▶130◀ 日本と中国の会計基準の相似点・相違点③


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日本と中国の会計基準の
相似点・相違点③

 日本と中国の会計基準の相似点、相違点を比較解説するシリーズ3回目の今回の論点は税効果会計です。なお、文中の意見に関する部分は私見であることをあらかじめお断り致します。
NAC名南広州会計事務所 堀西健夫)


 日本では2000年から広く導入された税効果会計について日本における定義をまず確認しておきたいと思います。税効果会計は、企業会計上の資産または負債の額と課税所得計算上の資産または負債の額に相違がある場合において、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする法人税等の税金の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続である、とされています。(「税効果会計に係る会計基準」第一)つまり、会計上の税引前当期純利益と税法に基づき算出される課税所得に相違がある時、法人税等を適切に期間配分するよう対応させる手続きと言えます。これにより適正な期間損益計算が可能となります。

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 税効果会計の方法には資産負債法と繰延法があります。資産負債法とは、会計上の資産または負債の額と課税所得計算上の資産または負債の額との間に差異が生じており、当該差異が解消する時にその期の課税所得を減額または増額する効果を有する場合に、当該差異(一時差異)が生じた年度にそれに係る繰延税金資産または繰延税金負債を計上する方法です。(「税効果会計に係る会計基準の適用指針」89⑴

 一方、繰延法とは、会計上の収益または費用の額と税務上の益金または損金の額との間に差異が生じており、当該差異のうち損益の期間帰属の相違に基づくもの(期間差異)について、当該差異が生じた年度に当該差異による税金の納付額または軽減額を当該差異が解消する年度まで、繰延税金資産または繰延税金負債として計上する方法です。(「税効果会計に係る会計基準の適用指針」89⑵

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 資産負債法、繰延法ともに会計上と税務上の差異の認識に対して税効果を認識する点では同じものと言え、資産負債法における一時差異と繰延法における期間差異の範囲はほぼ一致します。(「税効果会計に係る会計基準の適用指針」90)両者の差異は、資産負債法が税効果を認識した翌期以降に支払うまたは軽減される税額を、貸借対照表に適正に計上しようとするものであるのに対して、繰延法は損益の期間帰属の相違に基づく差異(期間差異)について、発生した年度の当該差異に対する税金軽減額または税金負担額を差異が解消する年度まで貸借対照表上に繰延税金資産または繰延税金負債として計上するものです。

 そのため、資産負債法により計上する繰延税金資産または繰延税金負債の計算に用いる税率は、一時差異の解消見込年度に適用される税率ですが(「税効果会計に係る会計基準の適用指針」89⑴)、繰延法により計上する繰延税金資産または繰延税金負債の計算に用いる税率は、期間差異が生じた年度の課税所得計算に適用された税率です。(「税効果会計に係る会計基準の適用指針」89⑵

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 日本の税効果会計基準は資産負債法を採用していますが、その理由の一つは資産負債法は繰延税金資産、繰延税金負債を将来の法人税等の前払い、未払いと考えその資産性、負債性を重視するものであるのに対し、繰延法が当期の税引前利益に対応しない部分の時期以降への繰延処理であり、資産性、負債性が認められないためだとされています。また日本が税効果会計を導入した当時すでに国際的にも資産負債法の採用が趨勢となっていたことも大きく影響したものと思われます。

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 2006年制定の中国の企業会計準則(いわゆる「新準則」)では、企業は資産、負債を取得する際、その税務上の簿価を確定しなければならないが、資産、負債の帳簿価格とその税務上の簿価とに差異がある場合、これにより生じる繰延税金資産または繰延税金負債を認識しなければならない、としており資産負債法が採用されています。(「企業会計準則第18号-企業所得税」第二章第四条)

 中国の古い会計準則である企業会計制度(いわゆる「旧準則」)では、税効果会計の適用は任意であり、税効果会計を適用する企業は、繰延法あるいは資産負債法を選択して計算することができると規定しており、資産負債法と繰延法の選択適用が認められています。(「企業会計制度」第七章第107条(一)2)

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 繰延税金資産の計上は、将来減算一時差異および税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性、つまり将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかを、一定の基準に照らして効果を有すると判断して初めてできるものです。(「企業会計基準適用指針第 26号繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」6)また、計上した繰延税金資産は、その回収可能性を毎期見直して、将来減算一時差異および税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の全部または一部が将来の税金負担額を軽減する効果を有さなくなったと判断された場合、計上していた繰延税金資産のうち回収可能性がない金額を取り崩します。(「企業会計基準適用指針第 26号繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」8)この規定は日本の税効果会計に関する定義ですが、中国の「新準則」においても将来期間において十分な課税所得額を獲得することができず、繰延税金資産の便益を控除することができない可能性が高い場合、繰延税金資産の帳簿価額を減額しなければならないとされていますので、中国においても繰延税金資産の計上はその回収可能性を慎重に検討することが求められていると言えます。

(このシリーズは月1回掲載します)


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