習主席が支持表明、科学技術産業を振興

習主席が支持表明
科学技術産業を振興

粤港澳大湾区を視察する立法会議員と特区政府高官(写真:政府新聞処)

習近平・国家主席は先ごろ、香港が国際科学技術イノベーション・センターとなることに支持を表明した。これは第13次5カ年計画に盛り込まれた香港の3大国際センターに続く第4の位置付けであるとともに、香港、マカオ、珠江デルタ9市からなる粤港澳大湾区でのイノベーション科学技術の発展も香港が主導することを意味している。(編集部・江藤和輝)

習主席の発言は新華社が5月14日に報じて明らかになったもの。中国科学院と中国工程院の在港院士24人は昨年6月に習主席に書簡を送り、国家科学技術研究プロジェクト経費の香港での越境使用や、科学技術研究員が国家の科学技術計画に深く参入できるようにすること、中国本土と香港の科学技術協力を拡大・深化することなどを提言した。習主席はこれを重視し「香港と本土の科学技術の協力を促進し、香港が国際科学技術イノベーション・センターとなることを支持する」と明言。各部門に迅速な対応を指示し、国家科技部と財政部はすでに国家科学技術研究プロジェクトの経費によって香港の関連研究プロジェクトを支援する措置を打ち出している。

特区政府は15日、本土と香港の科学技術イノベーション協力に関するシンポジウムを開催し、本土の担当官僚を招き科学技術界関係者に新政策の詳細を紹介した。出席した国家科技部の黄衛・副部長は「新措置は香港の科学技術研究者が公平な競争を経て直接、国家の研究開発プロジェクトを請け負い、中央財政の経費も香港で越境使用することができる」と説明。これまでは香港の研究者は本土の研究機関をパートナーとして申請し、資金は本土でしか使用できなかった。この措置は昨年9月末に試行が開始され、今年4月までに香港に設立された16カ所の国家重点実験室と6カ所の国家工程技術研究中心香港分中心が申請したプロジェクトがすべて承認され、中央財政から約2200万元の支援を受けたという。これら機関が設置されているのは主に香港大学、香港中文大学などの高等教育機関や応用科学研究所などだ。

北京市で28日、中国科学院第19回院士大会と中国工程院第14回院士大会が開幕した。開幕式では習主席が重要講話を行い、「中国が強盛、復興するには科学技術の発展に注力しなければならない」と強調した。中国工程院で初の在港院士となった陳清泉氏も出席し、香港紙の取材で「香港の院士たちは特に粤港澳大湾区の建設でいかに役割を発揮するかを考えなければならない」と言及。在港院士24人による習主席への書簡の音頭をとった陳氏は「習主席は香港を非常に重視し、精神的にも物質的にも香港の科学技術イノベーションの発展を支持し、香港の科学者にとって励みになっている」と述べた。陳氏は香港の科学技術に対する投資は域内総生産(GDP)の1%にも満たず、台湾、韓国、シンガポールより低く、中国本土に比べるとはるかに低いことや、科学技術イノベーションに対する戦略・計画がないなどの問題を指摘。粤港澳大湾区の建設加速や本土との科学技術交流の新政策によって科学技術が香港経済の支柱の1つとなれば、不動産や株式への過度な依存から脱却し香港の長期的な繁栄につながるとの見方を示した。

スイスのビジネススクール、国際経営開発研究所(IMD)が24日に発表した2018年の「国際競争力報告書」で、香港は昨年の1位から2位に後退した。陳茂波・財政長官はランク後退について特に科学技術と科学技術研究のインフラが19位と低いことが足を引っ張ったと指摘。この分野で立ち遅れていることを認め、改善のため政府がすでに投資を拡大していると説明した。25日に行われた「香港大学生内地実習計画」の出発式で講演した中央人民政府駐香港特区連絡弁公室(中連弁)の譚鉄牛・副主任もこの件に触れ、「科学技術研究の発展を欠いていることが原因の1つ。フィンテックの発展は香港が国際金融センターとしての地位を維持する一助となる」と強調。本土の資金を越境利用できる措置などは香港が科学技術を発展させる好機だと述べた。

韓正氏が粤港澳大湾区視察

中国中央電視台(CCTV)は23日夜、香港マカオ政策を主管する中国共産党中央政治局常務委員の韓正氏が20〜22日に広東省視察を行ったと報じた。韓氏は中国(広東)自由貿易試験区の珠海横琴片区、広州南沙片区、深圳前海蛇口片区を訪れ、自由貿易区の建設状況を把握。さらに港珠澳大橋、粤澳合作中医薬科技産業園、深港科技創新特別合作区、華為技術、前海深港青年夢工場なども視察した。22日には深圳で開放工作拡大座談会を主宰し、粤港澳大湾区の建設は習主席が「自ら計画を策定し、手配し、推進している国家戦略」と強調した。

韓氏の粤港澳大湾区視察は中央港澳政策協調小組組長に就任してから初めてとなり、中央はこの視察結果を元に大湾区の発展計画を吟味するとみられる。5月末に予定されていた大湾区の計画発表は6月にずれ込んだが、香港中華総商会会長で粤港澳大湾区企業家連盟の蔡冠深・主席は、これが海南省の自由貿易区設置と関係があると指摘。大湾区の政策条件は海南省自由貿易区よりもさらに開放されることを確保しなければならないからだという。

国務院新聞弁公室は24日に記者会見を行い、「中国(広東)自由貿易試験区の改革開放をさらに深化させる案」を発表。2020年までに粤港澳大湾区合作モデル区をつくり、香港・マカオ・広東省のビジネス環境を一体化させ、サービス貿易の自由化を推進するなどの方針を示した。専門サービス、イノベーション科学技術、若者の起業といった香港にかかわる3大分野でそれぞれ新措置が講じられた。広東省の欧陽衛民・副省長は、香港と本土の経済貿易緊密化協定(CEPA)の枠組みの下で香港・マカオの金融、法律、会計、建築などの専門サービス業に対する市場開放を拡大し、香港の建築工程管理モデルを導入し、香港・マカオの船舶航路を国内の特殊航路として管理することなどを説明した。

香港金融管理局(HKMA)の陳徳霖・総裁は15日、粤港澳大湾区の発展計画には金融サービスに関する措置が盛り込まれ、香港市民が大湾区で銀行口座を開設する便宜が図られる見込みを明らかにした。また本土ではスマートフォンによる電子決済が普及しているものの、香港で使用しているスマホ決済システムは越境使用できないことが問題となっている。陳総裁はこれについて、一部の銀行と電子決済システムの運営業者が本土で使用できる越境決済システムを研究開発していることを明らかにした。粤港澳大湾区では金融と科学技術の面で香港が主導的役割を果たすよう期待されており、この契機をいかに生かすかが香港の繁栄維持の鍵を握っている。

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