典型的香港人の本性 日常生活の言動から読み説く(挨拶編)

ケリーラムが贈る香港夢


ケリー・ラム(林沙文)
(Kelly Lam)教師、警察官、商社マン、通訳などを経て、現在は弁護士、リポーター、小説家、俳優と多方面で活躍。上流社交界から裏の世界まで、その人脈は計り知れない。返還前にはフジテレビ系『香港ドラゴンニュース』のレギュラーを務め、著書『香港魂』(扶桑社)はベストセラーになるなど、日本の香港ファンの間でも有名な存在。吉本興業・fandangochina.comの香港代表およびfandangoテレビのキャスターを務めていた

典型的香港人の本性 
日常生活の言動から読み説く(挨拶編)

日常生活のいろいろな動き、態度からは人間の本音、本性が見えてきます。これまでに、タクシーとエレベーター利用時に分かる香港人の性格を解説しましたが、今回は「挨拶」から典型的な香港人の心の中を見ていきましょう。
典型的な香港人は「挨拶」に対して非常にケチな人間です。まず見知らぬ人には挨拶しません。これには理由があります。香港人同士はお互いにライバル意識が大変強いから、相手に一歩も譲りません。ですから、相手が同じ人種なら知らない人にほとんど挨拶しないのです。これは何十年も変わらない香港の習慣です! もし同じ人種の相手に対して理由もなく挨拶するなら、典型的な香港人には異常な行為とか怪しい行為と思われます。

もし男性が女性にはっきりとした理由もなしで挨拶するなら、きっとナンパだと誤解されるでしょう。女性が明確な理由もなく男性に挨拶するなら、もっと大問題です。「女尊男卑」の香港社会で、女性が男性に挨拶することはなかなか想像できないと思います。何かたくらんでいるんじゃないか? すぐそこまで疑ってしまいます。同性同士でも知らない人に挨拶したら同じように怪しまれます。騙すつもりじゃないか? と考えますから、知らない人に挨拶することなんて典型的な香港人にはほとんど期待できないと思います。

挨拶してはいけない相手とは

では、香港で挨拶をしてはいけない「知らない人」とは一体誰のことを指すのでしょうか? 例えば、毎日会う近所の人、マンションの管理人や警備員、シャトルバスの運転手、受付スタッフ、ジムのコーチ、プールの救助員などはいつも会うし、彼らに世話になっているけれど、こんな人たちは典型的な香港人にとっては知らない人と全く同じなのです。近所に10年、20年住む人に、ほとんど挨拶しなくてもおかしいことではありません。友達じゃなければ知らない人と同じ、挨拶する必要はありません。

では、どうして毎日会っているご近所さんでも「おはよう」や「こんにちは」と言わず、会釈もしないのか? 根本的に典型的な香港人はライバル意識が強く、お互いに警戒心も強く、失礼でいい加減、冷たいという態度が当たり前。だからご近所さんでも挨拶する必要も習慣もないのです。

報酬払えば挨拶不要

また、香港人10人のうち8、9人までが、毎日自分に「おはようございます」と言う管理人やドアを開けて丁寧にお辞儀するスタッフに対しても、会釈も挨拶もしないと思います。単純に知らない人だからという理由のほかに原因があります。それはこのスタッフたちは全てギャラをもらう人間だから。マンションで働くスタッフは報酬をもらってその仕事をしているので、こちらからお金を払うわけですから、挨拶する必要はありません。相手のほうがこちらに挨拶する責任があるのです。相手は雇われた人、自分たちは客ですから、挨拶する義務はありません。

これは香港の金銭感覚によるものです。ギャラをもらう人がギャラを払う人にあいさつするのは社会の鉄則。その逆はおかしいです。例えば銀行員、レストランのウエイター、ホテル、商店の従業員などがどんなに丁寧にサービスしてくれても自分は挨拶する必要はありません。

もし知らない人やギャラをもらう人に挨拶したら香港の文化に違反する変人です! 挨拶する必要はないし、ニコニコする必要ももっとないです。友達じゃなければ何も協力しません。

挨拶したら変人扱い

私ケリー・ラムはいつも周りの人たちに丁寧に挨拶します。お辞儀して、感謝を示します。私は相手に挨拶、お辞儀、ニコニコすることは平和な生活、社会の調和、人々の幸福な毎日に必須だと考えます。人間はお互いに尊重し合うべきです。しかし、香港の文化では大変珍しい人といわれます。皮肉な話ですが、もし香港人が私と同じことをやるなら、典型的な香港人の目の中できっとおかしな人と思われるでしょう。香港人同士で、知らない人に積極的に挨拶したり、ありがとうと言うことは、どう見ても変な人、怪しい人がすることなのです。でも、そんな風に香港社会で大変珍しい人と言われても、私は今後も続けます。明確に周囲の人に分かりやすいように挨拶します。周りの典型的な香港人にその姿を見てもらいたいから。初めて行くところでも「おはようございます」と礼儀正しく挨拶し、何かしてもらったら「ありがとうございます」と言う習慣を続けていた私には、その相手からももっとサービスしてもらったり、もっと親切にしてもらったという経験もたくさんあります。

根底にあるのは差別

香港人が挨拶しないもうひとつの理由は、大きな声では言えませんが「差別」によるものです。典型的な香港人は差別対象に挨拶することは不可能。自分より格下の相手、自分がギャラを払う相手にはほとんど挨拶することはありません。差別している相手から先に自分に挨拶されても、気持ち的に嫌だし、受け入れられないことです。
いろいろな差別の中でも特に、人種差別が最大の問題です。香港にはさまざまな人種が住んでいて、発展途上国から移住した人や、先祖や家族が発展途上国出身だが自分は香港で生まれ育ったという人がいます。私は仕事柄、香港人をはじめ中国本土、台湾、シンガポールの人との付き合いがありますが、この4カ所の中で一番差別が強いのは間違いなく香港です! 4カ所にはひとつの共通点があり、いずれも中国人、中国血統の人種が住んでいる社会です。その中で、発展途上国の人々が差別される程度は香港が一番強烈、最悪といえるでしょう。

金銭主義の元植民地

香港で差別がひどいのには理由があります。発展途上国の人々が中国本土であまり差別されない理由は、中国にも少数民族がいっぱいいるから。人種差別はそれほど感じないでしょう。

シンガポールならもっと理想的です。シンガポールは中国人、マレーシア人、インド人が長く共存し、国の政策も調和社会、平和社会を守るために非常に少数のマレーシア人、インド人の福祉、福利を保護しており、発展途上国の外人を差別することはあまりありません。

台湾なら日本統治の歴史もあるから、人間の持つべき尊敬、尊重、礼儀を守る文化があり、発展途上国の外人への差別も強くありません。
香港はまったく違います。英国植民地だった影響で、古いものを捨ててもいいと考え、古い文化、歴史も要らない、金銭世界、実力社会ですから、億万長者になった人が勝ち組とされる社会です。毎日、商売や投機、賭け事に関する話題ばかりで、典型的な香港人なら他国の文化、歴史をゆっくり勉強する時間はありません。植民地の人間は白人に憧れます。白人は優秀な人種で、実力者でお金もある。その逆に発展途上国の人種は貧乏で、教育も遅れがちだと思っていて、肌の色も黒いから強烈に差別するのです。

口に出さなくても心の中では、彼らとなるべく対話をしない、一緒に仕事もしたくない、客としてサービスしたくないと考えています。これは紛れもない事実です。

次回は典型的な香港人のいい加減なところ、ルーズなところを解説しましょう。

ケリーのこれも言いたい
サービスを提供してくれた相手に毎日挨拶をすることは、「挨拶に対するケチ精神」に違反する。挨拶するにも挨拶されるにも、相手の身分、人種、自分との関係までこだわるのは、典型的な香港人のやり方である。

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