11月に立法会補選、民主派は再び内紛

11月に立法会補選
民主派は再び内紛

議員資格を喪失した自決派の劉小麗氏は議席奪還を目指す

立法会で空席となっている直接選挙枠2議席のうち九龍西選挙区の補欠選挙が11月25日に行われる。こうした中、香港民主民生協進会(民協)の創設メンバーである馮検基氏が7月11日に離党を発表するとともに、3月の補選での内幕を暴露するなど民主派の統一候補擁立のあり方に疑問を呈した。(編集部・江藤和輝)


昨年7月に高等法院(高等裁判所)から議員資格喪失の判決が下された自決派の劉小麗氏は5月29日、上訴撤回を発表した。立法会議員の就任宣誓をめぐる裁判で議員資格を喪失した劉氏は、社会民主連線の梁国雄氏とともに昨年9月に上訴を申請していた。劉氏は自身が当選した九龍西選挙区の議席の補選を速やかに行うため上訴を放棄したと説明。自身が補選に立候補するかどうかは決めていないが、工党の李卓人・元主席を民主派の代替候補として推薦したことを明らかにした。民主建港協進連盟(民建連)の李慧瓊・主席は、劉氏が当初上訴したのは6議席の補選を分けて行うための「政治操作」だったと批判。当局はこれを教訓として今後は補選を一度に実施し公費を節約すべきと指摘した。

民協の何啓明氏は6月3日、香港電台(RTHK)の番組に出演し、九龍西選挙区の補選で民主派の予備選挙を行う場合は候補擁立を検討すると表明した。すでに劉氏が李卓人氏を民主派の代替候補として推薦したが、何氏はこれを「欽定」として反対し、「欽定方式を採用するならば本当の民主派支持者の合意ではない」と批判した。また3月の補選で予備選を経て代替候補となりながらも辞退した民協の馮検基氏が離党するとの情報が流れているため、馮氏が民主派統一候補とは別に補選に出馬する布石ではとみられている。だが何氏は馮氏が先の補選の際に「最後の出馬」と表明しているため、その可能性を否定した。仮に馮氏が出馬すれば民主派は票が割れて敗北する可能性が大きい。

馮氏は6月8日付『信報』のインタビューで新たな団体設立などに言及した。圧力団体出身の馮氏は数十年の政治家生活を経て「政党は宣伝や露出を主とするため実際には民生問題の解決は難しい」と感じていることを吐露。このため原点に戻って圧力団体のような民生プラットホームを組織することを明らかにした。ただし補選に出馬する布石として離党するのではないかとのうわさには触れなかった。新組織のメンバーは主に無党派の市民や民協の元メンバーで、今のところ10人足らず。政党ではないので民協のメンバーも離党しなくとも加入できると指摘。馮氏はもともと民協は政党兼圧力団体と思っていたが、中国本土と香港の関係や「一地両検」のような政治議題も処理しなくてはならず、政党間の合意づくりなどにウエートが置かれることに不満を抱いていたという。

工党執行委員会は6月25日、劉小麗氏が「小麗民主教室」の名義で団体メンバーとして加入することを承認。同党の郭永健・主席が27日に明らかにしたが、劉氏はコメントを拒否している。補選では劉氏が自身の失った議席を取り戻すために立候補するとみられるが、出馬資格が得られない可能性もある。このため劉氏は同党の李卓人氏を代替候補として指名したが、予備選挙を経ないで決めることをめぐって民主派は内部分裂の様相を呈している。劉氏が工党に加入した目的はこれに正当性を持たせるためと指摘されている。李氏を代替候補とすることに反対している民協の関係者は、劉氏が今になって工党に加入することは補選のためにほかならないと批判している。

選挙管理委員会は6月26日、九龍西選挙区の補選を11月25日に行うと発表した。民主派候補の調整を行う「民主動力」の趙家賢・召集人は6月半ばに会議を行った後、出席者の大部分は劉小麗氏が再度立候補し、李卓人氏を代替候補とすることを支持していると述べた。劉氏は補選の日程が予想より早まり時間が切迫しているため、民主派は速やかに人選について合意する必要があると指摘した。だが馮検基氏は予備選または世論調査で候補を決めるべきと主張。自身は出馬を検討しないと強調した。

重鎮が新書で内幕暴露

馮検基氏は7月11日、記者会見を開き離党を発表した。今後の選挙への立候補については「現在のところ、いかなる可能性も考えていない」と答えた。馮氏は18日に開幕した香港書展(ブックフェア)で新書『馮検基那一条窄巷』を発表。同書は過去40年余りの政治生活を振り返るものだが、第1章では年初の民主派予備選の内幕を暴露。当初はBプランのリストに戴耀廷氏や李柱銘氏らが含まれていたほか、予備選を運営した「民主動力」の鄭宇碩氏から「出馬を堅持すれば歴史の罪人になる」と言われ辞退を迫られたことを明らかにしている。

ブックフェアでは2014年の「セントラル占拠行動」の内幕暴露本も発表され、ここにも鄭宇碩氏が登場している。書名は『何為証據:掲露香港乱象的幕後黒手』で、著者は香港城市大学当代中国研究計画高級研究助理の張達明氏。鄭氏が城市大にいた時の部下に当たり、当時は鄭氏の助手として「真普選連盟」「民主動力」「華人民主書院」などで議事録整理や財務記録などを処理していた。張氏は米国の全米民主主義基金(NED)とその傘下の米国国際民主研究所(NDI)が占拠行動の推進に関与していたと暴露。鄭氏は13年6月、真普選連盟の定例会議でNDIが真普選連盟メンバーとの面会を要求してきたことを明らかにし、協力関係を構築。NDIは14年8月、占拠行動に向けた世論醸成のためにフォーラム開催や香港大学の世論調査などに予算を提供している。また張氏は、占拠行動が勃発した後はNEDやNDIの在港職員ではなく、さらに上位の者が決定権を握り、真普選連盟、民主動力、セントラル占拠行動発起人らに決定権はなかったと指摘している。

張氏は鄭氏が設立した華人民主書院の主な資金提供者はNEDで、金額は約30万米ドルに上ると言及。鄭氏の秘書である陳家偉氏が11年にNDI香港事務所常駐総監にNEDからの資金援助を申請し、12年3月に4万5000米ドルの援助を認める通知を受けた。さらに13年には25万米ドルの援助を申請したという。華人民主書院は台北と米ニューヨークに支部があり、王丹氏や台湾の民進党メンバーらが董事会に名を連ねている。鄭氏と華人民主書院は19日、真普選連盟に対するNDIからの資金提供や、華人民主書院と占拠行動のかかわりを否定する声明をそれぞれ発表している。だが張氏は同書の内容を裏付けるメールの控えをメディアに提供した。

鄭氏が主導する民主派の統一候補擁立の裏側には、民主派の看板を掲げながら自決派などを議会に送り込もうという画策が見受けられ、さらに米国組織との関係にも注目すべきだろう。

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