課文241「朝ごはんをきちんと食べる」

自分で作る香港式お粥

 香港人が健康長寿のためにいちばん気をつけているのが、きちんと食べることと食べるもの。私は香港に住んで30年が過ぎたけれど「朝ごはん抜き!」と言う香港人には出会ったことがない。また、食べることだけではなく、食べるもの、すなわち「何を食べるか」にもこだわりがある。ただおいしいから、好きだから食べるのではなく、それに、「健康に良い」が加わらないとダメ。その香港人が朝ごはんに選ぶのがお粥なのだ。

 お米とお水と熱源とおなべ1つがありさえすれば、簡単に調理できるのがお粥。日本でのお粥は、消化が良くて体も温まるから、胃腸が弱っているときや、風邪をひいたときなど、病気のときに食べるものという位置づけだと思う。もう少し言うと、ダイエットのためや、お寺の修行などで断食をした後に食べるものという認識かと思う。しかし、中医学の考え方が根付いている香港では、お粥を食べることが、健康長寿の基本のひとつに数えられるほどの、重要な食べるべきものだという食文化に変わる。昔から伝わる言葉に、「以薬治病、以粥扶正」がある。日本語に訳すと、「病気を治すのには、その症状にぴったりあった薬を用いるのが大切。体の機能や免疫力を高めて体のバランスを整えるには、お粥を食べるのが大切」。

 今回は、『dancyu元氣食堂おいしい長寿食』の55レシピの中から「基本の香港白粥」の作り方をご紹介する。

○材料(出来上がり量は小丼約5杯分)
米:1カップ、水:10カップ、あれば一晩水につけた干し貝柱4個(味に深みが増す)

○作り方
⑴米を洗う(水に透明感が出るまで2〜3回洗いザルにあげる)
⑵水につける(ザルにあげた米をボウルに入れたっぷりの水を注ぎ常温で1530分つけておく)
⑶沸騰した湯に入れる(鍋に分量の水を入れ、強火にかけて沸かす。グラグラと沸いたら⑵の米をザルにあげてから湯に入れる。戻した貝柱も加えて、お玉杓子などで全体を12回混ぜる)
⑷かき混ぜて煮る(再び沸いたら弱火にし、お玉杓子などでゆっくり12回混ぜる)
⑸ずらしてふたをし、炊く(少しずらしてふたをし、弱火のままで30分炊く。途中、鍋底に米がくっつかないように、底からかき混ぜる)

 完成したら干し貝柱を取り出してほぐし、戻し入れる。

 いわゆる日本のお粥と比べて、粘りがなく、さらさらとしている。しみじみとした味わいで、おいしさとお腹を温めることへの長い余韻がある。このお粥は小分けにして冷凍保存もできるので、多めに作っておくのもお薦め。

2018222日発刊『dancyu 元氣食堂 おいしい長寿食』 (プレジデントムック) 1080円(税別)はamazonなどにて発売中


筆者・楊さちこ
1961年大阪生まれ(国籍:日本)
南京中医薬大学・中医美容学教授・中医学博士
日本と香港・中国のアジアンコスメブームに火をつけた第一人者。大学では「高木祐子奨学金基金」を設立し、中医学の社会的地位の向上に尽力。「いつまでも美しく」 をモットーに美に関する商品開発をはじめとするトータルプロデュースを手がけている。著書は『肌がつるんと若返る「ガーゼ洗顔」』(マキノ出版)、『綺麗なひとは、やめている。』(幻冬舎文庫)、『昨日よりも綺麗になる魔法の習慣』(光文社知恵の森文庫)、『72時間で自分を変える旅 香港』(幻冬舎)のほか、2016年には香港の健康長寿に着目した『世界一の養生ごはん』(小学館)、『香港美人が教えてくれた美しさが永遠に続く6つの法則』(光文社)を上梓。郵便局だけで買える、おいしい家庭料理の本『dancyuクッキング』(プレジデント社)に長寿世界一「香港」の、おいしい養生ごはんを連載中。

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