香港経済の展望、2018年のGDP伸び率は2.8%

香港経済の展望、2018年のGDP伸び率は2.8%

香港経済—今月のポイント

①弊行は、香港の域内総生産(GDP)伸び率について、2017年が3・6%、18年が2・8%と予想する。世界経済の成長が続くとともに、内部環境ではひっ迫する雇用市場が引き続き個人消費を支えるとみられるためである。

②米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を徐々に引き締めていくことで、18年は香港の銀行によるプライムレート引き上げの可能性が高まってる。しかし、資金流出の速度や規模、利上げ時期などは依然として不透明である。

③香港から大規模な資金が流出し、香港ドルの対米ドルレートが7・85香港ドルまで下落し、かつ民間銀行が香港金融管理局(HKMA)に持つ香港ドル建て決済勘定口座残高が極めて低い水準にならない限り、香港の銀行は金利を引き上げるインセンティブが働かないであろう。


香港域内の力強い需要を背景に、17年7~9月期のGDPは前年同期比3・6%増。伸び率は市場予想の3・5%を上回った。同1~6月期のGDPは4・1%増だった。

7~9月期の個人消費支出伸び率は6・7%で、15年4~6月期以来の高い伸びを記録。雇用情勢の安定や資産価格の上昇が、商品やサービスの消費を支えた。失業率は4~6月期の3・2%から7~9月期は3・1%に低下。1998年以降で最も低い水準に改善した。

17年はハンセン指数が年初に比べて約30%上昇し、差餉物業估価署の民間住宅価格指数は10%以上上昇。こうした資産価格の上昇も資産効果をもたらしたといえる。

政府支出も併せると、内需は4・1%増。7~9月期の経済成長への寄与は計3・9ポイントだった。純輸出は経済成長率を0・3ポイント押し下げたが、押し下げポイントは、その前の四半期に比べて縮小した。

1~9月期ベースでみると、GDP伸び率は3・9%。10~12月期は前年同期の基数が高かったため伸び悩む見込みで、17年通年のGDP伸び率は3・6%と予想する。3・6%の経済成長率が実現した場合、16年の経済成長率(2%)から大きく改善し、11年以来の最大の伸び率となる。

18年通年のGDP伸び率は2・8%と予想する。これは、17年通年予想を下回るものの、過去5年(12~16年)の平均伸び率(2・4%)を依然として上回る水準である。世界的に景気拡大が続き、内部環境では世帯所得や資産効果が個人消費を支え、民間消費の伸びが引き続き経済成長に寄与するとみられる。ただし、すでに完全雇用に近い状態のうえ、株式相場も約10年ぶりの高い水準にあることを勘案すると、香港の景気を支える要因の改善余地は限定的になってきているといえる。

資本支出の見通しは不確定性がある。民間機関の機械・設備および知的財産権の支出は香港の固定資本形成の3分の1超を占めているが、17年7~9月期は前年同期比で6%減。さらに、13年第4四半期以降では累計で26%減少している。支出減の要因が完全に明確でなく、この趨勢は依然として注視していく必要がある。

18年の見通しでは、域内銀行によるプライムレート引き上げの可能性が消費や投資を抑える一因になるとの見方があるが、金利上昇がもたらす影響は緩やかなものにとどまるとみている。

足元、香港ドルの対米ドルレートは7・81香港ドル前後の水準で推移し、許容変動幅(7・75~7・85香港ドル)の下限に触れるには、なお下げ余地がある。銀行の流動性を計る指標とされる民間銀行がHKMAに持つ香港ドル建て決済勘定口座残高は現在、約1800億香港ドルと依然として巨額である。このため、大規模な資金流出が起こり、香港ドルの対米ドルレートが7・85香港ドルの水準まで下落し、かつ香港ドル建て決済勘定残高が極めて低い水準にならない限り、香港の銀行が金利を引き上げてまで資金を調達するインテンシブは働かないといえるだろう。FRBが金融政策を徐々に引き締めているため、香港の銀行によるプライムレートを引き上げの可能性は高まっている。ただし、資金流出が起こった場合の速度や規模、金利引き上げ時期に関しては依然として不確定性が高い。

弊行の2・8%という18年通年のGDP伸び率予想は、市場予想とほぼ同じである。仮に、米国の税制改革が米国の経済成長を押し上げ、アジアの輸出需要が高まれば、香港域内の企業投資の減少に歯止めが掛かり、実際のGDP伸び率は弊行予想を上回る可能性がある。しかしながら、米国の利上げによる資金流出や中国本土の景気減速の可能性は香港の景気下振れリスクとして意識する必要がある。

2018年の香港株式市場の予想

18年の香港の株式市場を取り巻く環境をみると、世界経済や中国本土経済は安定し、企業業績は堅調とみられる。ブルームバーグによると、18年の企業業績予想は依然として楽観されており、ハンセン指数構成銘柄の利益成長率は10%近くと予想されている。こうした点を勘案し、中長期的に香港の株式市場は世界経済の回復の恩恵を受け、アジア市場への資金流入が続くと予想。年末のハンセン指数とH株指数の予想は、それぞれ3万1000ポイント、1万2800ポイントとする。一方、18年の投資リスクとしては、米国の利上げペースの不確定性、中国本土の不動産市場の鈍化、本土の金融業のレバレッジに対する引き締めや監督強化などが挙げられる。

(恒生銀行「香港経済月報」2017年12月号、「香港股市展望」2017年12月7日号より。このシリーズは2カ月に1回掲載します)

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