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最新号の内容 -20110211 No:1326
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 寒い季節になると、温かい食べ物が恋しくなる。亜熱帯に属する暖かい香港だが、冬ならではの料理もいくつかある。今回はその中から「煲仔飯」を紹介する。今年の冬はそんなアツアツのメニューを味わって、心も体もほかほかで過ごそう。           
(構成・編集部)
※写真と資料提供:Match 4 Communications


 

広東特有の庶民の味

煲仔飯は香港島ならコーズウェイベイのジャーディンズ・バザールや湾仔のヘネシーロード、九龍サイドでは油麻地のテンプルストリート付近の食堂でよく見掛ける

 煲仔飯(ボーチャイファン)は広東省特有の庶民料理。広東語で「煲」は鍋、「仔」は小さなものを表すときに使うことからも分かるように、煲仔飯は一人前ずつ作るのが基本だ。

 煲仔飯を作るのに欠かせない素焼きの土なべは煮物などに用いるもので、香港ではどこの家庭にも一つはあるごく一般的なもの。この素焼きのなべは熱伝導が比較的遅い分、熱が逃げにくいという特徴があり、米を炊くとことのほかおいしく出来る。「煲仔飯はごはんを味わう料理」といわれるのもこのゆえんだ。特に煲仔飯に無くてはならない「おこげ」は電気炊飯器ではまず作れない。

店先で炊かれる煲仔飯。香ばしいにおいが街角にただよう

待つのも楽しみのうち
 米から炊くため、煲仔飯は注文してからテーブルに運ばれるまでに最低でも二十分ほどかかる。煲仔飯を炊くコンロはほとんどが店外にあり、オーダーが入るとスタッフが外に出て作り始める。

 待つこと約二十分、あつあつの煲仔飯が運ばれて来る。だがこれですぐに食べられるわけではない。まずやけどしないように気を付けながら土なべのふたを取り、注文の際に用意してくれる広東しょうゆをれんげ二杯分ほどかけ、再びふたをして蒸らす。これはふたを開けたときに鍋の中の熱が逃げるのを最小限に抑えるためにも、素早くやるのが鉄則。店によっては店員がすぐにふたを下げてしまうところがあるので注意が必要だ。

 ふたをしてさらに待つこと約五分。ごはんが程よく蒸れ、しょうゆが染み込んだころにふたを開ける。湯気と一緒にしょうゆがからまったおこげの香ばしさが立ち上る。

昔ながらのコンロを使って炊き上げる

 後はかき混ぜながら、具のうま味を程よく吸い込んだごはんの味を堪能するだけ。通常の料理よりも待ち時間は長くなるが、待たされた分、口にした時の喜びは格別だ。

 煲仔飯は具にもよるが通常一人前三十—四十ドル。以前は三十ドル前後で食べられたが、昨今は値上がり傾向にあるようだ。それでも、一人で手軽に食べられるところがいい。大勢で食卓を囲むなら火鍋もいいが、一人、二人といった少人数で、しかも懐が少し寂しいときにはありがたい。

 この時期はホテルの中華料理店などでもアワビなどの高級食材を使った煲仔飯をメニューに加えるところが出てくる。それもまた魅力的ではあるが、まずは「庶民の味」としての煲仔飯を味わいたい。


 

主な煲仔飯メニューとポピュラーな具

塩漬け魚の干物はかなり塩が利いているので、食べるときはしょうゆを少なめにしておこう

北菇滑雞飯…シイタケと鳥肉
北菇田雞飯…シイタケとカエル肉
夾滑田雞飯…カエル肉
窩蛋牛肉飯…卵と牛肉
臘鴨脾飯…アヒルのももの塩漬け
梅菜肉餅飯…梅菜の漬け物と豚ひき肉
臘腸飯…豚肉のサラミ
潤腸飯…豚肉とレバーのサラミ
双腸飯…2種のサラミ
臘腸滑雞飯…豚肉のサラミと鳥肉
潤腸滑雞飯…豚肉とレバーのサラミと鳥肉
双腸滑雞飯…2種のサラミと鳥肉
臘腸田雞飯…豚肉のサラミとカエル肉
鹹魚肉餅飯…塩漬け魚の干物とひき肉

〈臘腸…豚肉のサラミ〉
 豚の赤身と脂身を(2対8は特級、3対7が1級、4対6は3級)それぞれひき肉にして味付けした後、腸詰めにしてゆで、くん製にしたもの。主な産地は広東省、広西チワン族自治区、湖南省、上海市など
〈潤腸…豚肉とレバーのサラミ〉
臘腸の一種で、「鴨肝腸」とも言う。一般には豚のレバーか鴨のレバーと豚の脂身が入っている。色は黒くぷりぷりと軟らかい。「玫瑰露酒」などを使うので、口に入れると強い酒の香りがする。保存はあまり利かない
 
〈臘鴨…アヒルの塩漬け〉
焼味とも塩漬けとも言える「臘鴨」はアヒルを肥育で太らせ、内臓を取り出し、調味料に1日漬ける。次に水に漬けて余分な塩分を抜き、木の板でプレスし、干してあぶる。冬になると店先に並び始める
 

自宅で作ってみよう

 「土なべで米から炊く」と聞くとちょっとしり込みしてしまうが、水加減と火加減さえ覚えれば、煲仔飯は家でも作ることができるのだ。

 まず用意するものは土鍋。街市(公設マーケット)などにある金物屋で手に入る。直径十五センチほどの大きさのもので二十ドル前後。煲仔飯に限らず、米を入れずに「魚香茄子煲(マーボーナス)」のような肉や野菜の煮込み料理にも使えるので、一家に一つあると便利だ。買うときは店の人に頼んで水が漏れないかどうかチェックしてもらうのを忘れずに。

 次に米。煲仔飯には中国米よりもタイ米が合う。そして欠かせないのが広東しょうゆ「生抽(サンチャウ)」。具にあらかじめ味を付けて作る場合は色付け用のしょうゆ「老抽(ラウチャウ)」を使うといい。

 今回はオーソドックスな鳥肉とシイタケ、中華サラミ「臘腸(ラップチョン)」を具に使った。鳥肉は骨付きの方がだしが出ておいしいが、食べやすいささ身にした。臘腸は表面にほこりが付きやすいので湯でざっと洗う。具を入れるときに好みでショウガのスライスを加えてもいい。

 炊くときは最初は強火で後は弱火。日本では「初めチョロチョロ中パッパッ、赤子泣いてもふた取るな」と歌われるが、煲仔飯の火加減はこれとは反対のようだ。それに途中一度だけふたを開ける。米が完全に炊ける前に具を入れるからだ。しかも熱が逃げないように素早く入れて、さっとふたをしなければならない。

 具はいったん火を通して味付けをしてから入れることが多いが、今回は味付けなしで生のまま入れた。出来上がりが不安だったが、具にも火は十分通っていた。ただ具を生のまま入れるときはやはり最初から米と一緒に炊きこんだ方が味がよく出るようだ。また火加減は前述の歌と同じように最初は弱火で後は強火でもほぼ同じように出来る。作り方は左記の通り。手間もかからないので、一度トライしてみては。

鳥のささ身とシイタケ、中華サラミの煲仔飯
【作り方】
①鍋の中に薄く油を引く


②具はあらかじめ切っておく


③米1カップを洗って鍋に入れ、水1.5カップを加える


④ふたをして強火で5~7分炊く
⑤ご飯の表面に小さな穴が開き始めたころを見計らってふたを開け、具を入れてふたをする


⑥中火で3分、次に弱火で5分炊く
⑦火を止め10分ほど蒸らす
⑧ふたを開け、広東しょうゆをかけて再度ふたをする
⑨少し蒸らす

出来上がり。彩りを良くしたいときはしょうゆを入れて蒸らす際にネギを加えるといい

人気の店で味わう

メニューも豊富。手前は「北菇滑雞飯」(34ドル)

 人気レストランで煲仔飯を味わうのなら「巴蜀軒」に行くといい。同店は香港域内に二店舗展開する四川米線(四川ビーフン)の専門店だが、毎年冬場限定で煲仔飯メニューを提供しており、人気を呼んでいる。カジュアルな雰囲気で値段もリーズナブルなので、気取らずに利用できるのがうれしい。

酸辣スープ味のカツレツ載せビーフン「招牌豬扒酸辣米線」(29ドル)

 煲仔飯の王道はやはりシイタケと骨付き鳥肉が入った「北菇滑雞飯」で、注文する人がとても多い。スペアリブ入りの「鼓汁排骨飯」 は男性に好まれるという。塩漬け魚と肉のミンチを載せた「鹹魚肉餅飯」(各三十四ドル) は濃厚な塩味で、ご飯が進む。

辛さや熱さを癒やす「桂花円肉菊花茶」(22ドル)

 煲仔飯だけでは物足りないという人には同店の名物料理「豬扒麻辣米線」(三十一ドル)がお薦め。鳥肉と豚肉でだしを取ったスープに四川の香辛料をふんだんに使ったスパイシーな味わいのビーフン。これに中華風カツレツを載せたボリュームたっぷりの一品だ。酸っぱくて辛いのが好きだったら「豬扒酸辣米線」を。いずれも辛さは調整できるので、辛いのが苦手なら「唔辣(ムラー)」とオーダーしよう。

 辛さや熱さでほてったら、食事と一緒に冷たいドリンク「桂花円肉菊花茶」を味わおう。ヘルシーな菊花茶の中に、桂円肉(生薬として知られる乾燥リュウガン)とキンモクセイの花が入っていて体の中の熱を鎮め、のどを潤す効果がある。ほんのり甘酸っぱく、スパイシーな四川ビーフンやアツアツの煲仔飯にぴったり合う。


巴蜀軒
■所在地:筲箕湾東大街53号
 電話:2560-2699
■所在地:銅鑼湾駱克道360号百玲大厦地下G1舖(馬師道から入る)
 電話:2574-6222