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最新号の内容 -20140411 No:1404
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預金残高1兆元に迫る

人民元業務10周年

 

各行は相次ぎ人民元預金の金利を引き上げ預金獲得合戦を展開   


 習近平・国家主席による3月22日〜4月1日の欧州歴訪では、英国、フランス、ドイツと人民元オフショア業務に関する取り決めが交わされた。人民元オフショア市場はアジアだけでなく欧米にも拡大し、先行する香港にとっては脅威となっている。香港では2004年に人民元業務が解禁されて10周年を迎えた。人民元建ての預金残高、貿易決済、債券発行などではオフショア市場最大の規模を誇るものの、人民元の国際化が進む中で新たな段階へと進まなくてはならない。(編集部・江藤和輝)
 

オフショア市場は欧州に拡大

 習主席の歴訪中、中国とフランスの両政府は人民元適格海外機関投資家(RQFII)で800億元の投資枠を認める共同声明を発表。RQFIIとは海外から人民元建てで中国の金融市場に投資するルートである。フランスは英国に次いで欧州で2番目にRQFIIの投資枠を与えられた。英国とドイツでは人民元決済に関する覚書が交わされ、ロンドンとフランクフルトに欧州初の人民元決済行が設置される。現在、決済行が設置されているのは香港、マカオ、台北、シンガポール、ビエンチャン、プノンペンだけ。すでにロンドンでは1月、RQFIIを通じた現物出資型A株ETF(上場投資信託)として中国南方基金管理の香港子会社である南方東英資産管理と英Sourceが発行した「南方Source富時中国A50 UCITS ETF」が上場し、欧州初のA株ETF上場となった。

 国際銀行間通信協会(SWIFT)が2月に発表した統計で、すでに人民元は世界第7位の主要取引通貨であることが分かった。人民元は過去3年で23種類の通貨を追い上げ、シェアは12年初めの0・25%から1・39%に拡大した。取引は香港が73%と集中し、以下、英国、シンガポール、台湾、米国、フランス、オーストラリアと続く。人民元は2020年に日本円を抜いて4位に躍進するとの予測もある。

 中国銀行は人民元オフショア市場の発展を測る指標として3月に「オフショア人民元指数(BOCオフショアRMBインデックス=ORI)」を発表。オフショア市場での人民元の資金規模、運用状況、金融商品使用などの動向を示すもので、13年末の指数は0・91。12年が0・50であることから13年の指数伸び率は82%という。中国銀行は主要市場が公表したデータを基に13年末のオフショア人民元市場の規模を紹介。人民元預金残高は約1兆5000億元。海外の企業と個人が中国国内で開設した非住民口座の預金残高は5600億元であるため、合わせれば2兆元を超える。また香港の銀行の預金残高が占める割合は約60%、1日当たり平均の為替取引に占める割合は約90%、13年末のORIに対する香港の貢献率は62%となっている。

 香港上海銀行(HSBC)の持ち株会社であるHSBCホールディングスのスチュアート・ガリバー最高経営責任者(CEO)は3月27日、HSBC主催のフォーラムで講演。現在の発展規模や中国の改革スピードからすると「人民元の自由兌換は17年に実現する」と指摘した。中国は今後、世界金融でさらに重要な役割を担うため、中国の越境資金流通は3年以内に倍増し、将来的には多くの国の中央銀行が人民元資産を保有するため米ドルへの脅威は高まっていくとみる。

 

2017年にも自由兌換

  香港金融管理局(HKMA)の陳徳霖・総裁は2月、香港の人民元業務が10周年を迎えたのに当たり、「香港人民元オフショア市場の回顧と展望」と題する論説を同局ウェブサイトに掲載した。陳総裁は、米ドルを例に人民元のオフショア預金がオンショア預金の30%に達するとすれば現在の約20倍に相当することを挙げ、人民元オフショア市場は拡大の余地が非常に大きいことを指摘。また中国の貿易決済に占める人民元の割合は現在15%だが、改革開放の深化と資本取引の規制緩和、人民元兌換の自由化が進めば5〜10年以内に日本円やユーロ並みの30〜60%に拡大するとみている。一方、香港は現在、預金と決済でオフショア市場の70%を占めるが、人民元の国際化が進めばこれほど高いシェアは維持できないとの見方も示した。

 HKMAの統計では、2月末現在の香港の金融機関における人民元預金残高は9203億4500万元。13年末現在の統計によると、13年通年の人民元預金残高の伸び率は42・7%。譲渡性預金証書(CD)を含む預金残高は1兆530億元、貿易決済総額は3兆8410億元、債券発行総額は4100億元、保険契約は15万6183件、非上場のRQFIIファンドは26本(運用資産総額130億元)、14年1月末現在の香港取引所(HKEX)上場のRQFIIのETFは11本(運用資産総額370億元)となっている。

 人民元預金残高は年内に1兆元を超えるとみられ、最近も預金獲得に向けて金利を引き上げる銀行が相次いでいる。香港ドル発券行の中国銀行(香港)は4月1日から3カ月定期の金利を3%に引き上げた(新資金100万元に限る)。目下、シティバンクが3カ月で3・5%など、少なくとも10行が人民元預金で3%以上の金利を設けている。

 オフショア市場で最も多くの人民元資金を保有する香港は、他の市場との競争に直面し投資手段の多様化を図っている。最近ではRQFIIを通じて中国本土で発行された国債に投資できるという初のオンショア国債ETF「南方東英中国5年期国債ETF」が2月19日にHKEXで上場。従来のA株指数に連動するETFと異なり5年物国債指数に連動する。5年物のオンショア国債の利回りは昨年末現在で4・48%、同期に香港で発行されたオフショア国債の2・97%をはるかに上回る。3月14日には第2号として「易方達花旗中国国債5—10年期指数ETF」も上場した。

 金融監督管理機関や業界が近年、本土の資本取引開放に向けて提案した新措置には、香港住民の人民元両替上限の緩和、適格国内個人投資家(QDII2)、適格海外個人投資家(QFII2)、ファンド相互承認がある。特区政府財経事務及庫務局の陳家強・局長は2月、中でもファンド相互承認が早ければ夏にも実現するとの見通しを明らかにした。第2四半期から本土のファンド500本余りが香港で販売され、人民元建て投資商品の数は年内に現在の10倍以上になるとも予想される。また同時に香港のファンドが本土市場で販売されれば香港の資産運用センターとしての地位が強化され、香港の1人当たり域内総生産(GDP)が500米ドル増えるという。香港は今後も中国の金融改革を先取りしていくだろう。