香港ポスト ロゴ
  バックナンバー
   
最新号の内容 -20131004 No:1392
バックナンバー

 

 


香港からアジア事業展開

  経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
 (インタビュー・楢橋里彩)


 

MUJI(Hong Kong)Company,Ltd.
Managing Director

孔慧蘭さん     


【プロフィール】

 香港出身。2001年、西友グループよりMUJI香港に異動、開発ビジネスマネジャーに携わる。04年にはゼネラルマネジャーを経て、08年から現職に。香港に進出して以来、数々の店舗の売り上げを伸ばしてきた。08年に新ビジネスとしてトラベル・出張・旅行用品をそろえた「MUJI TO GO」を香港国際空港にオープンさせた。

 

 

——日本でも親しまれている御社の商品ですが、香港でのビジネス展開は?

 香港に最初に進出したのが1990年代。いったん撤退しましたが10年近くになります。おかげさまで日本のお客さまはもちろん香港のお客さまにも愛されるブランドに成長しました。今は一般店舗、MUJI TO GOとカフェが合わせて11店舗あります。

 

——どのようにブランドを確立しましたか。

 80年代から90年代にかけて日本の文化、商品が大ブームを巻き起こした時期があったのでブランド確立の困難はなかったですね。香港人にとって日本の商品はあこがれであり、デザイン性、質に大きな信頼を寄せています。

 

——御社のビジネス戦略について教えてください。

 日本のビジネス戦略をほぼ変えずに展開していますが市場規模が違います。日本では全国に店舗があるので幅広い世代のお客さんがいますが、香港はまだそこまで及びません。「生活サポート」を全面的に打ち出している私たちとしては香港では中高収入層を中心に展開しています。また店内は見やすく分かりやすく造ることもこだわっています。扱っている商品がシンプルで、実用性と便利性を追求しているゆえに、どう見せるかを徹底します。販売戦略としては日本のようなディスカウントはせず、適切な価格で商品を提供しています。また、大きな季節の変動がないので、変わり目のセールの必要性がないのです。値段で選ばれたくないと考え、お客さまに普段生活の一部として弊社の商品を選んでいただきたいです。

 

——日本での商品をそのままこちらで販売しているのですか?

 特に電化製品は電圧が異なるので、すべての商品を販売することはできません。香港はやはり土地が狭く、実用的でコンパクトな部屋が割りと多いので、同じサイズの家具を置くことができません。オーダーメードが人気の香港では、限られた空間の中で心地よいスペースを保つために収納スペースをいかに作れるかが鍵になります。こうした香港の状況を踏まえた上で収納アイテムを豊富に取りそろえているだけでなく、日本で学んだ収納アドバイザーも駐在し、お客さまに収納の提案を提供してます。

 

——今年6月には海外初のMUJICAFEがオープンしましたね。

 カフェと同時にダイニング商品も取り入れています。新しいもの好きの香港人にとって魅力的な仕上がりになっていると自信をもっています。カフェのコンセプトはヘルシー食です。忙しく日々を過ごす現代の香港人もこれまで以上に健康に気を使い、健康食にこだわる人が増えてきました。そういう人たちにできるだけ満足していただけるカフェにしていきたいですね。

 

——現在、総売り上げの2割が海外で、特に注目されているのが中国市場ですが、今後の市場動向をどうみていますか。

 中国本土、香港、台湾でのビジネス展開は日本本社—株式会社良品計画が成功していると思っています。市場そのものが海外でビジネス展開する企業にとって非常に熟知している環境であることも理由にありますが、特に中国は大きな成長を遂げています。現在23カ国で展開していますが中国市場に最も力を入れています。

 

——中国本土ではどれほど拡大していますか。

 05年に上海の南京西路に進出して以来、現在では76店舗。年間10店舗以上を出店しているので今後さらに加速すると思います。目指すは100店舗ですね。日本とビジネス戦略もほぼ同じ状態で展開しています。

 

——売り上げが伸びている理由は?

 やはり大きく成長できたのには香港の成功があったからだと思っています。本土でこれほどまで受け入れられるのも、本土の人が香港の流行ブランドに敏感なためです。本土ではブランドイメージをつくるために出店場所もこだわりました。最初の店舗は高級ブランドエリアです。高い価格に違和感のない客層が中心なので、むしろ安くて手ごろな商品に感じるという錯覚もビジネス戦略の一つなんです。

(この連載は月1回掲載します)


【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。