吉祥というおもしろい犬

《111》 犬の寄宿舎も効果なし

動物との幸せな時間

引っ越しパーティー時の吉祥(筆者撮影)

 吉祥というおもしろい犬がいる。しつけのため犬の寄宿舎に入って、2か月後に無事帰宅した。学費総額1万ドル、しかし吉祥は帰宅後数時間で見事に飼い主さんの怒りを買った(笑)。

 吉祥は新界で野良犬として生き抜いてきた、たくましく若いオス犬。皮膚がただれ、やせ細り、はげだらけの状態でさまよっているところを「Paw Guardian-毛孩守護者」という団体に保護された。何年も1匹で過ごした生活は終わり、幸せへの一歩を踏み出した。そこへ私の知り合いが現れ、彼女にはすでに2匹の飼い犬(メス)がいるのだが、体毛の少ない吉祥を里犬として引き取った。縁起のよい吉祥という名前を付け、大切な息子犬として甘やかして育ててきた。おいしい手作りの食べ物、ママのキスやハグ、あっという間に吉祥はママ命の犬となり、1年も過ぎるとだいぶ毛も生えてきた。

 さて、今まで過酷な生存競争に耐えてきた吉祥には問題があった。それは嫌いな犬を襲うというもの。散歩途中で嫌いなタイプの犬に会うとものすごい勢いで飼い主さんを引っ張り、犬を攻撃しに行くのだ。困った飼い主さんは、半年以上もの待ち時間を経て、吉祥を元朗にある犬の学校に入校させた。寄宿舎に入った後は、飼い主は数週間、犬に会うことが許されず、犬たちは集中してトレーニングを受ける。大規模な施設には広いドッグランを備え、同級生との遊び、プール訓練などもあり、犬たちにとってはある意味パラダイス。そこで毎日を過ごす訓練犬たちの様子を飼い主さんたちはビデオで確認する。

 吉祥の飼い主さんは、「吉祥は家に帰りたくないと思うの、だって楽しそうにほかの犬たちと広い場所に住んでいるし…」と苦笑いしていた。もともと吉祥は1カ月で訓練を終えるはずだった。しかし、どうにも行動改善が足りないということで1カ月延長、飼い主さんは財布をみて泣いていた。1カ月の学費はすでに割引価格。なぜなら、吉祥はレスキューされた犬だから。しかし1万ドルは辛い。

 やっと吉祥がトレーニングを終えて家に帰る許可が下りた。飼い主さんはウキウキしていた。帰宅した日、吉祥は家のにおいをかぎまわり、なぜか殿様のように偉そうな態度を取ったそう。そして、その後トレーナーさんが横に付きながら散歩の実地訓練へ。家を出た瞬間、吉祥は嫌いなタイプの犬を見た。そして飼い主さんを引っ張ってその犬に突っ走り、襲いかかりそうになった。これが1万ドルの行方…。吉祥と飼い主さんはトレーナーさんの自宅訪問を何回か受けて、今も安全な散歩の仕方を学んでいる。

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