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最新号の内容 -20140228 No:1401
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過熱抑制策から1年
冷え込む住宅市場

 

住宅市場では取引が大幅に減少したものの価格は高止まりしている


 春節(旧正月)休暇に当たる1月31日~2月3日の住宅市場では例年になく取引が低迷した。4日間の新築物件の取引はわずか10件で、昨年の旧正月休暇(5日間)の151件に比べ93%もの減少。中古物件では大手不動産代理の中原地産(センタライン・プロパティー)が指標とする10大団地の取引はわずか1件で、旧正月休暇の統計としては過去最低を記録した。昨年2月に新たな不動産市場の過熱抑制策が打ち出されて1年が過ぎたが、住宅市場では冷却化が進んでおり、今年の住宅価格はおおむね下落が予想されている。       
(編集部・江藤和輝)

 

 

昨年の不動産取引は40%減

 立法会で2月19日、住宅市場の過熱抑制のため実施された「2012印紙税(修正)条例草案」の審議が始まった。抑制策は発表と同時に実施しなければならないため、立法会での採決は後回しとなっていた。法的根拠がないままでは抑制策の効果が減退、ひいては市場に動揺をもたらす懸念もある。政府は抑制策を「実施後に審議する」という姿勢を堅持していたが、民主党議員が「審議後に実施する」との修正案を提出、民主派や一部財界が支持したため抑制策の立法会通過が危ぶまれた。このため特区政府運輸及房屋局の張炳良・局長は、税率を引き上げる際に限って「審議後に実施する」ことを承諾するという譲歩で臨んだ。

 過熱抑制策の効果は市場の様子から十分うかがえる。中原地産の統計によると、13年2月〜14年1月の中古住宅物件の取引数は3万4486件で、前年同期比47%の減少となった。特区政府土地註冊処が発表した13年の不動産取引の登録件数は、住宅やオフィスなどを含む全体で7万503件。前年比で39%減。取引高の合計は4562億8000万ドルで、前年比30・2%減となっている。

 不動産評価を行う差餉物業估価署が発表した13年12月の住宅価格指数は245・1。13年通年では約7・7%上昇したが、12年の25・7%から大幅に鈍化し、過去5年で最低の伸びとなった。ただし返還バブルのピークである1997年10月より41・8%高い。

 抑制策によって投機目的の住宅購入が大幅に減ったことも明らかとなっている。財経事務及庫務局が立法会に提出した資料では、13年の非香港住民と企業名義による住宅物件の購入は2865件で、全体に占める割合は約5%。その割合は12年の13・5%に比べ大幅に縮小した。このうち新築物件での割合はピークに当たる11年が36・8%だったが、13年は5・3%。中古物件ではピークに当たる10年が16・5%だったが、13年は4・6%となった。現在の市場は実需目的の香港住民が主導していることがうかがえる。

 不動産コンサルタントのナイトフランクが先ごろ発表したリポート「世界の高級住宅指数」では、香港の高級住宅価格は13年通年で2・2%下落したことが分かった。ジュネーブ、パリに次いで世界3位の下落幅となった。世界平均では前年同期比6・9%上昇で、伸び率は12年の同6%を上回った。

 市場の低迷は不動産代理ライセンス所持者の減少としても表れている。不動産代理業を監督管理する地産代理監管局が発表した統計によると、1月末現在の不動産代理ライセンスを持つ個人は3万5645人で、過去9カ月の累積減少率は4・1%となっている。ピークに当たる昨年4月の3万7173人に比べると1528人減少した。1月の不動産取引登録が5817件だったことからみると、不動産代理6人で1件の取引を争うことになる。支店ライセンスは6204店舗で、12月末に比べ117店舗減少。12年10月以降の過去14カ月で最低となった。依然として03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行時の約2800店舗、08年の金融危機発生後の約4100店舗を上回っているものの、今後さらに10%減少するともみられている。

 

企業の住宅開発意欲も低下

  住宅取引は減少しているものの、価格は依然高い水準にあり、香港市民が住宅を購入するには「飲まず食わずで15年かかる」といわれる。これは米調査会社デモグラフィアが昨年第3四半期に実施した世界住宅負担能力の調査で明らかになったもの。同期の香港の住宅価格中位数は約402万ドルで、実に世帯年収の中位数27万ドルの14・9倍に当たる。12年調査時の13・5倍から一段と拡大し、過去10年の同調査で最高となった。2位のカナダ・バンクーバーの10・3倍を大きく引き離し4年連続で世界トップ。また収入に占める住宅ローンの負担割合は65・1%となる。新規購入住宅の平均面積は500平方フィート以下で、世界一狭い。

 住宅価格の高止まりは主に供給不足が原因だが、昨今の供給量と今後の見通しはどうだろう。特区政府運輸及房屋局の統計によると、13年通年の民間デベロッパーによる住宅物件の完成数は前年比17・8%減の8300戸、着工数は同24%減の1万4100戸。完成数は過去4年で最低。着工数が減少したのは新たに着工した物件が主に中小規模の住宅であることに関連があると説明。ただしデベロッパーなど業界では政府の審査の厳格化や建築作業員の不足による工期の遅れなどが理由と指摘している。

 運輸及房屋局は四半期ごとに今後3〜4年の民間デベロッパーによる潜在的住宅供給量を発表しており、13年第3四半期には過去最高の7万2000戸に達した。だが最新データの13年第4四半期では前期比1・4%減の7万1000戸となり、過去約2年で初めて減少に転じた。昨年の雨期が長かったこと、建築作業員の不足、新築物件の売り出しが多いためデベロッパーが開発を急がなくなったことなどが背景にあると指摘されている。ただし年平均で見ると長遠房屋策略督導委員会が見込む年間1万8800戸の需要に近く、過去10年の新築物件取引量の年間平均1万1700戸を上回っている。

 一方、新界西部の屯門の住宅開発用地2カ所の入札結果が2月12日に発表されたが、落札価格は過去12年で最低だった。特に約4億5600万ドルで落札された鉄道沿いの用地は1平方フィート当たりの地価で見ると2139ドル。市場予測の下限を24%下回り、屯門区としては02年以降の過去12年で最低となった。屯門区では条件の同じ住宅開発プロジェクトが昨年10月に1平方フィート当たり3573ドルで落札されたことから、過去4カ月で地価が40%も下落したことになる。新界西部では軽便鉄道の駅周辺開発プロジェクトの入札が昨年2度も流れ、政府は公共住宅建設への用途変更も考えているという。デベロッパーの開発意欲の低下がうかがえ、今後の住宅供給を左右する懸念もある。