建築が見せる幸せの色 山口潔子作品展

山口潔子作品展
建築が見せる幸せの色

「Lanterns on Wellington Street – Peel Street」(2018)現実と幻想が折り重なった風景

 精巧で、なおかつ柔らかい建築画。京都で制作活動する水彩画家・山口潔子さんの個展がセントラルで開催中だ。かつて香港に暮らしていた山口さんが見たセントラルを描く11作品と、京都、滋賀、長崎など日本を描いた24作品が展示販売されている。

「Old Pawn 和昌大押」(2018)トラムの広告やお店の看板には、友人たちへのメッセージが込められていることもある。構図の段階から全て手描きだ

 元々は建築家を目指し米国カリフォルニア大学バークレー校建築学科で学んだ山口さんは、やがて建築物を作ることよりも見ることに興味を覚え、京都大学大学院でアジア・アフリカの建築史を学び博士号を取得。研究のためフィリピンのセブ州に滞在した時に米国植民地時代の歴史的建築物をスケッチし始め、その絵がセブの人々に喜ばれたことからアーティストとしての歩みが始まった。

「Boutiques on Aberdeen Street」(2018)2014年ごろのセントラルの通り。香港の町並みは変化が激しいので、創作を加えていても、見た人は気付かずに納得してしまうという

 その後、中文大学で教鞭をとるために在住していた2010年ごろの香港で初の個展を開く。都市計画や環境問題に批判の声が高まっていた当時の香港の風景にも幸せを見いだし、建築画の技法に独自のテーストが重なっていった。その絵を見た人々から「香港をこんな風に描いてくれてありがとう」と言われてうれしかったという山口さんは、見る人を幸せにする建築画を描き続けている。潔子という名前は、父の恩師であった数学者の岡潔氏にちなんでつけられたという。その名にふさわしい多彩さを秘めた緻密で暖かい建築画をぜひ見てほしい。

(文・綾部智美/写真提供と取材協力・Art Beatus Gallery

■都市故事 山口潔子作品展
City Narratives – works by Kiyoko Yamaguchi
会場:Art Beatus Gallery
所在地:129-133 Wellington Street, G/F, Central, Hong Kong
開催期間:〜9月28日(金)
開館時間:11001900日曜祝日休み

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