アデランス、香港に1号店

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)

アデランス、香港に1号店

アデランス香港社 (Aderans Hong Kong Limited)
代表取締役社長 津村佳宏さん

【プロフィール】
1963年広島県出身。1982年アデランス入社。東北営業部長、営業本部長、代表取締役専務、副社長を経て、今年3月から現職に。毛髪診断士認定指導講師。日本経営倫理学会所属。


——創業から半世紀以上たちますが、世界展開を積極的にされていますね。10月には香港進出、1号店をオープンしました。アジア市場のビジネス動向について聞かせてください。

弊社はオーダーメードウィッグ事業「アデランス」「レディスアデランス」、レディメードウィッグ事業「フォンティーヌ」、毛髪移植事業「ボズレー」、海外ウィッグ事業「ヘアクラブ」の4ブランドを中心に事業を行っています。1968年に創業、全国に506店、海外では27カ国・地域に323店舗展開しています。今でこそ世界的にも大きな市場になってきていますが、毛髪の市場はもともとニッチな産業です。人口数、経済状況など様々な条件が揃わないと進出はできません。海外初進出は79年の米国でした。その後も欧米を中心に進出し、アジアに関しては台湾に90年に進出したのが最初です。台湾は日本から近く、人口は2500万人だったこと、すでにウィッグ文化が根付いていたのが決め手でした。その後は2002年にシンガポール、05年には上海に進出しています。上海では今20店舗構えており拡大し続けています。香港はというと美容意識は高まっているものの人口が少ないため進出に足踏みしていましたが、市場調査をしていくうちに需要の大きさを感じ、このたび進出を決めました。従来は海外展開する場合、M&Aでの進出が多いのですが、香港店は株式会社アデランスの100%出資で香港法人を設立しました。今後のアジア展開をする上での拠点になるように成長させたいと考えています。

——香港市場の可能性をどう見ていますか。

街に活気があり、女性が元気な国際都市ですね。ファッションに対する美意識も高く、親日家も多く日本の製品に対しての信頼も高い申し分ない市場は大変魅力的です。香港店では4つの個室を設けています。既成商品やオーダーメード商品などは日本とほぼ同価格に設定しています。香港店では、ウィッグの販売だけでなく、ヘアサロン機能を併設した「トータルヘアーソリューション」としてサービス提供していきます。香港は亜熱帯地域で日の光も強く湿度も高いことから日本とは異なるトラブルや悩みを持たれる人も少なくないはずです。すでにブランド要素の高い中国本土との連携をとりながらブランド力の向上を図っていきたいと考えています。

——女性顧客を中心に取り込むということですね。

毛髪産業というと男性のイメージがあるかと思いますが、実は国内では7割が女性のお客様なんですよ。元々は薄毛に悩む男性を取り込んでいたのですが、女性の割合が全体の半数以上を占めるようになった20年ほど前からです。その当時から女性専用サロンも作っています。女性の社会進出が進むと同時に増えてきたのが髪のトラブルです。ストレスなどから薄毛で悩む女性が多くいます。シニア世代を中心と思われがちですが、国・エリアによっては若年層からカウンセリングを受けられる方も増えています。

——CSR活動(企業の社会的責任)も盛んですね。

病気やけがで髪の毛を失った子どもたちにウイッグを贈る運動などを展開しています。また病院内ヘアサロンの展開、接客スタッフの医療接遇講習受講の義務化、毛髪診断士の資格を有するスタッフの強化するなど様々な医療面においての取り組みを行っています。15年には医療用ウイッグのJIS(日本工業規格)の制定が実現したので、今後は医療用ウィッグ、脱毛時用帽子、まつ毛・眉毛用美容液など、外見をケアする様々な商品開発も行っています。また、大学研究機関との毛髪分野に関する共同研究も進めており、商品開発も行っていきます。

——香港での展望についてお聞かせください。

5年以内に5店舗以上の展開、年間10億円の収益を目指します。一般的にウィッグは髪のトラブルだけでなく、エンターテインメント、ファッションなど需要も様々です。ゆくゆくはショッピングモールなどと提携し、様々なイベントを行うことで身近に、気軽に服にあわせたヘアスタイルを楽しんでもらえるお手伝いをしていけたらと思います。(この連載は月1回掲載します)

【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/

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