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最新号の内容 -20140214 No:1400
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 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)


 

日本の醤油を新カテゴリーに

KIKKOMAN Corporation Hong Kong  Representative Office             
駐香港代表 杉浦 健さん
【プロフィール】
 1978年、東京都出身。2002年に東京都立大学(現在の首都大学東京)を卒業、11年に香港城市大学大学院卒業。02年にキッコーマンに入社。同年より海外営業部にて輸出貿易業務、その後、中近東欧州アフリカおよび南洋地域の営業を経て05年より香港、現職に至る。

 

——香港に進出したのは93年ですね。

 中国市場の情報収集のために立ち上げました。醤油はもともと中国大陸で生まれたものと言われていますが、日本に伝わった後、日本の風土や食生活の中で、日本独自の調味料へ変わっていきました。その製造工程も異なります。原材料は水、大豆、小麦と食塩のみ。蒸した大豆と炒った小麦に麹菌を混ぜ、その後食塩水と一緒にして発酵させて造ります。
 

——菌ですか。

 キッコーマンでは、キッコーマン菌と名付けた特別な菌を使います。この菌が、キッコーマンしょうゆの独特な色、味、香を生み出します。しょうゆの香りには、300種類以上の香り成分が入っており、また、基本五味と言われる「甘味」「塩味」「苦味」「酸味」そして「旨味」すべてが入っている調味料なのです。それらすべてが、微生物の力による発酵により生み出されます。


——日本以外では醤油の味を変えているのですか。

 日本で「濃口しょうゆ」と言われる当社の基本となるしょうゆは、日本を含めて全世界に10カ所ある製造拠点、どこで造ったものも同じ成分、同じ味になるように製造しています。その一方で、各地には、各地の味の嗜好というものがあります。そこで、各エリアごとに、丹念にどのような味が好まれるのかを調査します。その上で、濃口しょうゆを使いながら、現地の食材や調理法と組み合わせたレシピー開発を行ったり、現地の嗜好にあった味の調味料の開発を行っています。アジアでは、甘めのしょうゆが好まれるようです。


——香港市場をどうみていますか。

 最近では健康志向の人が増えたせいかスーパーでも原材料を見て購入する人が増えています。おかげさまで近年売り上げが伸びていますが、その理由として、ローカルの中華レストランとの取引の増加が挙げられます。「レストランからの持ち帰り」という文化がある香港では、当社のしょうゆを使ったものは「冷めてもおいしい」ということを前面に押し出しています。現地の嗜好に合わせた甘味付加の醤油を含め、売り上げは好調ですが、香港全体のシェアで見ればまだまだ少ないと認識しています。今後さらにシェアを伸ばしていくために考えていることは、香港にくる中国本土住民に対してのブランド発信です。スーパーや提携している飲食店に積極的に広告を出しています。


——中国本土はどうですか。

 台湾の統一企業との合弁の形で2002年から上海近郊の江蘇省・昆山でキッコーマンしょうゆの製造を始めています。また、09年には、河北省・石家荘でも現地生産をはじめ、北京・天津を中心とした華北エリアでの体制も整いました。また、広州を中心とした華南エリアは、その食文化の特徴から、今後その活動を拡大していきたいと考えています。


——ローカル商品との価格差をどうみていますか。

 確かにローカルの商品との価格差は何倍にもなります。したがって、同じものとして比較されたら、勝負になりません。しかし、先に述べた通り、キッコーマンのしょうゆは、醸造するための手間もその期間も全く異なり、その色、味、香は、ローカルのそれとはまったく異なるものです。したがって、その違いをどのような料理に、どのように使っていただいて頂いたら、その違いを感じていただけるか、そのための努力を私たちは続けていかなければならないと思っています。決して価格競争の中に入ることは考えておらず、キッコーマンしょうゆという新しいカテゴリーを創る、という気概で日々努力しています。


——軌道に乗るために必要な要素とは。

 現地の食文化を中心とした文化を知ること。香港は季節の変わり目があまりないので、店頭には、おなじものが年中置かれています。消費者がどう意思決定しているのか分かりにくいので、こうした購買動機を調べることも大切だと思っています。

(この連載は月1回掲載します)
 


 

【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。