五輪相場で株価は3万円時代?

五輪相場で株価は3万円時代?

 米国ではNY株は年初の1月4日に25000ドル(米ドル)の大台に乗せた。日本株も日経平均株価が同じく1月4日の大発会で26年ぶりの高値となる23500円に乗せた。米利上げ、中国の景気減速、中東不安や北朝鮮問題等、問題は山積しているが、ほとんど金融市場はこれらの悪材料を吸収してしまったようだ。
(ICGインベストメント・マネジメント代表・沢井智裕)

 海外でも日本国内でも「日経平均は数年内に30000円の大台へ」と見ている強気のアナリストは多い。要因は大きく分けて4つ。まず1つ目は、昨年の衆院選で左派が分離された事により日本銀行の量的緩和政策に反対する勢力が弱くなったことが挙げられる。つまり今後も日本銀行の金融緩和政策が続く事になるのだ。株式市場にとって継続的に資金の流入が見込める量的緩和は、株価の大きな下支え要因となるのは間違いない。

 2つ目は日本の年金基金(GPIF)が保有する日本国債比率が小さくなり、日本株比率が高くなってくる事が考えられる。「市場のくじら」と呼ばれる大きな株式の買い手が今後も揺らぎない存在として株式市場に継続参加するのである。これほど強い味方はいないだろう。株高は当初は富裕層や上場企業の懐具合をよくするだけだと考えられがちであるが、彼らの資産増が実現することで消費が盛り上がり始め、徐々に国民全体に経済効果が拡大してくる。そうなると今度は企業業績にも反映されることになる。つまり株価上昇の本来の姿である利益増による株高が始まるのだ。

 3つ目は、日本株の出遅れ感が半端ではないことが挙げられる。日本の株価は日経平均株価で89年の38900円から30年近くが経過しようとしているのにも関わらず、一度もこの高値を抜いたことがない。米国やドイツ、英国の株価は既に何度も史上最高値を更新している。それだけ日本株には割安感があるのだ。そして新興国を代表するアジアの株式市場もフィリピン、ベトナム、インド等、頭文字を取って「VIP」と呼ばれる市場も、今年にはいって更に上昇に拍車が掛かり、昨年来の高値を更新したり、史上最高値を更新している。日本国内の景気はあまり良いいようには見えないが、グローバルの時代は周辺諸国が健在であればその隣国はなんらかの形で経済的な恩恵を受けることが出来るのだ。

 そして4つ目は、その「隣国の恩恵」という点で中国ではハイテク投資が進み、ブルームバーグ調査によると、18年のエコノミスト予想のコンセンサスは6・5%成長と、17年見通しの6・8%から鈍化すると見込まれていた。だが最新データを見ると、国家統計局が発表した昨年12月の製造業購買担当者指数(PMI)は堅調を保ち、中国のオフショア株も09年以来の好スタートを切り、予想より良好な成長率を予測する向きも出て来た。JPモルガン・チェースのエコノミストチームは、中国の18年の成長率見通しを従来の6・5%から6・7%に上方修正した。「上向きの外部見通し」を理由に挙げているが、これもグローバル時代の恩恵を受ける形で、アジアや欧米の景気回復を中国がいち早く取り込んでいるからその恩恵に預かることが出来ているのである。このことは日本にも同じことが言える。

 日本国内のある投資会社が面白い見方をしている。「18年中にも3万円が視野に入る」と見るこの会社は、「20年末の一株当り純資産が2万円となる。この時点の純資産倍率(PBR )が過去30年の世界平均の2倍の水準に回復すれば、日経平均は4万円を突破する」と強気である。例えば企業の資産(価値)が100万円である場合、100株の株式を発行していれば、一株あたりの純資産は1万円である。その企業の株式を1万円で購入した場合、会社が解散(清算)されたとしても、管財人が入って投資家の投資金額の1万円は手元に戻る計算である。つまりプラス・マイナスゼロである。この場合、純資産倍率は1・0倍となる。この数字が2倍になるということは、上記のケースで2万円を出して株式を購入するという意味である。「なんだ、すぐに企業が解散したら損するではないか?」と思われがちであるが、これは投資家がリスクを背負っても株式投資を行う姿勢に転換する事を意味している。

配当込み指数は3万5000円を超えている

 ただ実は本当の日経平均株価はすでに3万円を超えているという見方もある。機関投資家が使う指標に「日経平均トータルリターン・インデックス」と呼ばれる日経平均株価の配当込みの指数を見ると、1月5日の終値で3万6890円であり、バブル期最高値の95%近くまで回復している。配当込みの指数は株式の「真の実力」を表すと言われ、機関投資家は、配当を含まない日経平均株価よりもこちらを重視している。重要な事は投資対象とする銘柄は「配当込み」で投資判断を行うということである。日経平均株価が3万円を達成したとしても、配当を重視しない銘柄は国内外の機関投資家から敬遠されて、取り残されるかも知れないのだ。

 18年はつくづくリスクを負う時代に突入したのだと実感する。マクロ的な企業の動きでは、昨年ソフトバンクグループが、サウジアラビアなどと設立した10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が、米シリコンバレーを中心に次々と大型投資を決めた。10兆円は世界中のスタートアップへの年間投資額に匹敵する規模だ。だがソフトバンクの孫氏は「10兆円でも全然足りない。あと2年もすれば使い切るよ。これは第1弾でしかない」。こう言う孫氏が口にしたのが100兆円ファンド構想だった。今や「1兆ドルクラブ」と呼ばれる資産運用規模を誇るファンド会社はブラックロックをはじめ16社も存在する。そういう意味で孫氏の言う100兆円ファンドは、本格的なリスク投資の時代を思わせる構想であるのかもしれない。



トム:これだけ株高が続いたら利益も確保したいし、買いそびれた投資家は株価が早く下落しないか手ぐすね引いて待ってるよな。

ジェリー:でもどの銘柄に投資していいのか分からないでしょう? PBRをじっくりと見てよね。

トム:同じ株式でも良いのと悪いのがあるんだなあ。

ジェリー:人間にも「純資産価値」ってあるんじゃないの?IQが高い人だけが活躍できる訳ではなく、むしろEQが高い人の方が社会で活躍しているケースって多いでしょ。

トム:そういう意味では、わしはIQよりもEQ型の人間だからな。活躍の場は多いはずだぞ。111日の香港プロレスの大会見たか? 日本のドラゴンゲートプロレスが来ていたんだぞ。

ジェリーそれってEQとどんな関係があるの

トム:プロレスは体が大きいだけでは勝てないんだ。プロレスも頭を使うスポーツ・格闘技・エンターテインメントだから面白いんだよ。つまりEQが大事なんだよ。国会議員になった馳浩衆議院議員、元文部科学大臣も新日本プロレスの所属だったよな。こういう選手はIQレスラーっていうんだよ。まあとにかく株高が続くのだから割安銘柄を今からチェックしておくよ。

ジェリー:株式投資もいいけど、ビットコインも見ておいてね。昨年は1年で17倍に上がったし、他の暗号通貨も1000倍、2000倍に上がったのもあったんだからね。

トム:ビットコイン? ン、ン?

ジェリー:兄さん、ビットコイン知らないんだ。

トム:兄さんが知らないはずないだろ。ビビットコインだろ?

ジェリー:やっぱ知らないんだ。


【純資産倍率(PBR)】

 PBRは、Price Book₋Value Ratioの略で、企業における純資産とその企業の株価の関係を示すものである。具体的にPBRを算出するには、企業の株価÷1株あたりの純資産=□倍、で表すことが出来る。もしこの計算で1倍と算出されたとすると、会社が解散したとしても投資家の投資金額は全額回収出来る計算となり、1倍を割る水準であると株価は割安と判断出来、例えば解散時に自身の投資額以上の資金が戻ってくるケースが発生する。生保、年金といった長期投資スタンスの機関投資家は、これら割安の株式に投資し、株価の回復を待つ。理論上は、株価は1倍、或いはそれ以上のレベルに戻るケースが多い。

筆者紹介

沢井智裕(さわい・ちひろ)
ICGインベストメントマネジメント(アジア)代表取締役
ユダヤ人パートナーと資産運用会社、ICGインベストメントマネジメントを共同経営。ユダヤ系を含め約2億米ドルの資産を運用する。2012年に中国本土でイスラエルのハイテク企業と共同出資でマルチメディア会社を設立。ユダヤ人コミュニティと緊密な関係を構築。著書に「世界金融危機でも本当のお金持ちが損をしなかった理由」等多数。 (URLhttp://www.icg-advi sor.net/)

※このシリーズは月1回掲載します

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