鏡報』2017年8月号より。このシリーズは2カ月に1回掲載)

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