香港株式市場が暴落したら?

香港株式市場が暴落したら?

 7月12日にNY株式市場はまたまた史上最高値を更新してしまった。さすがにここまで上昇してくると高値警戒感が出てくる。高値更新の理由は近いうちの利上げが遠のいたことであった。インフレ目標の2%を達成するどころか、足元のインフレ率が低下傾向にあることが背景にある。
(ICGインベストメント・マネジメント代表・沢井智裕)

 米FRBは年内の追加利上げを2回予定していた。しかしそのためには米景気の腰折れがないように配慮しなければならない。現在のところ利上げ局面にありながらも順調に景気拡大は継続しているようだが、GDP伸び率(速報値)は第1四半期に前年同期比で年率0・7%増となり、約3年ぶりの低水準となってしまった。今後は物価を注視する必要があるとイエレン米FRB議長は語っている。

 ではなぜ利上げが遠のくと株価が上昇するのだろうか? 個人レベルで例えると定期預金の金利がゼロならリスクはあるけれども定期的に配当を貰える株式に投資する傾向がみられるからだ。つまり株式を購入する投資家が増えるから株価が上昇する。逆に利上げが迫ると株式を売却して定期預金に預けようとする投資家が増加する。つまり株式は売られて値下がりする。その動きが一気に高まると株価が暴落する危険性が高まる。

 さて今、FRBがもう一つ注意を払っているのが雇用情勢である。7月7日、米国労働省(BLS)は6月の雇用統計を公表したが、非農業部門雇用者数は前月比で22・2万人の増加となり、4月以来となる20万人超の増加ペースに回復した。ただ5、6月もあまり芳しいとは言えないため、今後数カ月は労働市場の情勢を見極める必要がある。一方、6月の失業率は4・4%(前月4・3%、市場予想4・3%)とこちらは前月、市場予想の両方を上回った。米国の失業率における4%台前半は過去の経験則からほぼ「完全雇用状態」といえるため、インフレ率が2%を超えない状況は米経済の弱さを指摘する声が高まっている。従ってFRBは景気拡大と雇用情勢の両方の点で追加利上げを行うには少し不透明感が広がってきたことは否めない。

香港への影響は?

 米利上げは「香港ドルと米ドルのペッグ制」で縛られている香港にとっては油断ならない。なぜならばペッグ制を維持するため、米金利が上昇すればそれに追随する形で香港ドル金利も上昇する。香港ドル金利が上昇すれば、前述のように香港株が売られる可能性が高くなってしまう。特に平均年収の18倍以上に膨れ上がった香港の不動産価格に大きな影響が出てくる。100万米ドルの銀行融資を得て不動産を購入する場合を考えてみよう。例えば1%のローン金利であれば1万ドルの金利負担となる。しかし金利が0・25%ずつ4度上昇したとすると2%の金利水準となる。たった1%の上昇で2%に上昇したとしても金利負担は年1万ドルから2万ドルに上昇してしまう。この10年間ほぼゼロ金利に慣れてしまった投資家の危機意識は非常に低い。中国の高成長の恩恵を受けている香港と言えども追加利上げが加速すると本当にヤバい! しかし7月12日にイエレン米FRB議長が利上げの速度を緩やかにすると発言したことで、不動産市場にも株式市場にも安心感が戻ってきたことだけは確かだ。

世界経済はどうなる?

 米国の株式市場は恐怖どころか楽観論が広がっていた。一昨年末から利上げ局面に入りながらも株価はそれを見事にこなしてきた。しかしもう少し違った視点から市場を見てみると微妙な変化に気づく。年初から相場をけん引してきたハイテク関連銘柄のボラティリティが上昇し始めているのだ。S&P500主要銘柄で見るのではなく、IT関連企業が多く上場しているナスダック市場を見てみると顕著である。ナスダック100銘柄指数のボラティリティを示すVXN指数は7月3日に1874ドルの高値を付けた。6月初旬に12ドル台であったことを勘案すると50%以上の上昇となった。ナスダック100指数に採用されて銘柄アップル、アマゾン、チェックポイント、エクスペディア、グーグルの親会社のアルファベット等は、6月中に高値を付けてからは調整局面に入っている。

 問題はこの調整局面が短期で終わるのか長期化するのかであるが、今すぐに相場が大きく崩れるという見方はまだ少数である。相場をけん引してきた主力級であった銘柄の株価が軟調であるという事は、相場の転換期に来ていることは間違いない。株価が軟調なまま再びデフレ圧力が掛かってくると米FRBも金融政策の転換を求められるかもしれない。

 しかしながらテーマがあれば世界経済は成長出来る。世界経済が成長出来れば、株価の下支えとなる。かつて20世紀の後半が電機・自動車、21世紀の初頭はIT革命がメインテーマとなって、世界経済をけん引する先進各国では次々と当時のエントロプリナー達が起業し、新産業を創造・構築してきた。チャレンジできるものが目の前に現れれば起業家たちはそれに向かって邁進できる。

 現在、我々が直面しているのが、人工知能(AI)とロボットの分野である。特に人口知能の分野は世界の4大会計事務所の一つであるプライスウォーターハウス・クーパース(PwC)がレポートを発表し、AIが2030年までに世界経済に最大15兆7000億ドル規模の貢献を果たすとの試算を出している。新たに中国とインドの2つを合わせた経済規模が誕生する計算となる。PwCは世界経済規模がAIにより2030年には14%程度拡大するとの推計を試算しているが、現在の通常の世界経済成長に毎年、1%程度の成長のゲタを履かせることが出来るほどの大規模のものとなる。米国が08年のリーマンショック後、曲がりなりにも景気回復を実現させることが出来た背景にはIT革命が進化したソーシャルネットワーク・ビジネスの拡大があった。そういう意味では株式市場や不動産市場で暴落があったとしても、それほど悲観的になる必要はないかもしれない。

 

トム:しかし東京都議会選挙は加計学園問題で自民党がボロボロだったよな。小池百合子さんは受け皿になっただけだよな。また2-3回選挙をやれば維新の会と同じような道を歩むのだろうなあ。

ジェリー:加計学園も森友学園もうまく総理に取り入ったんでしょうね。これら学園の園児がかわいそうよね。園児や親御さんには何も罪がないのに白い眼で見られることもあるでしょう。

トム:問題は加計学園、森友学園、PL学園のどれが一番強いか? いや存続できるかだ。

ジェリー:PL学園は学校経営自体は問題ないでしょ。問題は野球部だけでしょ。

トム:加計学園、森友学園と安倍総理はやり方が汚いんだよ。正々堂々と来い! 「逆転のPL」を舐めたらいけないよ。まだ真相は藪の中なんだから、九回裏までやらせろって。

ジェリー:でもこのつまらないゴタゴタが国民の怒りを買ったのよね。「まついさん」が見ていたら発狂しそうね。

トム:元ヤンキースの松井選手か? 彼は温厚な性格だぞ。

ジェリー:いいえ、サスペンスの方の松居さんよ。

トム:なんだ、そっちかよ。言うねえ、言うねえ。ああテーマ曲が聞こえてきそうだわ。頭が痛い。でもAIとは、Artificial Intelligenceの略なんだよな。

ジェリー:あなたの場合は、FAIでしょ。「Failed Artificial Intelligence 」。人工知能も暴走しないとは限らないわ。

トム:違う、わしはFBIだ。逆らうとみんな逮捕だ、逮捕だ。

ジェリー:やっぱり、人工知能の失敗作は出てきそうね。

【人工知能(AI)】
 人間の知的能力をコンピューター上で実現する様々な技術やソフトウェア、コンピューターシステムを言う。我々が日常的に使っている言語を取り扱う自然言語処理、そして翻訳を自動的に行ったり、翻訳を支援したりする機械翻訳、特定分野の専門家の推論や判断を模倣するエキスパートシステム、画像データを解析して特定のパターンを検出したり抽出したりする画像認識などの応用例がある。最近では人工知能(AI)を軍事利用して国防に役立てようという動きがある。主要国の軍隊はミサイル防衛の分野で人工知能を使った自動化を試みている。米海軍は完全自動の防空システム「ファランクスCIWS」を導入しガトリング砲により対艦ミサイルを破壊できるようになった。そして不安定な中東ではイスラエル軍が対空迎撃ミサイルシステム「アイアン・ドーム」を所有する。

筆者紹介

沢井智裕(さわい・ちひろ)
ICGインベストメントマネジメント(アジア)代表取締役
ユダヤ人パートナーと資産運用会社、ICGインベストメントマネジメントを共同経営。ユダヤ系を含め約2億米ドルの資産を運用する。2012年に中国本土でイスラエルのハイテク企業と共同出資でマルチメディア会社を設立。ユダヤ人コミュニティと緊密な関係を構築。著書に「世界金融危機でも本当のお金持ちが損をしなかった理由」等多数。
(URLhttp://www.icg-advi sor.net/)

※このシリーズは月1回掲載します

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