香港ポスト ロゴ
  バックナンバー
   
最新号の内容 -20140620 No:1409
バックナンバー

天安門事件追悼集会
普通選挙問題絡める

 

6・4集会では若者らが中心となって政府に対する抗争を呼びかけた 

 1989年の天安門事件から25周年に当たる6月4日、香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)は事件の犠牲者を追悼する6・4キャンドル集会をビクトリア公園で行った。過去最高に匹敵する参加者を集めたほか、集会では2017年に予定されている行政長官の普通選挙問題や「セントラル占拠行動」にも言及、普通選挙をめぐる住民投票や7月1日に行われる恒例7・1デモへの参加が呼びかけられた。民主派は一連の活動で勢いをつなぎセントラル占拠の実施に持ち込もうとしている。(編集部・江藤和輝)

 

 

「真相」見極め訴える団体も

 集会の参加者数は主催者発表で18万人余り、警察の推計で9万9500人。主催者発表では12年と並び過去最高だが、警察の推計では過去最高だった10年の約11万人を下回った。支連会はこれに先駆けた1日、天安門事件追悼のデモ行進を開催。参加者は主催者発表で3000人、警察の推計ではピーク時に1900人。昨年の主催者発表1600人、警察の推計1200人を上回り、10年以降では最高となった。

 一方、昨年に続いて追悼活動の分裂も見られた。尖沙咀の文化中心前では地元派組織「熱血公民」が独自に集会を開催。ビクトリア公園の集会に不満を持つ市民が集まり主催者発表で7000人、警察の推計で3060人が参加した。

 今年は天安門事件に対し支連会など民主派の見方に異議を唱える活動が現れたのも特徴だ。1日は天安門事件に疑問を呈する組織「六四真相」がデモ隊の通過する湾仔の修頓球場で展示を行い、事件当時、天安門広場内では死亡者は出ていないことなどを指摘した。親政府派団体「愛港行動」も六四記念館のあるビルの前で事件当時に多くの戒厳部隊兵士が殺された写真を展示。支連会はこうした事実を隠し市民を25年間ミスリードしてきたと訴えた。4日の集会が行われた公園周辺では親政府派団体「愛港之声」がビラ配りなどを実施。メディアは学生の死亡者数を誇張し兵士の死傷に触れていないと指摘し、市民らに事件の真相を見極めるよう呼びかけた。

 愛港之声などは6・4集会が特定勢力の政治目的で開催されていると訴えている。現に集会は単なる天安門事件の犠牲者追悼ではなく、普通選挙をめぐる住民投票、7・1デモ、ひいてはセントラル占拠への動員を図る場ともなっていた。住民投票は政府に要求する行政長官選挙の改革案を決めるもので、電子投票が6月20〜22日、直接投票が22日、12カ所の投票所で行われる。

 7・1デモでは主催者の民間人権陣線が参加者数見込みを例年の倍以上に当たる10万人として警察に申請。「住民直接指名、職能別選挙枠廃止」をテーマに掲げ、ビクトリア公園からセントラル遮打道の歩行者天国まで行進。その場で午後11時まで集会を開催する。集会ではセントラル占拠の発起人3人がスピーチし、非暴力抗争の訓練も行うが、同日にセントラル占拠を実施する計画はないという。だが香港最大の学生組織、香港専上学生連会(学連)の周永康・秘書長は政府本庁舎や立法会議事堂などの占拠をほのめかした。

 

セントラル占拠
住民投票めぐり民主派分裂

  セントラル占拠は5月6日の討論会で住民投票の選択肢となる改革案を選定した。討論会には約2500人が参加。15件の改革案から投票で選ばれた上位3件を住民投票の候補案とするもので、1位は学民思潮・学連案、2位は人民力量案、3位は真普選連盟案で、いずれも基本法違反とされる「一般市民による行政長官候補指名」を含む案となった。穏健民主派や学者らの改革案は落選し、いずれの案が選ばれても中央が受け入れられないものとなる。

 陳方安生(アンソン・チャン)元政務長官が召集人を務める香港2020は「投票はセントラル占拠に同意する社会活動家に限られ、中央政府と敵対したくない大部分の市民を排除している」との声明を発表、住民投票は真の選択を欠くと批判した。真普選連盟の改革案は選ばれたものの、民主党は社会民主連線(社民連)と人民力量が承諾に反し他の改革案の票集めを行っていたと非難。民主派の分裂が顕著となり、民主党は15日、住民投票が終わった後に真普選連盟を脱退すると発表した。

 批判を受けて最終的に投票用紙には3つの改革案から支持する案を選ぶ質問のほか、投票率を上げるために「政府の改革案が国際基準にかなっていない場合、立法会は否決すべきか」との質問が設けられた。両質問とも「棄権」の選択肢も設けたが、セントラル占拠は3つの中で最も得票が多かった改革案を推進するため、棄権票は無視される。

 市民の主流的意見はどうだろう。『明報』が香港大学民意研究計画に委託した世論調査(5月14〜20日、対象約1000人)によると、17年の行政長官選挙で指名委員会による予備選挙を設け、候補者が中央政府に敵対しないことを確保する案に関しては支持が51%、反対が28%。支持は昨年4月の44%から拡大を続け、初めて50%を超えた。反対は昨年4月の35%から縮小した。セントラル占拠については反対が56%、支持が24%と反対が圧倒的だ。また中央と特区政府の改革案が1人1票で行政長官を選ぶものの民主派の参加を排除した場合については、「1人1票の選挙が実現するなら受け入れる」が57%、「改革が立ち往生しようとも反対する」は28%だった。市民の現実的な姿勢が表れている。