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最新号の内容 -20130906 No:1390
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印刷業からコーヒー販売へ

 

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)

 

ASIAMIX株式会社
代表取締役 東海林克範さん

【プロフィール】
 1970年東京都出身。95年UCLA(カリフォルニア大学ロスアンジェルス校)を卒業後、ASIAMIX株式会社に入社。2005年、代表取締役に就任。現在の拠点は東京、名古屋、大阪、金沢、福岡、ソウル、上海、大連、香港。12年、従来の印刷資材ビジネスに加えコーヒービジネス開始。今年2月にディスカバリーベイに%Arabicaをオープンした。

 

——御社では印刷資材業とコーヒー豆の販売をしているそうですね。

―家族企業で印刷資材のメーカー商社を50年やっており、私は3代目です。東京を中心に日本国内5カ所で展開しています。アジア展開として中国の大連に工場、上海、ソウルに営業所をつくり、2年前から香港を拠点に働いています。印刷業界は紙からインターネットの時代に移行している今、なかなか業績を伸ばせないのが現状です。この分野だけでは厳しいと考え、数年前から新規ビジネスを模索していました。うちは印刷メーカーであり商社として25カ国と取引しています。こうしたノウハウを使って何か新たにできないかと考えました。


——そこでコーヒービジネスを始めた?

 コーヒーは原油に次ぐ世界第2位の貿易商品です。つまり未来も飲まれ続けていくわけです。会社に体力があるうちに新規事業を立ち上げるべきだと思い一念発起しました。


——思い切りましたね 。

 弊社の商社機能をいかに新たな分野で生かせるかと考えたときに、エスプレッソマシンが思い浮かびました。昨年、東京でSCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)の展示会があり、偶然、シアトルの高級エスプレッソマシン「スレイヤー」の日本の代理店権が空いているのを知ったのです。会場は全体的にイタリアの機材に注目していたので、これは絶好のチャンスと思いすぐにシアトルに飛び社長に直談判すると、「お前ならば売ってくれそうだ」と気に入られ、日本市場と香港市場まで任せてくれました。


——素晴らしいフットワークの軽さですね。

 思い立ったらまず動くことを大切にしています。コーヒー豆の販売もやるなら徹底したいと思ってハワイに行ってコナコーヒーの農園を見て回りました。そこでも、これだとひらめいたんです。コーヒーの木2000本、収穫量が2・5トンほどある農園を即購入しました。この農園で育ったコーヒー豆は店でも大人気商品ですよ。 


——香港のカフェ環境をどうみていますか?

―香港ではここ数年、スターバックスが始まって以来のコーヒーブームです。 レベルも上がってきていますしバリスタを目指す若者が増えました。ただ問題は、香港の不動産賃貸料が高いこと。これが緩和したらもっと多くのカフェが生まれると思います。


——なぜディカバリーベイを選んだのですか?

―自分のコンセプトとして、「生活に根付いた、普段使いのコーヒーを提供したい」という思いがあり、多くの外国人が子育てをしているディスカバリーベイは最適でした。コーヒー好きが気楽にきて交流を深める文化的な空間をつくりたかったので大満足です。


——他店とどう差別化を?

―まずはお客さまの注文を取ってから焙煎をするスタイルは、香港ではうちだけのサービスだと思います。コーヒーは焙煎して1週間が最もおいしく、2週間目からはどんどん味が落ちて行きますので、焙煎したてのコーヒー豆を提供できるのがうちの差別化です。当社は「トルネードキング」 という日本製の焙煎機を使用し、この機械も当社が輸出元を務めておりますので、うちのショップはコーヒー豆の販売ショップとともに、スレ イヤーとトルネードキングのショールームになっています。焙煎は5分程でできますので、待っている間はお客さまと立ち話をしながら過ごしてい ます。


——今後、目指していることは?

―日本、韓国、中国本土、香港、台湾から、将来的には東南アジアにも展開していきたいです。コーヒービジネスは多岐にわたり、豆からの売り上げ、ドリンクからの売り上げ、機器からの売り上げ、教育からの売り上げとさまざまな方向性がありますので、バランス良く事業を拡大して行けたらと考えています。来年あたり京都に店を出そうと思っています。エスプレッソマシンのショールームとコーヒー豆の販売だけでなく宿も併設し、いつでもうちのコーヒーを楽しめるような店を構想中です。
(この連載は月1回掲載します)

 


 【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。