64「不眠」

Q:こんにちは。この半年余り眠れなくなり、ひどくなり始めた2カ月前から睡眠導入剤などを西洋医から処方され服用しましたが、それほど眠れるようにならず、逆に日中だるさがきつくなり、やめてしまいました。ネットなどで調べると東洋医学でも方法があると知り、参りました。

A:そうでしたか、この12年前から半年ぐらい前までの間に、お仕事上やその他の日常生活上でストレスを感じたり、精神的にショックな事が起こったりしていませんか?

Q:そうですね…もとから110時間を超えて仕事をすることが多かったので、疲れは感じていました。この1年、休みを取れないこともたびたびあり、体のだるさが増し、ときどき軟便下痢をおこすようになりました。

A:では脈を見ますので、袖をめくってください。舌をベーと出してみてください。はい、ありがとうございます。平均一晩にどれくらい眠れていますか? 寝つきはどうですか?

Q:最初はなかなか寝つけず、横になってから12時間。その後は眠れていたのですが、この45カ月は、一旦眠れても、23時ころから目が覚め、朝まで眠れません。良くて3時間くらいかもしれません。朝はボーっとしていますし、一週間くらい仕事を休んだりもしたのですが、全然変わらないんです。お薬も変えてもらったのですが…、続けて服用しろと言われるだけですし…。

A:なるほど…。脈の打ち方が「弱く」なっているのと、体の血液循環によどみが生じています。おそらく長時間の精神的緊張から「交感神経」が興奮し続け、結果「副交感神経」の働きがとり戻せなくなり始め、消化器の働きが低下して軟便下痢が始まったのでしょう。

 東洋医学で言う「気」が消耗され続けたので「陰陽のバランス」がくずれ「陽の気」が「陰」に沈み(戻り)づらくなった状態なのです。「太極陰陽魚図」があらわしているとおり、「陽」が極まると「陰」が生まれるという例えの通りなのです。「気」が低下したがために「だるさ」や「軟便」にもなるわけです。結果、大脳も疲労したままなので眠れなくなります。 まず、胃腸の働きを正常化することで血液の元を作り出させ、また自律神経を調節することで新陳代謝が活性化、そして血流が良くなれば、もとの良い眠りが得られるようになります。

 それでは治療を始めます。背中やおなかを少しゆるめ、まずベッドにうつぶせになってください。針は全て使い捨ての針です。アルコールで消毒しますので、少しひやりとしますよ。どうですか? 頭のてっぺんにも鍼をしました。いかがですか? もしつらければおっしゃってください。

Q:大丈夫です。少し重たく感じるのですが…?

A:穴に当たるとそのように感じます。我慢できますか?

Q:ええ。

A:それでは暫くしたら、上を向いておなかや脛の前などに治療を施していきます。

(治療効果の出かたには個人差があります。状態により治療頻度も変わります)(この連載は2カ月に1回掲載)

浅井先生:1987年から中国に留学。日本で鍼灸師の資格を取得後、診療所の理学療法科や鍼灸院、接骨院勤務を経て、1999年より香港で「誠恩堂鍼灸院」を開業。2003年に特区政府が定めた全科漢方医(漢方、鍼灸)の第1回資格試験に合格した。

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