国産地鶏料理を香港人女性に

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)

日本料理「塚田農場」
株式会社エー・ピーカンパニー
ディレクター 釜谷将史さん

【プロフィール】
 1979年福岡県出身。立命館大学卒業後、大手外食チェーンにて営業、本部店舗開発に携わる。2012年上海に駐在、1年半後香港在住。17AP Company入社、「塚田農場」香港一号店ディレクターに就任。好きな言葉「怒らず、恐れず、悲しまず、誠意、正直、愉快」。趣味はサッカー、野球。

——7月のオープン以来大盛況ですが、国産地鶏料理は香港でも人気ですね。

 はい、おかげさまでオープンから毎日予約で満席の状態が続いております。30代の働く香港人女性をメーンターゲットにして、見た目の美しさ・健康を軸に商品企画やプロモーションをやってきたことが今のところは香港の方に支持をされているのかと思います。特に我々のシグニチャーアイテムである美人鍋・美人春巻き・国産地鶏の炭火焼きは大変好評です。

——運営している株式会社エーピーカンパニーは自社農場もち、料理を提供しているということですが、具体的に教えてください。

 私たちは日本では北海道、鹿児島、宮崎県にそれぞれ自社養鶏場および加工センターを持ち、提携農家とともに各店舗に使用する地鶏を提供してます。問屋を使わずにダイレクトに流通しているので、高い品質にも関わらずコストを抑えた形で実現しております。

——香港進出第1号ですが、すでに海外にはでており16店舗目ですね。このタイミングで進出した経緯と香港市場の魅力について教えてください。

 シンガポールの出店が今から5年前でした。当時からすでに香港への出店は考えていましたが、モールやエージェントコネクション、人材、立地条件がなかなか揃わなかったというのが本音です。今回はやっとの思いでの進出になります。香港の魅力は何といっても日本食を好む方が多いこと、日本食レストランも多いですし、日本の食材に対する知識を持っている方も多いほどです。どの国や地域より舌が肥えて、日本食に精通している人たちが多い環境下で、弊社の進出はプレッシャーはあるものの、大変挑戦しがいのある市場だと思っています。日本に行かなくとも、香港で本物の日本の味、本物のおいしさを提供していきたいと思います。

——海外進出するうえで留意している点などはありますか?

 その国のマーケットをできる限り早く多くいろいろな角度から把握することだと思います。情報をとにかく噂レベルからいろいろな人からの聞き込み、統計や資料集め、ヒアリング、競合店の現場確認等をちゃんとやることだと思います。地道だと思いますが結局当たり前のことをすることなのかなと。

——香港に出店するにあたり大変だったことは?

 人材の確保です。労働集約型の外食産業においてビジネス成功のカギは現場で働く「人」だと思っております。100名を超える面接を行いました。一緒に仕事がしたいと思える人を採用したいと思いましたが、なかなか採用が進みませんでした。ただ、今働いてくれているスタッフは非常に献身的でホスピタリティに溢れるスタッフですので彼らと出会えたこと働けることに喜びを感じています。

——日本国内の店舗とは雰囲気が違いますね。

 香港店は国内の店舗に比べ、やや高級感をだした雰囲気を作っています。日本の塚田農場をご存じの方はきっと驚かれると思いますし、同時に新鮮な気持ちで楽しめると思います。日常から離れたワクワクした空間とともに、おいしさ、美しさ、安心・安全な食材を提供したいと思います。

——香港オリジナルメニューもあるそうですね。

 はい、香港では14時半〜16時半の間に「Afternoon Tea Set」を販売しております。弊社の商品企画者が、初めて本物件の立地に訪れ香港島を一望できるロケーションを見たときに香港の方にこのロケーションを活かした「和のアフタヌーンティ」をやったら面白いのではないかとの提案があり、それを聞いてすぐにじゃあやってみようということになりました。今ではこのアフタヌーンティをめがけて予約してくださる方も多く、嬉しい限りです。

——今後の展望をきかせてください

 常に香港の方にワクワクしていていただけるような商品開発、ブランド開発、立地開発をしていきたいですね。一応5年で香港内に1015店舗を目指していきます。ただ、実は店舗数はあまり目標でなく、ありきたりでない斬新かつオーセンティックな日本食レストランを提案していきたいと思います。

(この連載は月1回掲載します)

【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/

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