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最新号の内容 -20140801 No:1412
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 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)

 

香港に進出したイカセンター

 

スプラウトグループ
会長 高橋誠太郎さん

【プロフィール】 1974年仙台市生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、コンサルティング会社 株式会社日本エル・シー・エー入社、マーケティング部門、飲食・FC部門にて携わる。2002年7月 有限会社スプラウト設立、代表取締役に就任。以降グループ各社で「ビジネス=エクスタシー」をモットーに、「シーンの提供」にまい進している。

 

——オープンしてまもないですが毎日にぎわっていますね。

 おかげさまで繁盛しております。活イカがメーンでメディアに取り上げられておりますので、活イカ目当てのお客さまが多いですが、香港人のお客さまも多くお越しになっています。
 

——イカを輸入するのは難しいと聞いていますが。

 大変です。イカ一杯に対して10倍の重さの水と酸素を袋に積んで運びます。水は余計な雑菌が入らないよう特殊な機械を使ってイカを維持します。一杯ずつ袋に包むので送料がものすごくかかります。これを毎日しています。
 

——毎日なんですか? 1日どのくらいイカを輸送しているのですか?

 20杯は香港に送りたいのですが、実際はまだそこまで及んでいません。今後は新しい港を開拓して輸入しようと考えています。私たちは築地を通さずに漁師と直接契約して仕入れてきます。今は北海道から九州まであらゆる漁港で取引しています。主にヤリイカ、スルメイカ、赤イカ、スミイカなどです。難点は獲れたイカが死んだ状態では価値がゼロになってしまうこと。香港に運ぶのにトータルで10時間以上かかりますが、この間生きている状態で持ってこないと意味がないのです。
 

——かなりリスクがあるなかでの勝負ですね。

 大変だからこそやりたいのです。難しいからやりがいがあり、挑戦しがいがあります。多くの飲食店がひしめきあうなか、そのなかで似たようなものを出そうとしたら失敗する場合もあります。だったら徹底的にオンリーワンの店になることです。毎日輸送しても数が足りない場合もでてきます。輸送途中で死んでしまうこともあります。たとえイカが店に入ってなくても他のメニューも期待を裏切らない味、ここでは鮮魚をおいしく食べられるというコンセプトでやっていきたいと思っています。
 

——そもそも活イカを取り扱う店は日本でもそうないのでは?

 その通りです。毎日のように出せる店はほぼありません。弊社が日本国内で一番、活イカを店で出していると思います。本来はその場で、海から揚がったものをすぐ召し上がってもらうのが最高ですが、都心といった漁港から離れた場所だと容易ではありません。私たちはお客さんにまるで海の傍で食しているような感覚を楽しんでいただけるよう頑張っています。
 

——なぜ香港で立ち上げたのですか。

 もともと海外で挑戦したいと思っていました。イカセンターは東京・神奈川に10店舗展開していますが、ここまで展開しているところはほかにありません。関西や北海道に広げて全国展開というやり方もありますが、やはり海外でと考えていました。シンガポールやジャカルタも候補でした。香港を選んだのは、コストは別として日本と同じ鮮度の活イカや魚を提供できる点。ただ香港は家賃も高いし室内も狭いという点で悩みましたが。
 

——出店で一番のネックは賃料ですよね。

 出店しようと考えた時に物理的に日本の魚を運ぶことが可能かを検討します。たとえ可能であってもコストがかかります。輸送だけでも毎月200万円です。当初は80万円でと考えていましたが、やはり鮮度にこだわった輸送には手間とコストがかかってしまいます。高い値段に設定しても受け入れるローカルのお客さんがいる場所でないと成立しません。その点で香港は値段が高くても味がおいしいのなら日本に行くより安いという感覚で来てくださる。味を認めて受け入れてくれたら値段も関係なく来てくださる。
 

——ビジネスを成功させるために必要な要素とは。

 まだまだ成功に及びません。これからです。海外に出るということは日本以上に厳しいものです。日本でうまくいかなくなったらから海外で、という考えではうまくいくはずがありません。日ごろ考えているのは、出店する地域に適合させようという努力は必要ですが、最初からそれが必要ではないということです。今、自分たちが持っている力で絶対成功すると信じてやることが大切なのです。物流の土台ができているので今後はイカセンター以外のコンセプトでも出店していきたいですね。

(この連載は月1回掲載します)


 

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。