「台港民主連線」設立 台湾勢力が支援
台湾の立法院で6月12日、「台湾国会関注香港民主連線」(台港民主連線)の設立茶話会が行われ、香港からも自決派などの立法会議員らが出席した。台湾の独立派と香港の過激な勢力が合流する動きに中央政府は神経をとがらせている。(編集部・江藤和輝)
独立派の結託を中央が警戒
台港民主連線は台湾独立派「時代力量」の黄国昌・主席が発起人となり同党や民進党の立法委員18人が参加。香港からは急進民主派「人民力量」の陳志全・議員、自決派「香港衆志」の羅聡冠・議員と黄之鋒・秘書長、無所属自決派の朱凱廸・議員、それに香港専上学生連会(学連)の周永康・元秘書長が出席した。黄国昌氏は「米国議会の中国事務委員会を参考に香港の民主獲得に協力するプラットホームにする」と設立目的を説明。黄之鋒氏は香港独立を画策しているとの批判を避けるため、「香港は自治を獲得するだけで、出席した議員は香港独立を主張したことはない」と強調した。
台港民主連線の設立に対し国務院台湾事務弁公室の馬暁光・報道官は14日の記者会見で「われわれは台湾独立勢力と香港独立勢力が結託し、香港で実施している1国2制度をかき乱し、香港の内部事務に介入し、香港の繁栄と安定を破壊することに断固反対する」と表明。また昨年の台湾政局の変化によって両岸関係の平和的発展の政治基礎は破壊されたと述べた。
15日には立法会の親政府派議員39人が台港民主連線の設立活動に出席した3議員を譴責する声明を連名で発表した。声明には梁君彦・議長と中間派の陳沛然氏(医学界選出)を除く親政府派議員がすべて署名し、3議員に対して「中華人民共和国香港特別行政区の立法会議員でありながら公然と台湾独立の色彩が濃厚な組織の活動に参加し、香港独立と台湾独立の結託を推進し、国家の統一を脅かし、基本法に違反する」と非難した。一方、3議員は社会民主連線の梁国雄氏、香港本土の毛孟静氏とともに記者会見し、陳志全氏は「3人とも香港独立を推進するつもりはなく分離主義の支持者ではない」と述べ、同組織の活動に参加しただけで加入したわけではないと釈明した。
こうした動きについて全国人民代表大会(全人代、国会に相当)香港代表の陳勇氏は「中央の神経に触れた」と指摘したほか、香港工会連合会の黄国健・議員は「香港独立分子と台湾独立組織が結びついて行動がますます活発となり、中央の警戒を招いている。これが続けば中央が特区政府に適切な時間内に基本法23条の立法を完了するよう促すことは否定できない」とコメントした。また全国香港マカオ研究会の劉兆佳・副会長は「分離主義や香港独立に対する中央の警戒が増すだけ。中央が今後強硬な態度を採る際、さらに世論の支持が得られる」との見方を示した。
独立派「香港民族党」の陳浩天・召集人は19日、「香港陥落20周年追悼集会」を30日に開催すると発表。約300人の参加を予定し警察に申請を提出したが、認められなかった。こうした折、チベット独立を支援する台湾漢藏友好協会の会長を務める孫治本氏が毎月、陳氏に5万ドルを提供していることが暴露されたほか、孫氏は自決・本土派とも頻繁に接触していることが明らかになった。
孫氏は国立交通大学通識教育中心と人文社会学系の副教授で、分離主義思想に満ちた「民族論」や「公民主義論」を著している。行政院大陸事務委員会の研究報告を作成するなど台湾当局との関係も深く、一部研究費は民進党政権から支給されているという。2007年から毎年香港を訪れ、14年には「セントラル占拠行動」にも参加。孫氏が主催したフォーラム「台湾と香港の地元意識と民族問題」には、香港から城邦派の陳雲氏、台湾に移住した独立派学者で「ウイグルの友会」の林保華・理事長、その妻で元民主党メンバーの楊月清氏を招いた。香港衆志の羅冠聡・主席も孫氏と接触があることを認めているほか、昨年の立法会議員選挙では楊月清氏が選挙対策本部メンバーを務めるなど、両地の過激な勢力の連携が進んでいる。
香港は国際政治の土俵
国務院香港マカオ弁公室の馮巍・副主任は6月16日、昂船洲(ストーンカッターズ島)基地で行われた中国人民解放軍駐港部隊の香港駐留20周年記念式典に出席し、香港が国際政治のパワーゲームの場となっていることを指摘した。
馮副主任は「香港に駐留軍が存在することは国家の主権を最も直接的に体現することとなる。駐留軍は違法なセントラル占拠行動など複雑な局面を処理する際に強い後ろ盾になる」と強調。さらに「現在、世界情勢は複雑で変化が激しく、香港は国際政治の土俵となっており、各種複雑な局面を処理する上でさらに大きな試練に直面する」との見方を示した。
中央人民政府駐香港特区連絡弁公室(中連弁)の前身である新華社香港支社の周南・元支社長は香港電台(RTHK)のインタビューを受け、近年、「香港独立」を鼓吹する者がいる問題について「香港は150年余りにわたって植民地統治を受けたため、すでに植民主義によって洗脳されている。社会にこのような動乱分子が現れるのは不思議なことではない」と述べた。
特に中国政府が神経をとがらせているのが米国のある勢力による干渉である。民主党の李柱銘(マーチン・リー)元主席、香港衆志の黄之鋒・秘書長、銅鑼湾書店の林栄基・元店長は5月3日、米国の中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)の公聴会に出席し、米国に対し公然と香港事務への干渉を要求した。李氏は民主派議員に対する米国の支援に謝意を表すとともに、米国が引き続き香港の若い民主派を支援するよう要求。CECC共同主席を務める共和党のマルコ・ルビオ議員は冒頭で2月に提唱した「香港人権と民主法案」による中国への制裁に言及した。黄氏は昨年11月にもCECCの招きで米国で講演し、ルビオ氏と面会している。
林鄭月娥・行政長官は就任前の6月20日に報じられた新華社とCCTVのインタビューで「大部分の香港市民は『香港独立』が1つの検討可能な案だと思ったことはないでしょう。今後の特区政府は厳格に法に照らして事を行う」と述べ、あらゆる「香港独立」行為は法律に違反すると指摘した。また特区政府は教育対策に力を入れ、「香港独立」が香港の繁栄と安定を脅かすことを社会に説明し、独立志向が少年児童を害するのを防がなければならないと強調。今後は幼児段階から「私は中国人」という意識の育成を開始し、中国史を中学校の必修科目に盛り込むべきと提唱した。国民教育と基本法23条は依然大きな課題として香港社会にのしかかっている。