アジア最大規模の映像・コンテンツ関連フェア 「香港フィルマート」

アジア最大規模の映像・コンテンツ関連フェア
 「香港フィルマート」

会場の様子

 香港貿易発展局主催の「香港フィルマート」が3月1316日、香港コンベンション・アンド・エキシビション・センターで開催された。アジア最大規模のコンテンツマーケットである同イベントは21回目を迎えた。今回は35カ国・地域より800以上の企業・団体が出展、世界各地から映画製作・配給会社やテレビ局等の映像コンテンツ産業関係者が集まった。日本貿易振興機構(ジェトロ)は日本映画・映像コンテンツの海外販路開拓を促進するため、公益財団法人ユニジャパンとジャパン・ブースを共催。初出展13社を含め過去最多となる38社が参加した。

インタビュー①
鹿児島放送 総合ビジネスコンテンツ事業部長の原之園幸太郎氏

鹿児島放送の原之園幸太さん

 初出展となる鹿児島放送総合ビジネスコンテンツ事業部長の原之園幸太郎氏は「香港の国際的な感覚をとても肌で感じている。商談ひとつにしても香港人だけでなく、アセアン地域、台湾などから機内で流す番組などの問い合わせが目立つ。日本のサブカルチャーといったアニメ、漫画もしかりだが、『鹿児島』というキーワードで、今後さらに世界的にに発信していく手ごたえを感じている」と話した。

 同社はこれまで日本国内向けの番組制作をしてきたが、今後インバウンドを含め海外にコンテンツを出していくために、昨年春より新たに「コンテンツ事業部」を設置。海外への番組販売、鹿児島県内向けに制作した番組に字幕をつけ、海外でも楽しんでもらおうと積極的に動いている。

 昨年10月にLCC(格安航空)による香港—鹿児島間の直行便が就航して以来、鹿児島への観光客、訪問客は大きく伸びている。今年3月末には週10便の就航となり、香港からは年間12万8000人が訪れ、前年度の倍以上にまで伸びている。

 こうしたなか、鹿児島の新たな観光地が注目されている。本坊酒造が南さつま市に作った「本土最南端のウイスキー蒸留所」である「マルス津貫蒸溜所」。昨年11月にオープンしたばかりだ。鹿児島県内でウイスキーを生産するのは実に32年ぶりのこと。同酒造会社2代目社長が暮らした旧邸を、見学者向けに改装、レトロな空間の中でカフェバーや売店を作った。ウィスキーとともに、旧邸でくつろげる空間ということもあり、海外からも問い合わせが増えているという。3月には英国のウイスキー専門誌が主催するコンテスト「アイコンズ・オブ・ウイスキー」でも中小規模のメーカーを対象とした部門で世界最高賞に本造酒造は選ばれた。鹿児島放送は蒸留所が設立されるまでの2年半、密着取材をしてきた。「鹿児島から発信する材料が増えた。地元のメディアとしては大変喜ばしく、こうしたことを海外に積極的にPRしていきたい」と原之園氏。

 近い将来に「奄美大島」が世界自然遺産に登録されることに先立ち、奄美大島の番組をすでに制作、奄美大島の認知度をより高めていきたいと考えている。SNSなどを利用しながら鹿児島の魅力を発信、海外の人に実際にきていただき、体験してもらうという取り組みも検討している。「最終的にはともに地元の酒を酌み交わせるようになるような親睦を深められる地域作りを目指したいですね」と鹿児島の魅力を語った。

インタビュー②
株式会社北海道放送 編成局ライツ・コンテンツ部主任南部肇さん

鹿児島放送の原之園幸太さん

 札幌市の取り組みの一環として8回目の出展となる。取材した同イベント2日目にはおよそ25件ものテレビ番組の商談、そして20件のVR(バーチャルリアリティー)の商談があった。同社が制作する農業をテーマにした教養番組「あぐり王国NEXT」は10年近く放送されている人気番組だ。農業を分かりやすく説明、子供から大人まで楽しめる。「他国・地域に比べると香港は特に農業、自然に関心を持っている企業が多いと感じる」と南部氏は話す。「世界的にも農業をここまでフューチャーして農業を深堀する番組は他にはないと自負している。世代を超えて楽しみながら学べる作りにしている。教育的な側面な含め、教育機関からの問い合わせは高まっている」

 今、世界中から年間200万人もの観光客が訪れる北海道。香港からは16万5000人、中国本土、台湾などに次いで4番目の多さだ。ブランディングが確立されている北海道だが、同時に新たな問題もある。それはインバウンドツーリズムの物理的な限界だ。「海外から多くの方にきていただくのはうれしいが、同時に空港、ホテルのキャパシティーに限界がきている。行きたくても常に飛行機がとれない、ホテルの宿泊も高く、泊まる場所がないというのが現状」と南部氏。人口およそ550万人の北海道だが、人口半分ほどの数の観光客が入ってくるなか、空港の容量を拡張、オペレーションの拡張などを検討しているがなかなか難しいところ。

 こうしたなか、北海道にすぐに来られなくても気軽に北海道を楽しんでもらい、新たに北海道の魅力を知ってもらおうと北海道放送は「VR(バーチャルリアリティ)事業」を開始した。360度見渡せる立体的な映像技術VRを使ってリアルな体感ができるアプリだ。その場にいるようなバーチャルな体験をできるということで、番組と同じくらい人気が高いという。主に旅行会社を通し、北海道に関心がある顧客にむけて、これを見てもらうというのが狙いだ。北海道にいるような体感を得られることで、商談も分かりやすく円滑に話が進むことが多いという。「要望があればどんなものでもコンテンツは作れる。例えばスノボーやスキーなどまるで自らが体験しているかのようなバーチャルな体験を楽しんでもらい、旅行関係だけでなく今後は学校などの教育機関でもでも活用できると考えている」。TV番組とは違う角度から北海道の新たな魅力を発信し、さらにアジア市場への拡大を狙う。

(このシリーズは月1回掲載します)


【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/

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