#106 広東省・香港・マカオ 粤港澳大湾区開発推進に関する枠組協定に調印

「華南ビジネス最前線」では、お客様からのご質問・ご相談が多い事項について、理論と実務の両方を踏まえながら、できるだけ分かりやすく解説します。
(三菱東京UFJ銀行 香港支店 業務開発室 アドバイザリーチーム)

今月の質問
最近、粤港澳大湾区開発推進に関する枠組協定が調印されたと聞きました。その内容について教えてください。

7月1日、中国国家発展改革委員会と広東省、香港、マカオ地区政府は「広東省・香港・マカオ協力深化、大湾区建設推進に関する枠組協定」(以下「本協定」)に調印した。「本協定」は広東省と香港、マカオの一体的開発・発展を推進するものである。本稿では、その概要を紹介したい。

⒈ 背景

 粤港澳大湾区(以下「大湾区」)は広東省珠江デルタ地域の9市(広州・深圳・東莞・珠海・佛山・恵州・中山・江門・肇慶)および香港とマカオで構成され、総面積は5・6万平方キロメートル、総人口は6700万人超からなる。同地域は恵まれた立地環境にあり、2016年世界コンテナ取扱量上位港のうち、第3位深圳港、第5位香港、第7位広州港はこの地域にある。また、この地域は中国における重要な経済地域でもあり、同地域における2016年のGDP総額は9・4兆元、中国全体のGDP(香港・マカオを含む)比で12%を占めている。

 経済の発展に伴って土地や人件費の高騰、環境問題の深刻化など諸問題が顕在化したことは、広東省における持続的な経済発展の阻害要因となりつつある。一方、香港およびマカオの経済は特定産業に依存している。香港では2015年度、金融、貿易・物流、専門サービス、観光の4大産業におけるGDP比は全体の57%を占め、マカオはカジノ産業だけで全体の約60%を占める。こうした環境下、各都市の産業発展の相互補完・イノベーション協力強化により経済発展に新しい原動力を与え、更に土地資源の集約利用と環境の共同保護で良質な生活圏を構築することは喫緊の課題となっていた。

表1 大湾区開発に関するこれまでの流れ

⒉主な内容

 本協定は、広東省・香港・マカオ間協力強化による大湾区開発・発展推進に向け、詳細に示された指針となり、2017年7月1日から発効され、有効期間は5年である。その概要は表2の通り。

表2 本協定の主要内容

⒊ まとめ

 大湾区戦略の根本的な目的は大湾区各都市の経済の融合を通じて、地域全体の総合的競争力を引き上げることである。各都市の経済を融合させるため、インフラ施設の連結、市場の一体化、自由な資金移動、人の自由往来が不可欠である。

 現在進行中の大型越境インフラプロジェクトの代表的なものは、港珠澳大橋(2017年末に完工予定)、広深港高速鉄道(2018年第3四半期に開通の見込み)、蓮塘/香園圍口岸(新出入国管理所、2018年末に落成予定)などが挙げられる。これらインフラ施設の使用開始により、今後、大湾区都市間の移動時間が大幅に短縮され、香港からマカオ・珠海・深圳前海までは約45分、広州・中山・江門までは約1時間、その他都市までは約3時間での移動が可能になる。

 総合的競争力向上のため、大湾区都市間の提携や産業の相互補完による一本化した経済体系の構築は重要である。深圳前海(以下「前海」)では既にその試みが始められている。前海では「香港資本のサービス産業を1000億元超規模への発展」などの目標が掲げられ、香港企業に対し土地の3分1以上を提供することや、香港の金融産業の会社設立支持策を打ち出している。大湾区各都市の産業にはそれぞれ強みがあり、例えば香港では金融、深圳はイノベーション、広州では製造業といった具体である。今後、企業の資金調達は香港、研究開発は深圳、製造は広州といったようなサービス体系が大湾区内で構築できれば、地域発展の潜在余地は大きい。

 一方、香港企業向けの中国市場開放策であるCEPA(香港・中国経済貿易緊密化協定)では、一部業種において香港のサービス提供者に対する制限が引き続き存在しているほか、中国本土の外貨管理制度、大湾区都市間の自由往来制限は大湾区開発の課題である。今後、本協定に基づき、大湾区発展の重大問題の解決と協力事項の調整のため、定期的な合同会議開催や年次作業計画の策定が行われるとされており、今後こうした課題の解決が期待される。弊室では引き続き関連政策をフォローしていきたい。(執筆担当:何 薇波)

(このシリーズは月1回掲載します)

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