第47回 (日本編その2) 粥とスイーツの店経営

ひと口に「仕事人」と言ってもその肩書や業務内容はさまざま。そして香港にはこの土地や文化ならではの仕事がたくさんある。そんな専門分野で活躍する人たちはどのように仕事をしているのだろう? 各業界で活躍するプロフェッショナルたちに話を聞く。
(取材・武田信晃/月1回掲載)

人々が温かい日本で起業

劉さん(右)と朱さん

 東京では茶餐庁(香港式大衆食堂)などのより踏み込んだ中華料理の形態が増えてきた。お粥と鶏蛋仔などのスイーツに特化した「3米3」は劉開鳴(Henry Lau)さんと朱偑宜(Vincci Chu)さん夫妻が切り盛りする店だ。

 「店名の由来は、『粥』という字をばらしたんです」と朱さん。2人は同じ学校で劉さんが中国語、朱さんが英語の先生として9年間働いた。朱さんは「ある時、授業の中で『前年と全く同じことを話している』と思ったんです」と話す。世帯収入は月に10万香港ドルという安定した生活を捨て、東京に2016年7月に移住。変化を求めていたのだ。年に4回海外旅行をしていた夫妻が一番好きな国だったのが日本だ。「移住前に20回は訪れました。幼いころから日本文化に触れていましたし、人々も温かい」と朱さん。「本当に日本に移り住みたいと聞いた時は、驚かなかったです。昔からそのようなことは話していましたから」と劉さんは語る。

 決意してからすぐに学校をやめずに、1年くらいかけていろいろ調べ、しっかりと準備。移住後、劉さんは不動産投資コンサルタントの手伝いをし、元々料理好きの朱さんは自宅で小さな中華料理の教室を開いていた。「お粥を教えると生徒の反応が良かったのです。それでお粥の店ならいけるのではと思いました」

 香港は外国人が起業するのは簡単だが日本はほぼその逆だ。「経営・管理」のビザ取得のために資本金500万円以上の会社を作り、事業計画書を含め細かな資料を政府機関に提出。店舗物件は2カ月間で30件くらい見たが、20件は外国人ということで断られたのだという。食品衛生の免許も必要だが、夫婦ともに日本移住前はほとんど日本語が話せなかった。調理をする朱さんは猛勉強して日本語の試験を受けて合格した。そして2017年5月14日のオープンにこぎつけた。

日本の食材をいかした粥「医食同源のごぼう」

 主力メニューのお粥は「鶏肉をゆで、その後、シイタケ、ホタテ、ミカンの皮などを加え2時間ほどさらに煮込みます。そしてお米を加えてさらに3時間煮込んで、最後にメニューに合わせてトッピングを加えます」と朱さん。ピータンと豚肉というベーシックな香港粥もあるが、ごぼう、ニンジン、サヤインゲン、鶏肉、豆腐が入った日本らしくかつ健康に気を使った創作粥「医食同源のごぼう」(900円)がお薦めだ。スイーツは香港のおやつの代表格「鶏蛋仔」はトッピングを5種類用意。マンゴーを使ったスイーツも数多くある。

「旬のフルーツの鶏蛋仔」は色鮮やか(1000円)

 食器はポーランドから取り寄せている(店内で販売も)。朱さんは「昔、旅行した時に気に入りました。欧州のデザインなのにお粥などにぴったり合う」と話し、料理の味から食器までこだわる姿は、まさに仕事人だ。

清潔感あふれる店内
店の外観

33San Mai San)】
所在地:東京都杉並区上荻1丁目19-9
電話: 03-6869-8090
営業時間:11002100(火曜定休)

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