課文245 「マイドリンクを持ち歩く」

香港製造の魔法瓶

駱駝牌の水筒(450cc)大埔一田にて248ドル(編集部調べ)

 香港では、大型スーパーも小型スーパーも高級スーパーも廉価なスーパーもたくさんできているけれど、街市(公設市場)はなくなるどころか、政府のビルの中で営業している。そしてその規模が大きく、洗練されていっている。新しいものが出来ようとも、昔ながらのええもんは継続させるという姿勢をものすごく感じる。そして、その姿勢は街市だけでなく、モノにも反映されている。

 今回私が注目したのは、駱駝牌暖水壺。すなわちキャメルブランドの魔法瓶。昔の日本の各家庭には魔法瓶があった。魔法瓶は、熱いお湯を入れると半日以上は入れたままの温度を保つことができる。保温には電気もガスもいらない。なかなかのエコ商品やと思うんやけど。現在日本の友人たち、親戚、家族で魔法瓶を使っている人は見かけない。水筒がタンブラーと名前が変わり、かなり復活つつあるけれど、重くて衝撃に弱く、中のガラスが壊れやすい弱点がある魔法瓶の水筒を持っている人も見かけたことがない。

 それがね、香港では魔法瓶文化が残っている。しかも、メードイン香港の魔法瓶や魔法瓶の水筒がおしゃれなデザインになって、若者にも爆発的大人気になっているねん。

 そもそも、魔法瓶とタンブラーの違いはね、中の作りがガラスか、ステンレスやプラスチック製か。保温性は、中がガラスの魔法瓶の方が高いけど、最近では、魔法瓶ランクの保温性を持つタンブラーもある。落としても壊れないし、軽いのは、ステンレスやプラスチック製。

 それがなんで、香港では魔法瓶がずっと使われていて、若者にも人気が出はじめたのか? まず、香港人は、漢方薬やスープを温かく飲みたい! と昔からずっと思い続けている。そして、若い世代は、持ち歩きながら温かい飲み物は温かく飲みたい。ステンレスは、塩分を多く含んだスープや、牛乳や乳製品、果汁、スポーツドリンク、炭酸飲料、漢方薬を入れると味が変わる。また酸性度の高いものは、ステンレスを腐食させ有害物質が生まれる。ガラスはニオイ移りもしないし、味も変わらない。大切に扱いさえすれば、温かいものをきちんと飲める魔法瓶がええやん! おまけに、香港製造の魔法瓶があるねんから! ということになったんやと思う。

 思わず手を出したくなるほどおしゃれな駱駝牌暖水壺。百貨店でも、街中にある昔ながらの雑貨舗でも売ってるよー。

(このコーナーは月1回掲載)



筆者・楊さちこ
1961年大阪生まれ(国籍:日本)
南京中医薬大学・中医美容学教授・中医学博士
日本と香港・中国のアジアンコスメブームに火をつけた第一人者。大学では「高木祐子奨学金基金」を設立し、中医学の社会的地位の向上に尽力。「いつまでも美しく」 をモットーに美に関する商品開発をはじめとするトータルプロデュースを手がけている。著書は『綺麗はひとは、やめている。』(幻冬社文庫)、『昨日よりも綺麗になる魔法の習慣』(光文社知恵の森文庫)、『香港美人が教えてくれた美しさが永遠に続く6つの法則』(光文社)、『72時間で自分を変える旅 香港』(幻冬社)のほか、『世界一の養生ごはん』(小学館)、香港・台湾の書店で買える『世界一流的港式家傳雞湯』(積木文化)など。いろんな角度からの香港を伝えるブログ『香港のしきたり』もどうぞ

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